協力(?)プレイ
降谷はタバコの煙を吐き出すと、ヘルズに聞く。
「どうだ、ヘルズ。ここはオレと協力しないか? オレが居れば百人力だぜ」
「いやお前最初から仲間だろ」
いつから敵に回ったんだよ。
「フッ、それもそうだな」
だがそれに対しても、格好つける降谷。・・・どうやら、マジで今まで出番がなかったらしい。
「じゃあ行くか、ヘルズ。キリング・タイムだ」
「キャラが被るからやめろ!」
厨二病は俺の専売特許だ! と心の中でツッコミを入れる。
「まあいいか。行くぞ、駄目教師」
「ああ、そうするか」
降谷はそう言うと、ポケットから手榴弾を取り出した。それをテロリスト達に放り、自分は耳を塞ぐ。
「ってオイ!」
突っ込むんじゃなかったのかよ⁉
そんなヘルズの心の声を無視して、手榴弾が爆発する。爆炎がヘルズの元にまで届き、慌てて両目を庇う。
「グアッ!」
ヘルズとて人間、もとい半人間だ。熱いものは熱いし、痛いものは痛い。目を焼かれたら、途方もない苦しみを味わうだろう。それは嫌だ。
だがそれでも、腕が痛い、熱い。
「何するんだクソ教師⁉」
「おい駄目怪盗、目よく見開いて見てみろ」
いつもの降谷の声を聞いて、ヘルズは庇っていた腕を降ろす。そして目を開くとーーー
「なっ⁉」
そこには、異様な人間達が居た。
腕が丸太のように太い人間、額の少し上の辺りに角の生えた人間、腕が毛むくじゃらの人間、足が蹄の人間・・・
どれも、まともな人間の体ではなかった。
「まさか、コイツらーーー」
「ああ、どうやらそのまさかのようだな」
『細胞強化プロジェクト』
それは、かつて『最強の犯罪者』が生み出した実験の1つである。
人間の体に動物の細胞を投与し、人外の力を持った人間を産み出すと言う、非人道的な実験だ。ヘルズが吸血鬼の力を手に入れたのも、この実験によって産み出された物だ。
「悪いがゲーム機はしまえ。いくらお前でも、足だけじゃ厳しい」
「だろうな」
降谷に言われ、ヘルズは大人しくゲーム機をしまう。流石にこんな敵にゲームをやりながら完全勝利できる自信はない。少し真剣勝負と行こう。
「さあ、かかって来い!」
瞬間、足が蹄の男がこちらに走ってくる。おそらくロバか馬だろうか、あっという間に背後に回り込まれる。それに気を取られた隙に、四方を塞がれる。
「チッ、面倒だな」
ヘルズと背中合わせになりながら、降谷が舌打ちする。確かに、この状況は少し厳しい。
「おいニセ教師、お前に少しの間背中預けてやる。しっかり守れよ」
「それはこっちの台詞だ厨二病怪盗。オレの背中をちゃんと守れよ!」
そして戦いが始まったーーーーー
ここで、互いの能力差を考えてみよう。
かたや『怪異の王』とまで呼ばれる、吸血鬼。
かたやただの動物。
力の差は、一目瞭然だった。
「ぐぼぁ!」
「オラ、どんどん来いよ!」
敵の鳩尾に的確なパンチを決めて、ヘルズは叫ぶ。ちなみに能力は解放していない。危なくなったら使う予定だ。
「オラ、こっちも行くぞ!」
降谷も負けていない。毛むくじゃらの男の手を掻い潜り、腹に蹴りを入れる。
「ウホッ!」
「ゴリラにサイ、ラーテルにロバ・・・ここは動物園じゃないぞ」
「全くだぜクソッタレ。何なんだよコイツら」
愚痴りながらサイ男の突進を寸前で回避し、壁に激突させる。そして続けざまに来たラーテル男の一撃に、カウンターで合わせる。
「ラーテルには気を付けろ。ラーテルは体の硬さで有名だ。生半可なパワーだと効かないぞ」
「分かってる!」
ラーテル男の攻撃を回避しつつ、ヘルズは叫ぶ。一旦宙を蹴り、天井まで跳ぶ。
「《没落権勢・天覧桜》!」
ヘルズが空中から振り下ろすような踵落としを撃ち放つ。そして威力が足りないと困るのでーーー
「邪眼、解放!」
片目の奥が熱くなり、人外のそれへと変わる。体が焼けるような熱を帯び、筋肉が増加していくような感覚。
「吹き飛べ!」
ヘルズの攻撃力がラーテル男の防御力を上回り、ラーテル男の肉体に炸裂する。ラーテル男が悲鳴を上げる暇も与えず、ヘルズは拳を繰り出す。
「《叛逆未遂・雷》!」
内臓が裏返るような強力な拳には敵もなす術もなく、喀血しながら真後ろに飛んでいく。これで敵もしばらくは動けまい。
「オイオイ、これならゲームをやりながらでも勝てるぞ!」
ヘルズは嗤う。邪眼を解放したはいいが、弱すぎる。一人だけ違う次元で勝負をしているような気分だ。退屈すぎて5分で飽きる。
「確かにな! コイツらは弱すぎる!」
その意見に降谷も同感のようだ。さっきから投げ技しか使っていない。
となれば一番の問題はーーーー
背中の『味方』だった。
「おいニセ教師! お前が投げたゴリラがこっちに来たせいで潰れかけたぞ! お前協力とか言っといて裏切る気じゃないだろうな!」
