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ツッコミ 85 〜消えた島にあるもの〜

「いやっふぅ!」


 思い通りに空を飛ぶ感覚は、こんなにも気持ちのいいものなのか。重力に逆らうということは、こんなにも気持ちが拡大していくものなのか。


 何処までも広がっていきそうな世界に、ボクの心は文字通りに躍っているようだった。


 船の周りをぐるりと回ったり、一気に上昇をして急降下をしてみたり。海面を滑るようにして飛んだりもした。


 ひとしきりその感覚を堪能すると、ボクは看板の手摺に腰かけるようにして着地をしたのだけど……。


「ねぇ、こんなに派手なことをしているのに、びっくりするほど注目を集めていないんだけど」


 ファンタジーな世界にはあるまじきメカメカしい見た目のものを身に着けているのに、近寄って見てみようなんて野次馬が一切現れないのがなんだか悔しい。


 寄ってきてくれる優しい人達といえば、結局は身内のみなのだから。


「だから、海の上で慌てるような人は船には乗らないってこと」


 呆れながら言うシュラナに向けて、ボクは盛大にため息をついた。


「だとしてもさぁ。こんなにもメカメカしいのに」

「お話に出てくるような見た目ですよねぇ」

「カナネはこの美しさを解ってくれる?」

「触手に蹂躙されるロボットですね!」


 ちょっと趣味が違うのかもしれない。


「まぁ、いいや。ともかく折角飛べるようになったんだし、ちょっと地図から消えた島の辺りに行ってみようと思うんだけど」

「なんでそんなことになったのかは、まぁ、あとで訊けばいいか」


 そういうシュラナのドライなところ、結構好き。


「じゃあ、コンパスを預けておきますね。……良いですか、絶対に落とさないでくださいよ!」


 それを振りだと認識できる勇気は、ボクにはない。


「俺も連れてけー!」


 そう言って腰を取り囲むスカート状のスラスターに飛び乗るルートを連れて、ボクは船から飛び上がった。


「じゃあ、軽く調べて戻ってくるよ!」

「あ、でしたら先にワンキタの街へ戻ってください! 調査団の方達が、急いでワンキタの街へ向かうそうだと船長が言っていました!」

「了解!」


 返事をして、一気に加速をする。


「うおー! もしかしたら俺より速いんじゃないか?」

「そうかな? 良かったら一緒に飛んでみる?」

「いや、あんまり高いところは飛べないんだ。うまく魔法が使えなくて」


 へぇ、何か理由があるのだろうか。ルートはその理由を知らないらしく、何で使えなくなるのかも想像がつかないらしい。


 ボクが飛べるのはメカだからだろうけれど、どうしてこのような変化が可能となったのかは、いまいちよく解っていない。


 魔法のようなものかと思ったけれど、もしもこれが魔法であったのなら、このように飛ぶことはできなかったかもしれないし。


「島のあった辺りまで、後どれくらいかなぁ」

「地図を持ってきていないから、いまいち分からないなー」


 そこが思いつきであるが故の失敗点かな。コンパスによって方向は分かるものの、目標地点が地隅から消えているということは、視界にもはいらないだろう。


 辿り着いたかどうかは、コンパスの反応を見るしかない。そこまでは一体、どれくらいの時間がかかるものか。


「一つ目の秘宝では、魚を釣ったら変な場所に移動させられただろ? 今回も似たようなことがあるんじゃないか?」

「あの時は別の場所にヒントがあったりしたよね。消えた湖って言葉も、文字の配置を入れ替えてみたらヒントになりそうにもなったし」


 消えた島、という言葉も、なにかヒントになり得るのだろうか。木、得た、島。うーん、湖よりも言葉が短いから、そう単純には行かない気もする。


「……お、コンパスの針がぐるぐると回り始めた」

「じゃあ、この辺りが目的地か」


 正確には、遥か昔の地図ではこの辺りに島があった。けれど、今の地図ではその島がない。という話だ。


「なんというか、穏やかな海。って感じだね」

「だなー。波もそんなにないし、じっと見ていると海の中も透けて見えてきそう」


 そうそう。なんだか海底まで見えてきそうなほど、澄んだ色をした海……にしても、よく見え過ぎじゃないか? それに、この真下に見えるものは……。


「あれは、……駅?」


 かつての世界で見た、電車のホームとレールのようなものが見えた。

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