ツッコミ 92 〜上手にできますか?〜
ハゴイタ星雲駅から出発し、シロイルカに乗ってタコアゲ星雲駅へ。そしてそこからコロッケに襲われながらも、なんとかシロイルカを操作して辿り着いたのが、フクワラ星雲駅だった。
進んだ距離によってお金を得られる仕組みらしいのだが、これまでの経験上、タコアゲ星雲駅まで辿り着けば二千円。
では、フクワラ星雲駅まで辿り着くと?
「まだ振り込まれてはいないみたいですわね」
少し休憩しようと、駅のホームへ降り立ったボクはコンパスを確認する。コンパスに表示される文字によって確認できるのだが、もちろんボクはこの世界の文字が読めないため、同行するアリシアの役目である。
「じゃあ、電車に追い抜かれて先にホームへ到達されて、強制的にスタート地点へ戻されたタイミングで振り込まれる。そんな感じだね」
なので、残金は三人分の飲み物代を差し引き五千百円也。
時間があるようなら、一息つくためにハンバーガーでも頬張りたいところだけど……。
「ルート、時刻表はどうなってる? 電車が何時にタコアゲ星雲駅に着いたかで、どのくらいの猶予があるか分かるのだけど」
「時刻的には、ハゴイタ星雲駅で見たのと同じだぞ。三十分で着いてる」
ということは……。
「いや、時計がないんだけど?」
自分たちが一体、どれくらいの時間でこの駅にたどり着いたのか。時計がないから全く分からないという不親切さには脱帽だよ。投げつけてやるよ。
「電車がどのくらいで着くのか、体感で知るために此処で待ちます? 戻ればお金も振り込まればると思いますけど」
「それも手だね」
休憩なしでゴールまで行くべきか、はたまた休憩できる時間を調べながら行くべきか。悩みどころではあるけれど、折角ホームへ降り立ったのだから、休憩したいという気持ちもある。
「この隙に、イルカの操作を練習しておいたらどうだ?」
最終的に、ルートの提案を採用した。
というのも、この駅までたどり着く際に起きたコロッケの襲撃で、ある問題が発覚したのだ。それが、シロイルカの攻撃と移動をどう切り替えるのか問題。
頭を叩いて指示をすると、指で示した方向へ移動してくれる。それは分かっているのだけど――。
問題は、その方向に敵であるコロッケがいた場合、バブルを吐いて攻撃してしまうのだ。移動したくても。
その結果それが隙となり、別の方向から襲ってくるコロッケの攻撃を受けて、シロイルカは慌てふためき言うことを聞かなくなる。
「ボク達の攻撃でコロッケを倒せたら良かったんだけどね」
「あのマッシュポテト風情が」
アリシアの悪態の通りに、どうにも上手くはいかないもので。けれど、シロイルカの代わりにコロッケの攻撃を受けることはできた。つまり、此処まで来られたのは身を挺してのゴリ押し。ってわけだね。
「まぁまぁ、今度は上手く攻撃をして、本当にマッシュポテトにしてやればいいさ」
そう冗談を言って、ボクは待合室の陰で休んでいたシロイルカの方へ向かった。
「おーい、ちょっと練習を――」
壁に手をかけて、角から顔を出す。その先で愛らしいつぶらな瞳が待ち受けていると思ったのだが――いや、確かにつぶらな瞳は向けられていた。けれど、その、いや、……あの愛らしい唇は何処? あの出っ張った頭は?
ボクは目をまんまるにして、そこにいるものをただ見つめていた。
あえて口に出すのなら、今の状況を例えるのなら。
「シロイルカがホホジロザメに進化した件」
新手のパニック映画かよ。




