ツッコミ 93 〜サメは乗っても乗られるな〜
ホホジロザメへと進化したシロイルカは、中々の凶暴性を発揮した。
先ず、近付けば噛み付こうとしてくる。乗ることもままならない。乗ることに成功しても、その後が大問題だった。
「こいつ、動かないぞっ!?」
みんなでその背中に乗ってみれば、たちまち動きを止めてしまうホホジロザメ。頭を叩いてみても、背びれを弄ってみても、何の反応も示さない。
「元気のないサメなんて、サメじゃないでしょっ!」
「何を興奮していますの?」
どうやらアリシアには、ボクが興奮しているように見えているらしい。
「ちょっと待って、ボクのどこが興奮しているように見えるのさ。ボクは今、サメに乗っているんだよ? 人を襲って当然の、凶暴なヤツにだ。軍艦を平気で襲い、壊滅させ、雑なCGで人を襲ってはシリアスなシーンなのにコメディに見える魅惑の生物に乗っているのだよ? それがまったく動かなくなってしまったのなら、それはとてもショックなことだと何故分からんッ!」
「興奮してんじゃねーか」
ルートの言葉は尤もである。
「そう言えば、宇宙生物にもサメと名がつくものがいたはずです」
「ほほう、興味深いね。どんなサメ?」
「なんでも、無重力下の飼育実験をした結果、体内にブラックホールを生成する術を身に着けたサメだそうです」
意味分からんのがサメ映画っぽくて好き。
「何でも食らいつくそのサメに噛みつかれると、体内のブラックホールに飲み込まれてしまうのです。その飲み込んだ体積を、徐々に自身の身体の大きさに反映していく」
「じゃ、あたりにあるものを食べつくせば、相当な大きさになるんじゃない?」
「その通りです。次第に宇宙の暗黒物質まで飲み込むようになり、その大きさは加速度的に増していく。しかし、天敵もいるのです」
サメの天敵……人間か?
「その名も、シャッチリコーン。宇宙シャチです」
「シャチ離婚?」
「いえ、繁栄の象徴です」
「シャッキリなコーン?」
「いえ、もろこしではありません」
名前が最早大喜利。
「そのシャッキリだコーン、強いのか?」
「いえ、シャッチリコーンです、ルート。シャッチリコーンは群れを成す光子形成体シャチであり、巨大化するサーメリックライブを飲み込むのです」
アリシアの母性の人達のネーミングセンスが独特すぎる。
「そしてシャッチリコーンは解放されたブラックホールを正常化し、新たな星の卵を産み出すのです。それが、ホワイトロリー化現象と呼ばれています」
さっきから名前が美味しそう過ぎる。
「じゃあ、もしかしたらこのホホジロザメも、次の駅に辿り着いたらシャチになるかもしれないな」
そんなルートの言葉で会話は締め括られ、同時に電車も到着をした。それでもサメは動かない。サメならサメらしく、電車ぐらい丸呑みにしてやればいいのに。




