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飢えた孤児100人を育てた俺、20年後に英雄たちから「父さん」と呼ばれています  作者: レモンティー


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第四話 橋の下の十七人を連れて帰った

橋の下には、風の音より小さな咳が重なっていた。

ライアンが石段を降りると、子供たちが一斉に顔を上げた。

濡れた布を肩に巻いた少年、片方だけ靴を履いた少女、膝を抱えた幼い兄弟。

教会の使いが言ったとおり、十七人いた。

「炊き出しは?」

先頭にいた背の高い少年が答えた。

「来ない。昨日も、その前も」

「名前を教えてくれ」

「先に飯を出せよ」

少年は尖った石を握っていた。

背後の子供たちを隠すように立っている。

「飯は少し持ってきた。ただ、十七人には足りない」

ライアンは包みを開いた。

薄いパンが三つ。

自分の家で分ければ、九人の夕食がさらに減る量だった。

「騙す気か」

「騙すなら、足りないなんて言わないさ」

少年の手は下がらなかった。

ライアンは包みを石の上に置き、三歩離れた。

「まず小さい子から。俺は取らない」

少年はしばらくライアンを睨んでいたが、後ろにいた女の子を呼んだ。

女の子はパンを受け取ると、すぐに食べず、隣の子に割って渡した。

ライアンの胸が痛んだ。

ここでは、分けることが生き残るための決まりになっている。

「俺はライアン。お前は?」

「トビアス」

「トビアス。今夜だけでも、風を避けられる場所へ移ろう」

「知らない大人の家になんか行かない」

「そうだな。知らない大人は怖い」

ライアンは頷いた。

トビアスの顔に一瞬だけ戸惑いが浮かんだ。

「じゃあ、まず俺の家を見に来ないか。気に入らなければ戻っていい」

「十七人で?」

「全員で。離れたくないだろう」

そのとき、橋の奥で小さな悲鳴が上がった。

幼い男の子が立ち上がろうとして倒れた。

唇の色が悪い。

隣の姉が何度も名前を呼ぶ。

「いつからだ」

「朝から。水も飲まない」

ライアンは男の子の額に触れた。

熱い。

迷っている時間はなかった。

「この子を薬師に診せる。トビアス、道を案内してくれ。ほかの子はここで待っていてもいい」

「連れて行って、返さないつもりだろ」

「お前も一緒に来い。俺が何をするか、全部見ていてくれ」

トビアスは石を捨てた。

薬師ルクスの店に着くころには、ライアンの腕が痺れていた。

ルクスは男の子を寝台に横たえ、体を温め、水分を少しずつ与えるよう指示した。

熱の原因はまだ分からない。

今夜は様子を見なければならないという。

「お前、また拾ってきたのか」

「橋の下に十七人います」

「十七人?」

ルクスは目を閉じた。

「善意だけで冬は越せんぞ」

「分かっています」

「分かっておらん顔だ」

ライアンは返す言葉が見つからなかった。

ルクスはため息をつき、薬棚から古い帳面を取り出した。

「教会の倉庫に、寄付された毛布がある。管理人にこの印を見せろ。だが、薬の代金は後で働いて返せ」

「必ず」

トビアスは寝台の男の子を見つめていた。

「……あいつ、死なない?」

「今は診てもらっている。絶対とは言えない。でも、一人にはしない」

少年は唇を噛んだ。

ライアンが橋へ戻ると、日が落ちかけていた。

子供たちはまだそこにいた。

トビアスが先に石段を降り、男の子が薬師のもとにいることを説明した。

「行ってみる。嫌なら戻る」

彼が言うと、子供たちは顔を見合わせた。

最後に、最も幼い少女が手を挙げた。

「お姉ちゃんも行ける?」

「もちろん」

「手、つないでいい?」

ライアンは差し出された指を握った。

指先は冷え切っていた。

数を確かめるために並ばせた十七人の列が、急に一人ひとりの顔を持ったように思えた。

先頭のトビアスは、その様子を見ても石を捨てなかった。

まだ信じなくていい。

歩きながら決めればいいのだ。

「もちろんだ」

少女の手は驚くほど冷たかった。

廃屋に着くと、ガイアが戸口に立っていた。

背後にはセーラとノア、マリナたちがいる。

十七人を見たガイアの顔が強張った。

「父さん。鍋は九人分しかない」

「分かってる」

「毛布だって足りない」

「それも分かってる」

「じゃあ、どうするんだよ」

ライアンは答えられなかった。

橋の下では迷わず手を伸ばせたのに、家に戻ると、その手で既に守っている子供たちの分を奪う現実があった。

ガイアは拳を握った。

「俺たちを飢えさせるなら、最初からそう言ってくれ」

ライアンは返事をする前に、背後の十七人を見た。

聞こえていないふりをしている子も、はっきり耳を澄ませている子もいた。

誰かを迎えるたび、先にいた子が自分の場所を失うと思うのなら、それは家とは呼べない。

ライアンはガイアの不安をほかの子供たちにも聞こえる声で受け止め、向き直った。

「この家にいる誰かの食事を黙って減らすことはしない。足りないなら、足りないと全員に話す」

「話したら増えるのか」

「増えない。でも、隠したまま決めるよりはいい」

ガイアは拳を緩めなかった。

