ツッコミ 95 〜大きいって繊細なんです〜
「な、なんとか着いた」
後ろから迫るホホジロザメの攻撃を躱しながら、前方から迫るコロッケの突撃を躱す。さらにはフリスビーのように迫るピザまで増えたことに戦慄しながらも、ボクはなんとか、次の駅であるコマワシ星雲駅へと辿り着いた。
この苦労を、この功績を。成し遂げたボクに対して惜しげもない喝采をっ!
「肉球、触ってもよろしい?」
「ちょっとだけだぞー」
……。
「サメの上でイチャイチャしてんじゃねぇぇぇっ!」
魂の慟哭を恥ずかしげもなくあげながら、ボクは自動販売機で買ったハンバーガーを貪り食った。
こんなに、こんなにも悔しいことがあるだろうか。馬車馬のように働いて、馬のニンジンのような役目を果たして、背中に乗っていただけの猫と宇宙人? は、呑気にウハウハアバンチュール。
「二人とも、ボクになにか言わなければならないことがあるんじゃないかなっ!?」
「ありがとうございました」
「おかげでここまで来れた。ありがとな」
……矛を収める瞬間ってのは、なんだか張り合いのないものだなぁ。
とまぁ、お礼を言われたのなら、ボクの醜い感情もそこまで。これからの話をしようと、二人にはホホジロザメから降りてもらう。
シロイルカは、二つ目の駅で進化をした。果たしてホホジロザメはどうなのか。というのが、今後待ち構えている駅の数にも直結しそうな気がするのだ。
ここで進化をしてくれたなら、結構ゴールに近づいているのではないか。進化をしなければ、もう少し続くのかもしれない。
ただでさえ敵のバリエーションも増えたのだから、進行度的に言えば、後半に入って中盤、との予想だけど……。
「見てくださいまし。サメが、仄かに光を放っていますわ」
アリシアの示す先を見る。その発行は徐々に輪郭をなくしていき、その範囲は拡大の一途をたどる。
「結構大きいな」
ルートがそう呟いた。
その大きさは、最初に乗った競争相手、電車一両に迫る勢いだ。もしかしたら、それをも超えているかもしれない。
そうして、徐々にその光が晴れていく。そこに現れたのは存在は……。
「え、なんでサメを挟んだの?」
クジラだった。シロナガスクジラだった。
いや、イルカとクジラの違いって、大きさだけなんじゃなかったかなっ!? なんでそこにサメが挟まるの? 百合の間に挟まって、周りを冷めさせる何かかよっ! ……サメだけに。
「巨体ですわね。なんともまぁ、厄介そう」
心の中で盛大にツッコミを入れるボクとは違い、なんだか冷静に分析をしていそうなアリシアさん。ルートは既にクジラの上に飛び乗って、その広さを満喫している。
「何が厄介なの? 潮吹いたら吹き飛ばされそう、とか?」
「お好きにどうぞ」
「提案してるわけじゃねーよっ!」
ビシッと手のひらを添えて。
「あなたは感じませんの? あの猛攻が続く中、これだけの巨体を進めさせなければならない厄介さを」
「まさかぁ。これだけの巨体だよ? たかがコロッケやピザがぶつかった程度で、ビビって動けなるわけが……」
実際にやってみよう。
宇宙を進む巨大なシロナガスクジラ。大きな口を開けてコロッケやピザを飲み込むかと思いきや――。
「こいつ、ビビっているのかっ!?」
それらがぶつかる度に、動きを停めて潮を吹く。
先に進むこともままならず、ボク達はどんどん濡れ鼠。
ねぇ、この潮は何処から来ているの?このクジラはこの潮をどこから取り込んでいるの? 宇宙って海水なの?
「この子はとても、繊細なのね」
「ねぇ、しんみりと言わないで? 絶賛電車に追い抜かれているんだから、少しくらいは危機感を持って?」
濡れないように、彼女の服に潜り込むルートがなんだか羨ましすぎる。
そうした嫉妬に溺れながら、ボク達は何度目かの振り出しに戻った。




