ツッコミ 97 〜そうして世界は加速する? 〜
様々な成長を遂げたボクは、見事電車とのレースに勝利した。
終点となったカドマツ星雲駅に降り立ったボク達を待ち受けていたのは、ゴールテープと台座に置かれた見覚えのある石板。
ルートを抱えたアリシアと共にゴールテープを切り、そして、その石板を天に掲げた。
「二つ目の石板、確保ッ!」
コンパスを取り出してアリシアに見せれば、しっかりと祝福を告げる文言が表示されていたらしい。
それでも、これで二つ目。秘宝と呼ばれる石板は七つあるそうだから、後五回、このような面白アトラクションをクリアしなければならないわけだ。
次はどんなアトラクションだろう。折角の宇宙、もう少し遊んでいたいね。
そんな事を話しているボク達の下へ、電車が到着した。電車から、直ぐに帰路につくため、早く載るようにとのアナウンスが響いている。
苦労を共にしたシロナガスクジラとも、これでお別れか。別れを告げようとその存在に視線を向けると――。
「進化前が勢揃いとか、ラストバトルかよっ!」
そんな光景を思い浮かべてしまうほど、シロナガスクジラとホホジロザメとシロイルカの共演には声を上げずにはいられなかった。
そうして、行きと同じく三日をかけて地上へと帰還した。
「うーん、久し振りの青空。帰ってきた感じがするなぁ」
既にクルージングモードとなって、海面を眺めている。
「アリシアは、この後どうするの?」
「一度、マスターピースの下へ戻ります。あなたの居場所はいつでも把握できますから、用事があれば訪ねますわ」
そう言って飛び去るアリシアを見送って、ルートはポツリと呟いた。
「うちのメンツにはない大きさだった」
「……何が?」
触れ合えなかったのは、勿体なかっただろうか。いや、まだチャンスはある。きっとある。親愛度というものはアイテムを使ってあげればいいというものではない。
地道にクエストをこなして、徐々に上げていった果てにあるカタルシスというものを、ボクは体験したいっ!
なんて心の中で叫びながら、進路をワンキタの街の方へと取る。腕の中には、ルートと共に石板が。
二人がこの石板を見たら、どんな反応をするだろうか。それを楽しみにしながら、ボクはスピードに乗った。
「方向違うぞー」
「え、うそ? 北にいけばワンキタの街じゃないの?」
「ワンキタの街は北にあるけど、ここから北ではないぞ」
……あれ、ボクって方向音痴なのかも?
***
「会いたかったぞ稀後っ!」
「ぎゃぁぁぁっ!? 知らない男に抱きつかれたっ!?」
ワンキタの街で待っていたのは、言葉の通りに知らない男の抱擁であった。
クルージングモードを解除して港に着地したら、タックルのように抱きしめられるんだよ? 腕の中のルートも苦しそうなんだよ?
なにこれ、何罪? 罪状はなに?
「なに、え、誰ッ!?」
「同じ釜の飯を食って、語り合った仲じゃないかっ!」
「同じ釜の飯なんて、シュラナやカナネ、ルート以外になんて……。え、まさかっ!?」
腕の隙間から、ルートが抜け出した。
それに合わせて片腕に力を入れて押しのける。よーく顔を見るが、当然見知ったものではない。けれど、その発言はもしかしたら……。
「アニキ?」
「そうだっ! 会いたかったぞー、我が愛する弟よっ! いや、ここでは妹と呼んだほうがいいか?」
「いや、特に性別はないから、弟でもいいんだけど……。てか、なんでアニキが此処に居るのっ!?」
同じ様に転生をしているのなら、あの日、砂浜で共にあの神様らしき人物を見た彼奴だろうと思っていたけど……。
「寿命で死んだら神様に転生させられた」
「え、ボクよりあとに?」
「ああ。お前が行方不明になって、後に新くんも行方不明になったと聞いたから不思議に思っていたが。やはりそういうことだったか」
それにしては……と、アニキの姿を見る。だいぶ成長しているように思えるのだが、え、ボクより前に転生したとかではなく?
てか、え、新も転生してたりするの? あの共に砂浜でアレを見た?
「ちょっと待って、新も?」
「ああ。彼奴、この国の王様やってる」
ちょっと理解が追いつかない。
なんて混乱しているボクの下へ、シュラナとカナネもやってくるのだけど……。そこでさらに混乱させられる話を聞かされる始末。
あぁ、なんて世間は狭いのだろうか。あの広い宇宙が恋しくなってきたよ。
ボクはそう、ため息をついた。




