その頃シュラナは……。 その二
「これで、終わりだっ!」
突き立てられて剣によって、モンスターは息絶え血に伏した。返り血を浴びぬように立ち回ったシュラナは、久し振りの戦闘に清々しい表情を見せている。
「お疲れ様です」
そこにカナネが駆け付ける。
「怪我をした人達の救護は完了してます」
「さすが、仕事が早いね」
北の大山で発見された地下空間を調査するためにやってきていた調査団。彼らを襲撃した凶暴なモンスターによって数名の人員が負傷していた。
対応によって遅れていた救護措置も、数々のアルバイト、ボランティアの経験を持つカナネによって迅速に行われ、問題のモンスターもシュラナが今、討伐を終えた。
「ギルドマスターが宿で待っています」
「宿?」
「臨時の本部としてまるごと借りていたのだそうです。そのお陰で冒険者や観光の客もおらず、被害が及ぶことはなかったと」
「怪我の功名だね。でも、ピンポイントに狙われた?」
「そのことについても、と」
二人は襲撃の爪痕が残る宿へと入り、秘書らしき女性の案内で部屋に入る。
「やぁ、勇者殿。久し振りだね」
「はい、マロリックさんも。入国手続きを代わりにしてもらって以来でしたっけ」
「そうだね。まさか無許可で船に乗り込んできた人物が勇者だとは思わなかった」
「あの頃は本当に無知で。お恥ずかしい」
目を丸くするカナネに恥ずかしくなったのか、シュラナは頭の後ろをポリポリと掻く。そして手助けだろうか、秘書らしき女性が飲み物を携えてやってきた。
「今お茶を淹れます。そちらにお座りください」
応接間が設けられたこの部屋は、文化人に人気があるらしい。そう語りながらマロリックが先にソファーに座り、対面するかたちで二人も腰を下ろした。
「カナネくんもご苦労だった」
「いえ、出来ることを成しただけです」
自然とカップを配る手伝いをしてしまっていた。大物二人の会談に、少し居心地が悪かったのだ。
「それで、どのような状況なのです?」
「件の部屋は、山頂の地表近くにあったらしい。山小屋の主人が穴が空いていることに気がついて通報した。先行して数名が確認しに向かい、彼らが戻ってきた途端にモンスターの襲撃だ」
「部屋にあったはずの資料がなくなっていたんですね?」
「そう。山小屋から報告を受けて、それに伴った調査を計画していたところだった。穴を空けた人物はまだ付近に居るかどうか。その調査も必要だと思ってな」
あとに手を当てて、シュラナは考える。
「時間稼ぎ、ですかね?」
「そうなってくると、こちらも急がねばならん」
「僕達なら自由に動けます」
「私も行く。魔法が使えるものがいたほうがいいかもしれないからね」
マロリックはちらりと秘書の反応を窺ったが、笑顔を浮かべているところを見ると、許可を出していると判断していいのだろう。彼は安堵して、後のことは任せると告げた。
「君達はワンキタの街から来た。間違いないかい?」
「はい。少なくとも、街道を進む怪しい人物は見られませんでした」
「それなら、南下をするべきかな。イーチの村に立ち寄って情報を得よう。それより――」
マロリックはキョロキョロと周囲を見渡す。
「コキア、という樹神様は?」
「あぁ、あいつなら空を飛べるようになったので、秘宝を探しに行きました」
「は?」
「下半身に機械のようなものを付けていましたよ」
「はぁ? ……美少女×メカのつもりか? ますますあいつらしくなってきやがった」
「は?」
キョトンとする三人を他所に、マロリックは呆れたようにため息をついた。




