ジャイアントの子の特殊任務
クロとシロが急接近した、その二年後のことです。
◯登場キャラクター
クロ
四歳 この作品の主役
好奇心旺盛
シロ
三歳八カ月 クロの妻
少し臆病
子供たち めちゃくちゃたくさん
誰が誰の子供かわからない
あれから二年の歳月が過ぎた。
僕は四歳になり、もうすっかりこのマンションでは古株になる。
「おはよう、クロちゃん。今日も子供達は元気よ」
こちらはシロちゃん。三歳半くらいだったと思うが、僕との子供を文字通り数え切れないくらい産んでくれた。
というか僕らは一年ほどで大人になるから、二年も経てばどちらが大人か子供かもわからなくなる。
一般的な黒いダンゴムシの僕と、真っ白な殻のシロちゃんとの間に出来た子供は、黒と白と色々な濃淡のグレーの子供だった。
前回のように、子供達の会話に耳を傾けると疲れるので今回はやめておく。
そういえば、最近気になったのは、わがダンゴムシ王国の設立者である、ジャイアントの子供が、何やら朝からお昼過ぎまで外界へ出歩くようになったことだ。他国の侵略のためのスパイなのか、それとも隠密行動のためか。
一週間のうち五日間は外界へ出かけていることを突き止めた。そして、外出の時は必ず、背中に漆黒の革製のカバンを背負っている。
きっと、あの中には様々な武器や野営のための道具が。もしくはスパイのための七つ道具などが入っているに違いない。
朝に出かける時は必ずジャイアントの母親も門で見送っている。しかも、二人とも物凄く笑顔なのだ。
過酷な旅に出るにも関わらず、あのような笑顔でお互いいれるなんて……ジャイアントは余程、精神の鍛錬を積んでいるに違いない。
◇ ◇ ◇
そんなある日のこと。
ジャイアントの子が、要塞の門の前で立ち尽くしている。いや、立ち尽くすというか、何やらガチャガチャとしているが、門が固く閉ざされているらしい。
「お母さ〜ん! ただいま〜! 今日早く帰るって行ってた日だよ〜」
なるほど。今日はいつもよりも任務が多少早く終わったんだな。
ただ、要塞の中はうんともすんとも言わない。
まさか……すでに要塞は違う門から攻められて、ジャイアントは根絶やしにされてしまったのか。
「ねぇ……お腹空いたよぉ〜。お母さーん! お父さーん!」
それに気づかない子は、無邪気に呼びかけている。
不憫に思った僕は、多少危険とは思いつつも、ジャイアントの子の側に向かった。僕らの住居から、要塞の門は割と近いのだ。
ジャイアントの子は不安そうな顔をしている。門の前にへたり込んでいた。
「あ、ダンゴムシさん。遊びに来てくれたの?」
もちろん返事は出来ないが、敵意はないような感じでゆるゆると歩く。
「なんかね~、今日早く帰るっていってたのに、誰もいなくて入れないの。ぼく、お腹空いたんだけどな……」
いや、ぼ、ぼ、僕は美味しくないぞ!! ジャイアントが僕らを捕食しているのは見たことはないが、ふと危険を感じた。すぐさまトランスフォームする。
「あれ、触ってないのに、丸くなった。ダンゴムシさんも遊んで欲しかったのかな〜?」
ジャイアントの子は、球体化した僕を手のひらに乗せて、コロコロコロコロ遊んでいる。僕はされるがままになった。
その時。
「あれ〜? 今日は学校早かったのかな? ごめんねちゃんと聞いてなかったみたいで……早くお家入りましょ」
「お母さん! お帰り〜! ぼく、お腹空いたよ〜。あ、ダンゴムシさんが待ってる間遊んでくれたんだよ」
「そうなのね、ちゃんとお家に返してあげなさいね。ご飯すぐ作ってあげるからね」
た、助かった……
おそらくもう少し帰りが遅かったら、僕は……
ジャイアントの母にも感謝した僕であった。
ジャイアントの子は、小さい頃……と言ってもクロ達よりは大きいが。
成人になる前から、色々な鍛錬を積んで日々生活しているようだ。
新たなジャイアントの一面も知ることができた、クロであった。




