ツッコミ 84 〜ボクのターン!〜
フロロの件については、一応の決着に至った。
船に戻った船長とは当たり障りない会話にとどめたし、もう一人のティアマトが残した魔法陣も、ワンキタの街へ戻るまでは棚上げ状態。
ならば後はのんびりと船旅を続けるだけなのだけど……。
「なんか、モヤモヤしちゃうんだよなぁ」
カナネとシュラナは、甲板へと遊びに出た。ルートもフラフラと何処かへ消えてしまったし、部屋にはボクとティアマトのみ。
二人について行ったり、ルートを追い掛ける選択肢もあったのだけど……。
なんて、三点リーダーが多くなるのは、自身のモヤモヤを表しているからなのだろうか。悩みのタネの巨大な花も、のんびりと日光浴をしていて、それが何とも恨めしい。
フロロの件だって、シュラナとカナネがぽんぽーんと推理をして見せたし、ボクは若干蚊帳の外。当事者となったもう一人のティアマトの件も、何が何だか分からない。
「何か一つくらい、ボク自身が何かを解決したいなぁ」
ベッドの上で横になって、思いっきり身体を伸ばした。頭の中に浮かぶのは、あのティアマトだ。
彼女は、自身の身体を変化させたように思う。ボクには胸を覆う葉っぱを変化させることしか出来ないのに。
それは何故なのか。
ヒントとなるのは、彼女の言った言葉だろう。「どうにもおかしな存在になった」、だっけ? つまり、ボクと彼女は何かが違う。それがその結果に表れているのだろう。
果たして、ボクと彼女の違いは何なのか。
思い当たるものと言えば、バルコニーで日光浴をしているティアマトだろう。
ボクは、ティアマトと分離をした。彼女はどうだったのだろう。まさかあの巨人がティアマトであるわけがない……と言うのは希望的観測なのかもしれないけれど、なんとなく、あれはもっと違う存在なのではないかと思う。
それに、彼女は花弁が変化した衣服を身に纏っていた。それは、あの植物体をまるごと変化させることができる。ひいては、それを利用して人の形をとっているのではないか。
ならば、何故ボクは分離をした? ……という疑問は、ここでは忘れておこう。
肝心なのは、あの植物体を変化させられる可能性があるということだ。
ボクはベッドを降りてティアマトに近寄った。
ボクが抜け出た跡は、ヌメヌメした粘液で満たされて気持ちが悪い。これは、あるべきものを埋めるために満たされているのだろうか。
「うぇ、気持ち悪い」
我慢をしながら、ボクは下半身をそこに突っ込んだ。汚れるのは嫌だから衣服は脱いでおいたけれど、だからこそ尚更気持ちが悪い。
「同じティアマトなんだ。あいつに出来て、僕にでもいないはずがない」
彼女の動きから、ヒントと思しき行動は得た。きっと、大事なのは開くことだ。花、開くことだ。
「開け、開け」
大事なのはイメージすること。それは、葉っぱを変化させるなかでも学んでいた。
「廻れ、廻れ」
常に開花している花を、改めて開くことをイメージするのは難しい。だから、イメージするのは開けるという行動。自分がティアマトから抜け出たときとは逆の発想。
自分を、こいつの中に埋め込むような……。
「廻れ、廻れっ!」
あいつは花弁を身に纏っていたのだから、古くから伝わるものとは違い、離れただけでは死に至らないはず。
なるほど、今なら解る。変化に至る前に花弁を散らしてはならないんだ。なんとなく掴んできた。全てが自分の思い通りになるような感覚が、今の自分の中にある。
これなら、もしかしたら。ほんのりと持っていた憧れが叶うのでは?
そんな願望が、今、花開く。
「ティアマト、ブルーミングッ!」
気分を盛り上げるように、そう叫ぶ。すると、高速回転を始めな花弁が、円形となって身体から切り離された。
それがボクの背後に光輪のように配置されると、残った植物体が変化を始める。
空を切り裂く鋭利な足。スカートのように広がり、裾から光の粒子のようなものを放つのはスラスター。それは、空を飛ぶために産み出した、ボクの新たな下半身。
「名付けて、クルージングモード!」
てってれーん。ボクは憧れの、装着型メカを手に入れた!




