紫のいない日常
短いです。(^_-)
紫がいなくても、仕事はある。
俺と光は協力して、仕事をこなした。
チームヒカルは大したものだった。何しろ、紫が基盤を作ったのだ。
葵が、光の態度に業を煮やして、婚約の解消をちらつかせた。
思惑通りの展開だ。
飛んで火にいる夏の虫。よせば良いのに、と思うが、本人は至って真面目だ。
葵は、デートをすっぽかした光が謝罪に来ることを要求し、光は、忙しくてそれどころじゃない、と突っぱねた。
確かに、テレビ出演だけじゃなく、雑誌の対談、講演会など、二年後の知事選に向けての光の忙しさは、以前の比じゃない。
あれを我慢できないと言うのは、政治家の妻になろうという女にとって、単なるわがままだと思えた。
近衛将之氏は、娘に注意するのを諦めたのだろうか?
それとも、二条家との縁組みそのものを諦めたのだろうか?
何も言わなかった。
代わりに将人に大統領の娘との結婚を求めた。
噂によれば、将人は大統領の娘との見合いをして、ガックリしたらしい。
平凡な娘だったのだ。
平凡じゃないのは、大統領の娘という肩書だけだった。
葵は家柄も血筋も良い大統領の娘を気に入って、兄の縁談だというのに、将人以上に乗り気になった。
将人のため息が聞こえるようだった。
仕事の合間に、二条家の東京の屋敷とマンション、信州の別荘、地元にある三つのマンションを尋ねて、紫を捜した。
だが、どこにも紫の気配はなかった。
「灯台下暗しで、この御殿の中央棟に隠しているってことは、ないんでしょうか?」
「いや、この前、客間を全部調べてきたけど、そんな様子はなかった。
それに、藤子さまなら、紫にブレインとしての仕事をさせるだろうから、事務室か藤子さまの書斎のどちらかで仕事をすることになる。
そういう形跡がないんだ」
「じゃあ、賃貸の物件ってところですね。
だったら、この街だけでものすごい数になる。
探偵事務所でも使わない限り、俺達だけでは不可能です。
ここは、誰かに手伝ってもらって、ありったけの探偵事務所を使うことを考えた方が良い」
「誰かって?」
「例えば……六条康子さま」
「でも、紫の素性は秘密だ」
「そこは、任せてください。それと……」
「他には、何だ?」
「前にハッキングをどうこうおっしゃってましたね。
あれに近いことを思いついたのですが」
「できるのか?」
「いや、ハッキングはできないんですが、紫付きのメイドだった美保ちゃんが何らかの情報に触れているかも知れません。
あの子が持ってる情報をいただけば良いんです。
つまり、生きた人間から情報を盗むわけです。
本人は大した情報だと思っていなくても、案外、重要なことだったりする場合があります」
「確かに」
「松嶋さんに美保ちゃんの住所を聞いて、会いに行って来ます。それでですね」
「なに?」
「あなたには、あなたにしかできない仕事をしていただきたい」
「私にしかできない仕事とは?」
「今回のことは、藤子さまの仕業です。
あの方に詫びを入れていただきたいのです。紫を返していただきたいと」
「許していただけるとは、到底思えない」
「ネゴシエーションの応用です。
ダメもとで何度もお願いしてみる。それによって、道が開ける場合があります。
それに、頻繁にお願いすることで、何らかの情報が得られることもあるはずです」
惟光が、結構偉そうになってきました。ボスに対して言いたいことを言うようになったのです。そうしないと、紫を捜せないからです。
がんばれ、惟光!