だが、ライアンが自分の不安をなかったことにしなかったのは伝わった。

その言葉は、ライアンが恐れていたものだった。

「ごめん。お前の言うとおりだ」

そのあとライアンは、ガイア自身の気持ちを落ち着いて聞くため、少年を台所へ連れていった。

「俺は、あの子たちを置いて帰れなかった。でも、お前たちに我慢を押しつけていい理由にはならない」

「じゃあ追い返すのか」

「追い返したくない。だから、俺だけで決めずに相談したい」

ガイアは黙った。


しばらくして、鍋の蓋を開けた。

「水を増やせば、温かいものは全員に行く。でも、それだけじゃ腹は膨れない」

「そうだな」

「明日、親方に仕事を聞くんだろ。俺も手伝えることを探す。危ない仕事はしない」

「約束できるか」

「父さんも、倒れるまで働かないって約束して」

ライアンは苦笑した。

「難しい約束だな」

「守って」

「ああ。守る」

その夜は薄い麦粥を二十五人で分けた。

誰も満腹にはならなかった。

ライアンは自分の椀を空にしたふりをしたが、セーラに見つかった。

「父さん、食べてない」

「あとで食べる」

「あとで、はないよ」

セーラは自分の椀を少し傾けた。

ライアンは首を振り、代わりに一口だけ受け取った。

小さな譲り合いが、食卓のあちこちで起きていた。

寝床も足りなかった。

子供たちは毛布を重ね、背中を寄せた。

トビアスだけは戸口のそばで眠ろうとした。

「逃げ道を塞がれたくないか」

ライアンが尋ねると、少年は驚いた顔をした。

「……そうだよ」

「分かった。閂は内側から開けられる。夜中に出たいなら、止めない」

「逃げても追わない?」

「危ないから探しには行く。でも、戻るかどうかは話し合おう」

トビアスは少しだけ戸から離れた。


翌朝、ライアンは教会の管理人を訪ねた。

ルクスの印を見せると、管理人は毛布を出してくれたが、食料は渡せないと言った。

「炊き出しの麦は、帳簿では昨日届いたことになっています」

「実際には?」

「一袋もありません」

管理人は声を潜めた。

「上に報告しました。でも、記録が正しいの一点張りで」

ライアンは帳簿を見せてもらった。

受領欄には確かに印がある。

だが、日付の下の文字は、上から書き直されたように濃かった。

「この印を押したのは誰です」

「私ではありません」

ライアンはそこで追及をやめた。

子供たちの朝食が先だった。

教会の裏庭の薪割りを引き受け、代金の一部を麦で受け取る約束を取りつけた。


昼過ぎ、薬師から知らせが届いた。

橋の下で倒れた男の子は、水を飲めるようになったという。

トビアスは知らせを聞いても笑わなかった。

代わりに、壁に背をつけたまま目をこすった。

「まだ名前、言ってなかったな。あいつ、ルカっていう」

「ルカか。忘れないよ」

「ほかの十六人も、ちゃんと覚えられる?」

ライアンは部屋を見渡した。

名前を知らない子が多すぎた。

昨日まで何を食べていたかも、どこから来たかも分からない。

「覚える。間違えたら、何度でも教えてくれ」

トビアスが「字を知っている子は二人だけだ」と教えた。

だから名前を尋ねるときは、書けるかどうかで順番を決めないことにした。

答えられない子には、セーラが水を渡してから、もう一度そっと声をかけた。

名前を聞くことさえ、急げば怖がらせてしまう。

ライアンは紙を探した。

紙は貴重だった。

帳面の残りは数ページしかない。

それでも、最初の一行に「トビアス」と書いた。

次に「ルカ」

橋の下にいた少女が、震える声で自分の名を告げた。


その日の夜も寝床は足りず、年上の子たちは廊下で眠ることになった。

ライアンが謝ると、トビアスは首を横に振った。

「橋の下よりは温かい。でも、これで終わりじゃ困る」

「分かってる。今夜までに場所を探す」

「俺たちにも探させてくれ」

ライアンは頷いた。

ただし、子供だけで危険な建物へ入らないことを条件にした。

救った瞬間だけでなく、翌日の暮らしにも責任がある。

そのことを少年に教えられた。

十七人を連れて帰ったことが正しかったのか、ライアンにはまだ分からなかった。

けれど、誰も名前を呼ばれないまま冬を越すことだけは、もうさせたくなかった。


翌朝、トビアスは十七人の名前を記した紙片を持ってきた。

字を知っている二人に手伝ってもらい、書けない子の名前も本人に確かめて記したという。

「呼び間違えるなよ」

「約束する」

ライアンは紙を受け取り、今度こそ名前をなくさない方法を考え始めた。

だが、紙片には十七人の名があっても、薬師の店に残ったルカの体調は書かれていない。

ライアンはトビアスに相談した。

「名前だけじゃ足りないな。薬を飲んだか、誰と離れたくないかも必要だ」

「勝手に誰かへ見せるなよ」

「ああ。外に見せるのは人数だけにする」

トビアスは少し考え、紙の端に小さな印をつけた。

「この二人は兄弟だ。離すと眠れない」

ライアンは印を見て、寝床の割り振りを直した。

記録とは子供を管理するためでなく、子供の希望を忘れないためにある。

その意味を、ようやく理解し始めていた。

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