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ツッコミ 86 〜否応なしに〜

 海が透けて見えるほどの不自然な海域。そこに見える謎の鉄道駅。


 石板の在処を示すだろうコンパスに誘われたボクとルートは、その上空をホバリングするように留まっていた。


「これは、直ぐに戻って報告したほうがいいよね。あぁ、でもワンキタの街へ向かうように言われていたっけ」

「待て。なんか、音がしないか?」


 音? と疑問に思いながらも耳に意識を向けてみると、何処からともなくカンカンという、警告のような音が響いているように思える。


 これは……聞き覚えがある。遮断器が下りた際に聞こえる音だ。


「不可思議な事象ですわ。あなたを尾行して正解」

「おわっ!? な、え、あれぇ?」


 背後から聞こえた声に飛び退くと、そこにいたのは先程までボクが乗船していた、豪華客船で遭遇したもう一人のティアマト。


 彼女は巨人の手に乗って何処かへ消えてしまったと思っていたが、今の言葉が確かであるなら、ずっとボクのことを見ていたのか?


 周囲に目を向けるが、あの時見た巨人は見当たらない。彼女は、宙を歩くようにしてボクの下へと近寄ってくる。


「ほら、音とともに何かが来ますわよ。四角い箱のようなもの。あれは乗り物かしら。デザイン的にはどうも古臭くて。時代のマストはプラントモデルですわよ」

「プラント」

「モデル」


 ボクとルートは未だに状況が読み込めていないようで、投げかけられた言葉をただ繰り返した。


『まもなくホームに列車が到着します。ハゴイタ星雲行き快速。乗り遅れのないようご注意を』


 警告音だけでなく、そのようなアナウンスも耳に届いた。


「あの列車、あまり停車をしていかないそうですわね。私は乗ってみたいところですけど、あれはあなたに反応している様子。でも、あなたがここを離れたらどうなるかしら。消えてしまって、そのまま? それとも、再び現れる? それを試して、現れなかったら?」


 試すような視線と物言い。


「どうする、ルート」

「行くべきだ。乗り遅れるとかそういう意味ではなく、あいつから話を聞くチャンスだと思う」

「あら、猫ちゃんは冷静ですのね」

「猫ちゃん言うなっ!」


 威嚇をするルートを宥めながら、ボクも決断をする。


「分かった。一緒に乗ろう。ただし、妙な真似はしないでくれよ」

「妙な真似? 何のことかしら。受粉?」


 ……え、それはジョーク?


「……通じていないようですわね。アップデートが足りていないのかしら。マザーピースに接触していないのが原因なのか、それとも……」


 いや、もうわけわからん。知らん情報がいっぺんに押し寄せてきて、それこそオーバーヒートでも起こしそうだ。


「そんなことより、早く乗ろう」

「海の中ですが、あなたは大丈夫?」

「今のボクなら、バリアーでもなんでも張ってやるさ」

「あら、最低限の機能は無意識でも扱えるようですわね」


 ちっ。これ以上まごついていると、訊くべき質問も頭の隅に追いやられてしまいそうだ。


「俺も、そのバリアーに入られるんだよな?」

「大丈夫。……多分」

「多分かよ!?」


 なんとなく、要領は分かるんだよ。ティアマトを変化させた要領だ。それだけは分かる。でも、何故そのようなことが出来るのか。


 その答えは、きっと。あの電車の中で分かるのだろう。


 てか、首都を環状に回っていそうな電車が海の中を走るなよ。そして、星雲に行こうとするなよ。いつか都会に行って乗ってみたいと思っていた電車に、こうして異世界で乗ることになるとはなぁ。

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