ツッコミ 91 〜ここからが本番〜
シロイルカのスピードはなかなか速く、直ぐに電車に追いつき、抜き去っていった。そして次なる駅、タコアゲ星雲駅に辿り着いた。
駅を通り過ぎると、これまでの旅路が嘘のように慌ただしくなる。
「うわっ、ちょ、そんなに暴れるな!」
「ちょっと、ちゃんと操作をしてくださいまし!」
「揺れる、揺れる!」
僕の腰に手を回して、後ろに座るアリシアが叫ぶ。間に挟まるようにして収まっていたルートも鳴く。そうは言っても――、と、ボクは必死でシロイルカをコントロールしようとした。
一体何が起こったのかといえば、敵からの攻撃が始まったのだ。
円盤のように回転しながら、迫りくるコロッケ。それがシロイルカに命中すると、大幅にスピードが下がるばかりか、方向感覚が狂ったようにおかしな方向へと向かってしまう。
動きをコントロールしようと頭を叩いてみると、コロッケを攻撃しようとしているのか、バスケットボール大のバブルを連続で吐き出すばかり。
次第に線路から離れていき、微かに走り抜ける電車の影が視界に入る。モタモタしていられない。けれど、思うように動いてくれない。
そんなふうにマゴマゴしていれば、突如として吹き荒れる突風に煽られて――。
「スタートからやり直しかよっ!」
ハゴイタ星雲駅のホームで、力なく仰向けに転がるボク達だった。
「ちょっと操作を変わってくださいまし」
試しに運転手をアリシアに変わって挑戦してみたが……。
「なんなんですの、あのマッシュポテト風情がっ!」
「マッシュポテトじゃなくてコロッケです」
呆気なく敗北。
「それじゃあ、真打ち登場と行ってみるか。お前らは人型だから駄目なんだよ。動物には動物だけが感じられる何かが、きっとあるんだぜ!」
自信満々なルートが運転手を務めるも……。
「あのビビリ野郎がっ!」
気持ち通じず悪態をつく始末。
あんまりな結果に地団駄を踏む一人と一匹を尻目に、ボクはベンチに横になって考える。
(そもそも、難しいんだよなぁ)
方向転換も、攻撃も、全て頭を叩いてから指示を出さなくてはならない。おまけに強く叩きすぎると嫌がって身を捩りだすから、敵の攻撃が激しくなると慌てふためいてしまって手にも力が入り……。
せめてゲームのコントローラーのように、移動のためのスティックと攻撃のためのボタンが欲しい。そう思わずにはいられないわけですよ。
(より最悪なのは、攻撃方向も指示しないといけない)
これが更に混乱させる要因だ。
移動させようと指示を出したときに、その示した先に敵がいた場合、移動よりも攻撃を優先してしまう。その結果、別の方向からやってきたコロッケの攻撃を横っ面に受けてしまうわけだ。
攻撃と移動、二つの行動をうまく切り替えながら進む必要のあるこのレース。しかし攻撃によって視点が変わると、宇宙という空間であるが故にどんどんと方向感覚が狂ってしまい……。
「あぁ、駄目だ。ネガティブな状況ばかりで嫌になる。なんか、お腹空いたなぁ」
愚痴を言っても金が無い。せめて、宇宙空間でも方向を見失わない様に出来ればいいのだけど。
「このコンパス、役に立たないものか」
電車の在処を示したコンパスは、その針を縦横無尽に動かしている。とても役に立ちそうもない……けど、あれ?
針の下の盤面、電光掲示板のようになっているそこに、文字が流れていく。
「……ぜんぜん読めない。ねぇ、アリシア。この世界の文字は読める?」
「読めますわよ」
「これ読んで」
「ええ。えっと、『距離報酬二千円が追加されます。残金は六千円です』だそうですわ」
いや、これは電子マネー機能もあるんかいっ!
自動販売機を調べ、読み取り機らしき黒いスペースを見つけ、試しにコンパスを近づけてみる。
「買えた。ジュースが買えた」
五百ミリリットルのペットボトル、一本三百円也。物価が高い。




