ツッコミ 98 〜始まりはシリアス?〜
宇宙から戻ったボクとルートは、ワンキタの街で思わぬ遭遇を果たした。
それはシュラナとカナネとの再会ではなく、もっと別の予想外の人物との遭遇。そう、その人物はこの世界の冒険者ギルドのトップ、というだけではなく――。
「いや、なんで兄貴がこの世界にいるのさ」
「同じく転生したんだよ。お前が居なくなってすぐ」
「はぁ? じゃ、奥さんや子供は?」
「多額の保険金を用意してくれることを条件に」
あの神様、そんな優しさを見せることもできたのか。それならさ、俺のことも、かわいい彼女と少しばかり生活させてくれてから、と言うささやかな願いを叶えてからにしてくれたって――。
『それは神様でも叶えられない望みです』
イマジナリー神様が、無情な返答をしてくれた。
コホン、とシュラナが咳払いをした。ここは宿の一室を借りて即席の作戦会議室とした場所であり、先程までシュラナと、お互いに何があったのかを報告しあっていたのだ。
その流れで、兄弟和気あいあい。
「話を整理しますと、マロリックさんとキアは、兄弟と言うことですね?」
「この世界では、血の繋がりはないと思うけどな。むしろ、血の繋がりがあるとすればあいつの方か」
「あいつって、新のことか?」
二人の会話に割って入る。
「そう。そうなんだが……まぁ、此処でお前に言っておいたほうが、心の準備はできるってものか」
どういうことだ? と思いながらも、湯呑みを傾けて喉を潤す彼の言葉を待つ。その緊張が伝搬したのか、給仕役に徹していたカナネも背筋を伸ばした。
「キア、お前の姿は、あいつの娘にそっくりだ」
「あいつ、娘が産まれるような年じゃなかったぞ?」
「この世界の話だよ。この世界で転生したあいつは王族となって、今では国王だ。その一人娘が、ある日行方不明になった」
なんだか少し、背筋が凍えた気がした。
「それが、ティアマトと呼ばれる存在とそっくり? ティアマトとという存在について知ってみれば、あはぁ、そうなのかと腑に落ちることもある」
「つまり、――ボクはその娘を喰らって、その姿を取っているの?」
返ってきたのは、無言だった。
同時期に転生をしたものの、その年代は様々で。一番遅くに転生したはずの兄貴が一番年上となっている。だから、ボクがティアマトの中で眠って――。
いや、それは少し違うのでは? アリシアはこう言っていた。性別を決める前に、余分なものが入って正しく造られなかった、みたいなことを。
つまり、ボクはティアマトがその娘を喰って、そうして新たな存在に産まれる器に入り込んだ、と。
けれど、どちらにせよ。この存在が――ボクがかつての親友の娘を奪ったことには変わりない、か。
空気が沈み、誰しも発言の機会を見失ったこの場。果たしてどう進んでいくのかと、暗くなりつつもどこか他人事のように考えていれば――。
「ふははっ! マロリックからの報告を聞いて、王のお出ましだっ! 何でもキアも転生しているそうじゃないか、一体何処に……」
ヒゲの似合うワイルドな成人男性と目が合った。
「……神様の言った通りじゃないか」
……事情は判らないけどさぁ、神様、俺にだけなんか厳しくない?




