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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と囚われの姫
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エピローグ 変わってしまった日常、変わらなかった日常①

 ついにエピローグです。

※すみません。エピローグだけ文章が長いというのもどうかと思うので、数回に分けようと思います。

「しっかし、アイツも難儀なモンだな」


 物音一つ無い病室の中で、老人は呟いた。


 そこには、二人の人間が居た。一人はチャルカ。顔含め全身を包帯でぐるぐる巻きにし、見るも哀れな姿になっている。もう一人は、今言葉を発した老人だ。


 事件の後、花桐夫妻は松林によって逮捕された。二人が娘に暴行を加えている動画が、ネット上にアップされたのだ。ヘルズが松林に投げた資料の事もあってか、取り調べは順調に進んでいるらしい。


「たかが女一人救うためにお前と戦うなんて、アイツも変わったな」


『・・・・そう。私は変わってないと思った』


 チャルカが包帯越しに、くぐもった声を出す。それを聞いて老人は哄笑を上げた。


「確かに、アイツは昔からそうだったな。いつも周りと違う事ばっかり求めて、それが格好いい事だと思ってた、救いようのない馬鹿だよ」


 けどな、と老人は嘆息して、


「そんな馬鹿に負けるお前は、とんでもない大馬鹿野郎だ」


 呆れたような目でミイラ状態のチャルカを見た。


『私が彼に勝てると思った?師匠』


 チャルカの皮肉めいた言葉に、師匠と呼ばれた老人は肩をすくめた。


「まあ少しは期待していたがな。―――――それより、さっきからそこに隠れてる奴、そろそろ出てきたらどうだ?我が輩は短気なんだ」


チャルカから目を移し、ドアに向かって師匠が言う。チャルカが首を傾げた直後、空間が歪み、中から黒いボディスーツを着た女が現れた。


「あら、まさか気が付かれていたなんて思いもしなかったわ。―――まあ、そっちの子は気が付いて居なかったようだけれど」


『・・・・ッ!』


 反射的に、チャルカの全身から殺気が噴き出る。その肩に、師匠が手を置く。


「安心しろ、ただの光学迷彩だ。それにあの程度の雑魚、我が輩の敵ではない」


「あら、流石は五代目の『最強の犯罪者』ね」


 女が微笑む。その背中から、冷徹な殺気が見え隠れする。


「で、我が輩に何の用だ?」


 師匠が殺気を放つチャルカの肩を掴みながら聞く。万力の力に握られ、チャルカが声にならない悲鳴を上げる。同時、チャルカが放っていた殺気が霧散する。


「貴方の弟子に、ヘルズって居たでしょう?ひょっとするとアタシ、次の仕事でヘルズとばったり会って、彼の事殺しちゃうかもしれないの。彼、貴方のお気に入りかもしれないけど、もし彼が死んでも仕方ないと思って、敵討ちに来ないでほしいの。お願いできる?」


 チャルカは息を呑んだ。師匠は非常に弟子思いな人間だ。もし弟子が不当な理由で殺されれば、仮にどんな理由があっても弟子を殺した人間を殺す。その師匠の目の前で、弟子を一人殺す宣言をしたのだ。チャルカは師匠が激怒して女を瞬殺する瞬間を見逃すまいと、目を大きく見開いた。だが――――――


「ああ、構わないぞ。煮るなり焼くなり、お前の好きにしろ」


 師匠は驚くほど冷酷に、言い切った。


「ふふ。ありがと。じゃあ、ヘルズを殺したらまた会いましょう」


 光学迷彩を使ったのだろう、女の姿が空間に溶ける。女が居なくなった事を本能的に察知したチャルカは、師匠に詰め寄った。


『師匠、どういう事?ヘルズが死んでもいいっていうの?』


「まあ落ち着け、ミイラ=チャルカ」


 師匠はチャルカをなだめると、パイプ椅子に腰かけた。


「もちろんヘルズが死んだら我が輩も動くさ。だがな、」


 そこで一旦言葉を切り、師匠はニヤリと笑った。





「あんな雑魚にむざむざ殺されるほど、我が輩は生ぬるい訓練は行わなかったぞ」

 



 花桐邸での事件が経った次の日、姫香の教室はお祭り騒ぎだった。


「姫香、ヘルズに誘拐されたんだって?」


「じゃあヘルズの顔ばっちり見たんだ。ねえ、どんな顔だった?イケメン?」


「でもまさか花桐さんが虐待を受けてたなんて・・・驚いたわ」


「そうだよ姫!どうして俺らに相談してくれなかったのさ⁉」


 賢一が言うと、他の男子達が一斉に頷いた。


「え、えっと・・・その、ごめん」


 謝罪するも、皆からの質問は止まらない。


「でもこの場合って花桐さんの住む所はどうなるのかしら⁉」「確かに!姫香、今日家泊まってく?」「姫ちゃん、私一人暮らしだから、一緒に住まない?」「というか姫、昨日はどこに泊まったの?」


「え、えっと・・・」


 言えない。昨日は弐夜先輩の家に泊まったなんて。弐夜先輩の家に泊まったと言えばイケナイ想像をされそうだし、ましてやヘルズの家に泊まったとか言うのは論外だ。多分、質問攻めで精神的に死ぬ。


 その時、廊下から誰かが走ってくるような音がした。教室のドアが開き、カメラを持った男が数人入っていた。


――まあ来るとは思っていた。新聞記者だ。

 一難去ってまた一難。姫香は、この言葉を身に染みて感じた。








 屋上のドアが開き、ヘルズが屋上に入って来た。目的の人物を見つけると、「よっ」と言い、右手を上げた。


「ったく、何の用だヘルズ?もうすぐで朝のホームルームが始まるんだが」


 降谷はポケットに手を突っ込みながらヘルズにぼやく。ヘルズは手の中で針金を弄びながら軽口で反論する。


「ちょっと凄い事に気が付いてな。まあ、返答次第ではホームルームまでには間に合うぜ」


 その脅迫のような物言いに、降谷は不信感を覚えた。


「どうした?」


 降谷が眉をひそめて聞くと、ヘルズはニヤリと笑って、懐に手を入れた。


「お前に一つ、聞きたい事がある」


「ああ、オレに分かる事なら何でも聞いてくれ」













「じゃあ聞くぜ。お前、何重スパイだ?」





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