「そんな訳ないだろ。というかお前こそ裏切る気なんじゃないか? さっきからお前の蹴りがオレに当たりかけてるぞ」
「はあ? そんなの知るかよ。お前の反応速度が遅いだけだろ。まったく、これだから社会人は」
「引きニートには言われたくないな」
「あ? 引きニート舐めんな。住所特定、神をも恐れぬ2チャンネルへの書き込み、どれを取っても一般人を遥かに上回ってるぞ」
ヘルズがリフティングのように蹴り上げたゴリラ男を、降谷に向けて蹴り飛ばす。ゴリラ男に激突され、降谷は壁に叩き付けられる。それを見て、ヘルズは頭を掻く。
「いやー、済まんなニセ教師。ついつい足が滑っちまった。でもまあ、避けられなかったのは本人の技量の問題だし、許してくれるよな!」
それを聞いた降谷のこめかみに青筋が浮かぶ。ゴリラ男をどかしながら、降谷が立ち上がる。
「ああ、そうだな。確かに今のはオレが悪い」
そして突っ込んできたサイ男の勢いを、ヘルズのいる方向へ受け流す。
「がはっ!」
背中に強烈なタックルを受け、体が宙を舞う。数メートルは飛んだだろうか、そこでようやく顔から床に着地する。
「痛え!」
鼻の皮が若干擦りむけた気がする。というか顔が痛い、顔面が痛い。
「いやあ、悪いなヘルズ。受け流したらたまたまお前の方に行っちゃったよ。でもまあ、避けられなかったのは本人の技量なんだし、仕方ないよな!」
痛みに悶えるヘルズに、降谷が恍惚とした表情で親指を立てる。それをヘルズの額に青筋が浮かぶ。
「確かにそうだなニセ教師!」
人外の能力解放状態なので、傷の治りが異様に早い。もう痛みが治っている事を確認すると、ヘルズは降谷に飛びかかった。
「《絶滅迅雷》!」
ヘルズの回し蹴りを、降谷は左腕で防御する。そこを逃さず、ロバ男が特攻してくる。必然的に、降谷とロバ男が組み合うような形になる。
そこに、ヘルズは必殺技を叩き込んだ。
「《獣王・無塵》!」
一回転してから繰り出される両足による踵落としが、降谷とロバ男の脳天に振り下ろされる。こんな物を受けたらひとたまりもないだろう。
「グッ!」
間一髪、無様な体勢でロバ男を引き剥がし、ヘルズの攻撃を避けた降谷を見て、ヘルズは舌打ちした。
「チッ、外したか」
だが打ち出された勢いは止まらない。両の踵がロバ男の脳天に叩きつけられ、ロバ男の頭蓋骨がかち割れる。ロバ男の体が床に倒れる。
「ヤベッ、殺しちまったか?」
呟くと同時、降谷が拳銃を抜いた。そしてヘルズに向かって連射してくる。
「よっと」
ヘルズはそれを悠々とかわす。ヘルズに当たらなかった弾丸は
すべて、ヘルズを狙っていたサイ男に当たった。
「グアッ!」
サイ男が床を転がる。そこに、降谷が超規模手榴弾を投げる。もちろん狙いはヘルズ。だが、ヘルズはこれを回避した。
「お前の思い通りにはさせねえよ!」
床を蹴り、遥か後方へ跳ぶ。そして200mほど移動した時、降谷の放った手榴弾が爆発した。
ただし、犠牲になったのはサイ男のみだが。
「ぐ、ぎゃああああ!」
サイ男が、断末魔の悲鳴を上げる。いくらサイ男が『細胞強化プロジェクト』によって人工サイになり、体が頑丈になったとしても、所詮はサイ。爆発の前には、なす術もなく死んでいく。
うっかり殺されかけたヘルズは、降谷に怒鳴る。
「やってくれるじゃねえか、ニセ教師!」
「ふん。たかが手榴弾程度にかの有名なヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニングが負けるとは、随分と情けないな」
「言ってくれるじゃねえか・・・・」
床を蹴り、激しく跳躍。降谷に超高速で接近する。そして、右手を左手で押さえる。左手に押さえられているにも関わらず、右手が震える。
一方、降谷も懐に手を入れる。
「《暴帝》ーーー」
「《甲賀忍 一の秘伝》ーーー」
敵地のど真ん中で、2人はぶつかる。
「《撃滅》!」
「《幻想術・桜吹雪》!」
降谷の手から舞った手裏剣を、超絶的な破壊力を持った右腕が弾き返す。手裏剣が衝撃波によって縦横無尽に舞い、周りの敵を次々に刈っていく。ーーーどう見ても過剰攻撃だ。
「はあ、はあ・・・」
《人工吸血鬼》の能力が発動し、《暴帝撃滅》によって破れた腕の血管や、手裏剣を受けてついた外傷を再生していく。
「ぜえ、はあ・・・」
一方降谷も、肩で息をしている。どうやらヘルズの決死の一撃を死に物狂いでかわしたようだ。呼吸が荒い。
「なあ、これって、不毛、過ぎないか・・・・」
「ああ、全く、だな・・・」
手裏剣が、虚しく床に落ちていく音と共に、ヘルズと降谷は床に倒れた。
次回は11月25日更新予定です。




