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飢えた孤児100人を育てた俺、20年後に英雄たちから「父さん」と呼ばれています  作者: レモンティー


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第五十話 百人の英雄が帰った夜、父さんは新しい食卓を用意した

「もう一脚、ここに置けるか?」

ライアンが尋ねると、大工は戸口を測って首を振った。

「ここに並べたら、火事のときに逃げられません」

「そうか。じゃあ、向こうの部屋にしよう」

二十年前、ライアンは百人の孤児を育てるため、あり合わせの板で食卓を広げた。

今夜、そこには新しく救われた子供たちの椅子も必要だった。

ただし、まだ全員が帰ってきたわけではない。

国境へ運ばれた三十人のうち、リオとネルを含む三人は救出された。

残る二十七人の所在は分からない。

食堂の壁には、ガイアが持ち帰った捜索記録が貼られていた。

『生存確認三人。

未確認二十七人。

捜索継続』

「こんな日に食事会なんて、していいのかな」

フィルが呟いた。

妹ネルは救出されたが、まだ夜になると荷車の音に怯える。

ライアンは椅子を引いた。

「祝勝会じゃない。お前たちが、今夜の飯を食うための食卓だ」

「でも、まだ帰ってない子がいる」

「だからといって、ここにいる子まで空腹にしていいわけじゃない」

フィルは返事をせず、妹の手を引いて座った。

ネルはパンに手を伸ばさなかった。

「食べたら、明日はなくなる?」

セーラがネルの目の高さまでしゃがむ。

「明日の分は、別に用意するわ。今日は今夜の分を食べていいの」

「……本当に?」

「約束する。でも、怖くなったら半分残してもいい。あなたが決めて」

ネルはパンを二つに割り、一つをフィルへ渡した。

フィルは受け取ったが、食べなかった。

「僕が先に食べたら、ネルの分がなくなる気がする」

ライアンは自分の椀を手に取った。

「じゃあ、俺が先に食べる。昔、お前たちにもそうしたな」

ガイアが笑った。

「父さん、あのころは自分の分を食べたふりをしてた」

「よく覚えてるな」

「覚えてるさ。俺たちは父さんの皿ばかり見てたんだから」

セーラがライアンの椀へスープを足した。

「今は本当に食べて。医者からの指示よ」

ライアンは苦笑しながら匙を口に運んだ。

ネルも、ゆっくりパンをかじった。

そのとき玄関が開き、グレゴールがリオを連れて入ってきた。

リオは病院で診察を受け、今夜だけ食堂に来る許可をもらっていた。

喉にはまだ咳が残っている。

グレゴールは深く頭を下げた。

「孫を助けていただいた。私は以前、あなたを捕まえた人間だというのに」

ライアンはリオのために椅子を引いた。

「昔の話は、あとでできる。今は温かいうちに食べよう」

リオは席につく前に、空いた椅子を見た。

「ほかの子たちの席?」

「そうだ。帰ってきたら、ここで食べられるようにしておく」

「二十七人もいるのに、椅子が一脚だけ?」

大工が困った顔をした。

「全部置いたら、歩けなくなるからね」

するとリオが言った。

「名前を書いた紙を、壁に貼ったら? 椅子は、帰ってきてから増やせばいい」

ガイアはそれを聞いて頷いた。

「そうしよう。ただし、分かっている名前だけを書く。分からない子を、勝手な名前で呼ばない」

マリナは紙を二十七枚用意した。

確認できた名前の紙には名前を書き、まだ分からない子の紙には番号と最後に見た場所だけを記した。

フィルが壁に一枚ずつ貼った。

「これなら、誰が帰ってきたか分かる」

「帰ってきたら、紙を剥がすの?」

ネルが尋ねる。

ライアンは考えた。

「剥がさずに、帰った日を書こう。どこにいたかも、本人が話したいなら書けばいい」

夕食の途中、マリナの部下が報告を持ってきた。

北の宿場で、子供たちを乗せた三台目の荷車に似た車両が目撃されたという。

目撃者の証言だけで、まだ確証はない。

ガイアは立ち上がった。

「明朝、確認隊を出す」

「今すぐじゃないの?」

リオが尋ねた。

「夜の峠は危険だ。現地の見張りには知らせてある。朝になれば、足跡も調べられる」

リオは唇を噛んだが、頷いた。

ライアンはガイアに椀を差し出した。

「出発するなら、なおさら食べていけ」

ガイアは受け取り、久しぶりに父の隣へ座った。


やがて食事が終わるころ、戸口を激しく叩く音がした。

役人が持ってきたのは、王国全土の救済所を停止するという布告だった。

『会計監査のため、無期限停止』

マリナが文面を読み上げると、食堂が静まり返った。

「明日の朝から、食べられなくなる子がいる」

セーラが言った。

ガイアは壁の二十七枚の紙を見た。

「まだ探している子たちがいるのに……」

ライアンは空いた椅子に手を置いた。

「探すのをやめるわけにはいかない。だが、明日ここに来る子の飯も止められない」

彼はマリナに尋ねた。

「使える鍋は、いくつある?」

「この家には四つ。商会と兵站庫にもあります」

「なら、朝までに数えよう」

食卓の上で、空の椀が片づけられていく。

食堂の片隅では、ネルが椅子の脚を何度も確かめていた。

「揺れない?」

フィルが尋ねると、妹は首を振る。

「荷車の床はずっと揺れてた。寝ても止まらなかった」

大工は椅子を一度引き取り、脚の下に薄い木片を挟んだ。

四本が床につくのを確かめてから、ネルの前へ戻した。

「これなら揺れない。嫌なら別の椅子にしてもいいよ」

ネルは座らず、手で背を押した。

椅子は動かなかった。

その様子を見たライアンは、二十年前の食堂を思い出した。

最初の冬、子供たちは食べ物だけでなく、眠る場所や靴まで奪われるのを恐れていた。

彼が何度『大丈夫だ』と言っても、安心した顔にはならなかった。


翌日も同じ場所にパンがあり、翌々日も毛布があり、やっと子供たちは信じ始めたのだ。

「椅子は明日もここにある」とライアンが言った。

ネルは返事をしなかったが、そっと腰を下ろした。

食事が終わるころ、フィルは妹の椀を下げようとして手を止めた。

「自分で運べる?」

ネルは椀を抱え、ゆっくり台所まで歩いた。

ほんの数歩のことだった。

だがフィルは、妹が誰かに命じられずに動く姿を久しぶりに見た。

その夜、マルタは新しい椅子の裏に小さく日付を刻んだ。

救出の日ではない。

ネルが初めて、自分で椀を片づけた日だった。

食卓の端に、まだ名前の書かれていない椅子が置かれた。

マルタが布で座面を拭くと、ネルはその前で立ち止まった。

「ここ、座っていいの?」ライアンは頷いた。

「もちろん。でも今日は座りたくなければ、立っていてもいい」ネルはしばらく迷い、椅子の背に指を掛けた。

フィルが隣に座ろうとすると、彼女は首を振った。

「一人で、座ってみる」フィルは驚いたあと、静かに席を離れた。

台所では鍋が鳴り、誰かが皿を落として笑い声が上がる。

壁にはまだ帰らない二十七人の名前がある。

その紙を外さずに、新しい子が自分で席を選べるようにする。

それが今夜、ライアンたちにできることだった。

英雄たちは剣や勲章ではなく、鍋と薪と麦の数を話し始めた。

壁には二十七枚の紙が残っていた。

誰もその紙を忘れない。

だが、明日の朝には新しい椀が必要だった。

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