ツッコミ 99 〜繋がる過去と未来〜
どこからか現れた執事が、どこからか持ってきたとても豪華な椅子に座って、かつての新――現カムラガット王は語り始めた。
「俺は、転生する際に神様にこう言われたんだ。転生した者は魂の情報と世界との情報との間に乖離が生まれるため、子孫を残すことは出来ない」
「つまり、子供を作ることができないということですか?」
身分の差におっかなびっくりだったのか、カナネがおどおどとした調子で問い掛けた。
「そう。本来は子供を作ることができないんだ。では、何故俺のもとに子供が生まれ、こんなことになっているのかといえば……全ては、神様の計画。転生の得点として、子供が生まれた。ま、魂が入っていない抜け殻なんだけどな。妻には苦労をかけたが、気丈な人だったよ」
「その話、兄貴も聞いてんの?」
「聞いている。お前には知らされていなかったのは、成功するかどうかは未知数だからっ、だな」
どういうことかと聞けば、ボクの魂がティアマトに入ったとして、そのコントロールを奪えるかどうかは、どうしても確証がもてなかったという。
「とりあえず、一から計画を説明しようか。始まりは、用意されたゲームがなかなか開始されなかったことに業を煮やしたこと。強制的に進行させようと、別の世界から人員を送り込むことにした」
「それがキアさんたちですね」
「いや、違うんだカナネさん」
「あ、王様、呼び捨てで結構ですので」
こほん、と咳払いをして話を戻す。
「始まりの転生者は、魔大陸で活動を開始した。俺たちと同じ世界の人間だ。だけど、この世界に俺たちの世界の住人が交わったことで、神様も予想外の方向に世界自体が交わってしまったんだ」
「……ティアマトの存在か?」
ボクの膝の上でゴロゴロとしていたルートの言葉。カムラガットは指を鳴らして笑みを見せた。
「正解。ティアマトは、俺たちの世界の遙か未来に完成されたシステムだ。転生によって、世界を繋ぐルートができてしまい、導かれるようにティアマトがこの世界にやってくることとなった。そうなると、もう時間軸がややこしくなる」
「未来が過去を追い越したのか」
ボクはなるほど、と思った。そうすると、転生した人物は神様の想定とは違う動きを見せるかもしれない。
だんだん読めてきたぞ。その転生者というものがどういったものなのか。
「そう。転生者がティアマトの存在を知り、その力に魅了されて手に入れようと画策した。マロリックは、そいつらの情報を手に入れたんだって?」
「あぁ、『オルトロスの牙』と名乗っていた。オルトロス、か。確かに、それは俺たちの世界の言葉だろうな」
「この世界に根付いた言葉も、おそらくそいつが残したものだろうな」
良い面もあれば、悪い面もある。では、果たして今、そいつはどちらの側面の行動を起こしているのか。
「神様としては、その状況が面白くなかったんだ。この世界の住人に楽しんでもらおうと思ったゲームが、自分の手駒に独占されてしまう。だから、世界に馴染むように、今度はしっかりと説明をして、俺達が送り込まれたんだ。ははっ、不貞腐れるなよ、えっと、この世界ではコキアだったか。少し逸れてしまったが、神様の計画を話そう」
はいはい、とソファにに深く身を鎮めて話の続きをハンドサインで促した。要は、ボクにとってはここがスタートラインという訳だ。
「先ず、ティアマトを味方に引き込む。敵はティアマトの機能を手中に収めているからな。これでイーブンだ。そして何も知らないままに旅をすることで、お前の存在はこの世界の人に知られ始めている。姿を隠す向こうとは違って、ゲームをクリアしてもこの世界の人に受け入れられる。後は――」
「その、オルトロスの牙ってのを倒せばいいってこと?」
「そう。こちらがゲームを進めだしたから、向こうも行動を起こし始めている。おそらく、次の秘宝でかち合う筈だ」
それが最後の決戦になるのか、それとも――。
「で、ボクにとっては大事なこと。なんでお前の娘である必要があったの?」
「ティアマトは取り込んだ情報をマスターピースに送り、全ての個体で共有する。果たして、過去に触れた未来はどんな反応を見せるのか」
……ティアマトは、この世界を自分たちの因子で上書きしようとしていた。その自分たちの因子が、上書きされる?
「まさか、ティアマトの保持する世界の因子を、ボクたちがいた世界のものに上書きさせようと?」
「それだけではなく、この世界の因子も混じることになる。それらが紐付けられ、ティアマトが世界の在り方を誤認すれば、この世界にティアマトが齎したものを自ら変化させるのではないか、という話さ。そうすれば、この世界は元通りになる、かも?」
「新は、それを受け入れたの?」
「必死に頭を下げてくれたからな。お前には、結構ぞんざいに扱ったんじゃないか? あの世界に、未練を残して貰いたかっただろうからな。完全に、この世界のものにならないように」
なんかムカつく。でも、なんとなく自分のやるべきことが見えた気がした。
「一つ確認。このゲームは、神様が用意したもの。クリアした時、また現れたりするかな?」
「……現れたら、どうする?」
「そんなの、決まっているよ」
目の前で、笑顔でコロッケを頬張ってやる。それまでの細事なんて、片手間でこなしてやるさっ!




