ジャイアントの気まぐれ
クロ達の住む住居は、ジャイアントの子供が建設してくれたものだった。
その話を聞き、シロはジャイアントを一度見てみたいと言うが……
◯登場キャラクター
クロ
二歳 この作品の主役
好奇心旺盛
シロ
一歳八カ月 クロの友達
少し臆病
やぁこんにちは、クロだよ。
前回は僕らの住むマンションについて聞いてもらったね。
シロちゃんはジャイアントを一度見てみたいと言ってたんだけど……僕はあまりオススメしない。
何せ彼らは、とても気まぐれだからだ。
基本的に僕らの暮らしや、生活には興味がない。もちろん体の大きさも違うし、住んでいるところも違うから、当たり前と言えば当たり前かもしれないけど。
でも、こうやって実際に見えている僕らのことを、無いようなものとして見てる場合が多い。
もしくは、気持ち悪いものとして嫌われてしまうことのほうが多いかもしれない。
ここにマンションを建設してくれたジャイアントの子供はだいぶ稀なケースだ。
【ダンゴムシ王国】を作ろうとしてくれるなんて。それは僕らにとっては、あの子のことを王様として崇めてもいいくらいのレベルだ。
だが。僕らの王様は時に気まぐれで、時に残酷だ。
◇ ◇ ◇
「今日はね〜、ダンゴムシ王国に池と川を作るんだよ〜」
池と、川だと……
どこから水を移動させるのか知らないが、この広大な大地に池と川を作ることが果たして出来るのか。
それはまさに神の所業ではないのか。
「お母さん、バケツに水を汲んで持ってきてよ〜」
「もぉ〜、お庭を水浸しにしちゃダメよ〜、お水を汲むのは一回だけだからね」
バケツに水。
もしかしたらジャイアントにとったら、それはほんの少しのことなのかもしれない。
しかし、僕らには、その水が命取りだ。
僕らは……泳げないからだ。
「シロちゃん! 今は外に出たらダメだ! ジャイアントの子供が今から洪水を起こす!」
「えっ、ジャイアントが見れるの? 少しだけ、見てみたいな〜」
シロちゃんはジャイアントの恐ろしさをまだわかっていない。ここに住居をかまえてくれたことにはもちろん感謝しかないが、それももしかしたらほんの気まぐれで。
もしかしたらそれは、僕らをそこに住まわせ、観察するためだけの。実験のために利用しているだけなのかもしれない。
でも、シロちゃんは、僕の忠告を聞かず、外に出てしまった。仕方なく僕もそれを追いかける。
向こうからジャイアントの子供が水がたっぷり入ったと思われるバケツを片手に物凄い勢いで走ってくる。
「わーい! 池と川、出来るかな〜」
それは、まるで鬼神のような動きだった。
僕達の百倍以上のジャイアントが、子供であればそれよりは小さいかもしれないが、それでも数十倍はある生物が、全力で走ってきた場合、僕らはまるで逃げ切ることができない。
シロちゃんは、その大きさと、素早さに圧倒されて、言葉が出なくなっていた。
「あ……あ……」
そして、ジャイアントの子供は、マンションの近くの大地に……バケツをひっくり返して水をぶちまけた。
「うわぁーーーーー!!」
僕の予想通りだ。
ここの土壌は程よく水を吸収はするが、そこまで水はけは良くない。
吸収されない水がどうなるかと言うと……氾濫する。
「クロちゃん! 助けて〜〜!!」
シロちゃんが濁流に呑まれて流されていく。
「シロちゃん! 大丈夫だ!! 抵抗をせず、流れるままに任せろ!!」
僕はトランスフォームし、水の抵抗を少なくした。
すると通常形態よりも、流される速度が増すからだ。
「クロちゃーーん!!」
水は、デコボコの大地の窪みに溜まって、大きな池を作った。
「わーい! 池が出来たよ〜!」
ジャイアントの子は無邪気にはしゃいでいる。僕は、シロちゃんの近くまで近づくと球体化を解いた。
「シロちゃん! そのままゆっくりと水底を歩くんだ。僕らは泳げないけども、水の中で死ぬことはないから」
「えっ?」
激しい水の勢いが、少しずつ収まってきた。そして、ゆっくりゆっくりと、水の外に向かって歩いていく。
「さぁ、こっちだよ、シロちゃん。慌てずゆっくり歩くんだ」
僕はシロちゃんの前を進み、導いた。
時間はかかったが、なんとか地上に出ることができた。
「えーん……怖かったよ〜!」
「よしよし、大丈夫だよ。ね、ジャイアントは偉大だが、時に恐ろしくもある。これからは僕の言うことを聞くんだよ」
「うん、わかった……ごめんね、クロちゃん」
シロちゃんは、少し泣きそうになりながら、僕に言った。
そんなシロちゃんのことを、僕は愛しいと思ったんだ。
ジャイアントの子供の気まぐれのため、危うく命を落としそうになったクロとシロ。
住居を与えてはくれたものの、その気まぐれは時に恐ろしい災害を引き起こすこともある。




