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ツッコミ 96 〜自分の気持ちを吐き出そうっ! 〜

 適度に休息を取りつつ、ボク達はこのレースに取り組んでいた。

 先ず、シロイルカとホホジロザメのターンは、問題なく繰り返すことが出来ている。安定して電車よりも速く次の駅へ到着できているため、むしろ先に電車が出発していても、追い越せるくらいだ。


 だから問題は、シロナガスクジラのターンである。


「ルール的なことは、なんとなく掴んできたよね」


 ボクは隣に座るアリシアと、その腕に抱かれたルートに視線を向ける。


「ええ。このクジラは、レールに沿って真っ直ぐに進むのですわね」


 彼女の言う通り、シロナガスクジラはホホジロザメと同じ様に、ボク達の指示を聞くことはない。ただひたすら、レールに沿って前進をする。


「速度的には、電車と同じくらいだな」

「え、ルート判るの?」

「なんとなく」


 空を飛んで日が長いからだろうか。相対する速度には敏感であるらしい。


「問題は、クジラがコロッケやピザを迎撃できるかどうかだけど……」

「今のところ、イルカのような攻撃手段は使っていないようですわね」


 潮を使って攻撃ができないか、なんて思った時もあったのだけど、そもそもこのクジラ、攻撃を受けた時にしか潮を吹かない。


「多分、潮は攻撃を受けた合図なんだろうね」


 ボク達の結論は、それで一致していた。

 では何故、シロナガスクジラが攻撃を受けたことを知らせなければならないのか。


「じゃあ、ルート。後は頼むね」


 頷くルートを見ながら、ボクとアリシアは立ち上がる。


 攻撃を受けたことを知らせるということは、それをどこにいても確認することができるということだ。それは裏を返せば、シロナガスクジラに乗っている必要はないということ。


 要は、ホホジロザメの時はニンジンの役割を果たしていた者が、今度は働き蜂のような役目を負うべきだ、とね。


 アリシアはボクのクルージングモードと似たような、機械のような装備を身に纏っている。

 違いがあるとすれば、ボクは人型を強調するように、鋭角ながら足があるのに対し、彼女のそれは、そう、昆虫のお腹のようなフォルム。


「背中には羽みたいなスラスター? だし、本当に虫みたいな格好だよね」

「自然体、と言ってほしいですわね」


 その感性は、判らんわー。


 そう笑いながら、ボク達は宇宙に飛び出した。

 シロナガスクジラは誰かを乗せていなければ進まないようで、ルートは居残り。より攻撃力の高いボク達が、迎撃役を担うわけだ。


「あなたの戦い方。よーく、観察させてもらいますわ」


 そういいながらも、蛇腹のように開いた虫のお腹のような所から、無数のビーム? レーザー? のようなものをまき散らし、周囲の敵を駆逐している。


 格好いいなぁ。ボクもそんな攻撃がしたいなぁ。


 そんな羨望の眼差しを向けながら、なんとか自分にもそれができないかと分のなかのイメージを固めていく。


「よし、これだ! じゃんじゃじゃーん。多目的アームユニットぉ」


 腕に長方形の四角いユニットを装着する。


「ホーミング、アタックッ!」


 サイドのカバーが開き、無数の銃口があらわになる。まるでハーモニカだ。その一つ一つから、ビームが放たれ、無数のコロッケとピザを撃ち落としていく。


「ふぅん。真似をしますのね。では、これはいかが?」


 そう言うと、アリシアは昆虫のお腹のような部分の先端を前方に向けて、恐ろしく太いビームを放った。


「なんのっ!」


 自慢げに披露しているけれど、その手の攻撃は予測済みなのさっ!


「最大出力っ!」


 両腕を平行に伸ばすと、胸の前の空間にバチバチと火花が舞う。そして、そこから同じ様に太いビームを放った。


「さぁ、次はどんな攻撃を見せてくれるの?」


 自分の力を振るう。今まで出来ていなかったことを行える解放感に、自分の心が軽くなっているのが判る。


 こうした広い宇宙に訪れてみて、それを体感してみて。なんだか心境の変化でもあったのだろうか。

 なんだか、自分の心をもっと広く、より柔軟に表現してもいい気さえしてくる。


「ならば、突撃ですわっ!」


 ビームを放った時のように先端を前方に向けて、今度は身体を水平にするアリシア。すると高速で回転を始め、まさに全身でドリルを表現するそれは、またたく間に突進をして敵を殲滅していった。


「うわぁ、格好良いっ! ボクも真似してみようっ!」


 そうやって意気揚々と、両足を揃えて身体を回転させて突撃をする。


「――おえっ」

「ぎゃぁぁぁっ!? 吐瀉物が流されてっ!?」


 結果、悲惨な目に。

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