ツッコミ 94 〜サメの目の前に居ればどうなるかなんて判るじゃないか〜
そうして振り出しに戻って来たわけだけど、元のフクワラ星雲駅まで戻っくるのは、比較的簡単だった。
だって、もう何度目かになるシロイルカの操縦だったんだもの。これで楽に辿り着けなかったら、ボク達は一体何をしていたんだ、という話になる。
でもまぁ、問題はここからということで。
「サメを動かすには、どうしたらいいのか問題」
シロイルカから進化? したらしき、ホホジロザメの背に乗って、ボクはため息混じりに呟いた。
「サメを動かく方法なんて、決まっていますわ」
「な、何だってっ!?」
背後からの助言に、ボクは勢いよく振り返った。
思いの外、アリシアの顔が近い。
「なにをそっと、目を閉じているのです?」
「ちょっと期待をしたボクの乙女心」
返ってきたのは頭突きである。
「ぶーぶー。ルートばかり甘やかし過ぎ!」
彼女の胸に抱かれたルートを、羨ましく眺めてみる。
宇宙という暗闇を目の当たりにして、そこに自分の姿を投影したのだろうか。これまでの行動を振り返ってみるに、ボクにはこう、スキンシップというものが足りていなかったように思うのだ。
ボクの見た目は、それはそれは美少女だろう。性別は存在しないけれど。
ともあれ、見た目が可憐であるなら、女の子同士のスキンシップ的な、そんな桃色ハーモニーを体験してみてもいいのではなかろうかっ!
「こんな真っ暗な宇宙にいるのだから、人肌の体温を感じたい」
「ナノマシンを活性化させてみたら如何?」
あぁ、背負っていたら邪魔になるからと、前向きにかけているリュックサック状にした花弁が温かい。
「まぁ、いいや。で、サメを動かす方法って?」
「餌」
……。
「ルート、サメと追いかけっことか、してみたくない? ほら、窮鼠猫を噛むっていうし」
「その言葉の意味は分からないけどさ、このでっかい魚は窮鼠なのか?」
むしろバイオレンスに追い込む派。
「やっぱりさ、最初にサメに襲われるのはビーチではしゃぐ美女だよね」
「乙女心を持った人が、適任かもしれませんわね」
あれ、身から出た錆?
「いやいや、乙女心を舐めちゃあきまへんで? パーフェクトな乙女心は、サメと通じ合ってもっと大きな巨悪を打ち倒す可能性も……」
「その調子で、あのマッシュポテト風情を駆逐なさい」
あれ、これはどう足掻いても、ボクが餌にならなきゃならないパターン?
「判った。判ったよ。そうまで言うなら、ボクが犠牲になろう。でも憶えておいてね。ボクはきっと、生きて君の手料理を食べるからっ!」
そう宣言をして、ボクはサメから飛び降り、リュックサックを変化させて下半身に纏った。つまり、クルージングモードだ。
「さぁ、宇宙に浮かぶホホジロザメよっ! ボクのことを捕まえ――ヒィッ!?」
ガチーン、と、ボクの顔面スレスレで大きな歯が噛み合った。
「やっぱこいつ、怖いってのーっ!」
そんなビビリな乙女心を叫びながら、ボクは真っすぐ、線路に沿って宇宙を進む。けれど、それはイコール……。
「うひーっ!? 顔面スレスレにコロッケが飛んでいったんだけどっ!?」
前門のコロッケ、後門のホホジロザメ。ボクは生きて、次の駅にたどり着くのだろうか。
……いや、主人公がこんなところでくたばる訳がないんだけどね?




