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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と文化祭
114/302

ヘルズ、出陣

今回はヘルズ視点です。

 文化祭当日、午前11時30分。


 黒明弐夜ことヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニングは、部屋でテレビゲームをやっていた。


「ったく、何だよこのオープニング。滅茶苦茶なげえな」


 現在、ヘルズがやっているゲームは、『そろそろ・遊ぶ・おじさん達』という敵対組織を潰した時に手に入れた【ネバー・ファンタスティック・ストーリー】というゲームだ。ロゴを見たときからクソゲー臭がしたが、それでも一途の可能性を持ってやってみた所、この有り様だ。


「なんで3時間も待ってるのに始まらねえんだよこのゲーム。故障か?」


 ヘルズはゲームに付いていた説明書を見る。そこには、このゲームのストーリーが全て書いてあった。


『ここはノーマルという異世界。今この世界は魔物・デスメタルパンクによって征服されていた。彼らはダサークという特殊能力を使い、人類を蹂躙していた。


 そんな奴らに対抗するため、人類は1人の男を選別した。それが君の従兄弟だ。従兄弟はアミーダという特殊能力で気持ちよく魔物を倒していたが、ある日下痢で倒れてしまう。


 そこで君は相棒であり町内会の会長もやっているハイジとともに従兄弟に下痢止めを渡しに行く事を決意した。ちなみに、町内会の副会長の名前がズラミチ、PTAの副会長の名前がヨーゼフ、三丁目の鍛冶屋の名前がペーター、二丁目の時計屋の主人の名前がアルム・・・(中略)


 そんな彼らの思いを背負って、君は下痢止めを積んだ馬車に乗り込んで出発した。ちなみに主人公の身長は180cm,体重50kg,座高80cm,筋肉量20kg,体脂肪率7%・・・・(中略)


 と、ここまで17ページに渡って主人公について語ってきた訳だが、次はデスメタルパンクの使う特殊能力、ダサークについて説明していこう。それは遥か昔、とある海賊王が隠した伝説の秘宝、ワンパークを手に入れた魔族の生き残りが・・・(中略)


 と、ここまで170ページに渡って奴らの技について紹介してきた訳だが、次に君の従兄弟の使う技、アミーダについて説明していこう。それは遥か昔、ドラゴンボーズという最強の坊主が・・・(かなり中略)


 と、ここまで220ページに渡ってアミーダについて紹介した訳だが、次に敵キャラクターについて・・・(ものすごく中略)


 逃亡と土下座のファンタジー、ここに開幕!』





 ・・・・完全に駄作だった。


 むしろ、ここまで駄作を作れるのはある意味最強の才能なんじゃないかと思うくらいだ。ちなみにこの説明書、アミーダやダサークなどといった要らない情報類が合計899ページ、操作方法の説明が1ページといった、キレたくなるほどアンバランスな説明書なのだ。


「というか何だよこの『逃亡と土下座のファンタジー』って。戦う要素どこにもねえじゃん」


 だが、やってみると案外面白いかもしれない。だからこうして付けているわけだが、いつまで経っても始まろうとしない。


「何なんだよ、これ」


 その時、電話が鳴った。手を伸ばし、電話を取る。



「はいもしもし。こちら御意三兄弟の長男の黒明です。趣味は『致しません』と言う事、特技はインオペです。何かご用のある方は110までご連絡下さい」


 電話の相手が誰であろうと、開口一番ふざけまくる。これがヘルズ流だ。


『ちょっとヘルズ、私よ。ニノ宮。貴方の彼女にして愛人、さらに御意三姉妹の長女よ』


『おいちょっと待て。最初から最後まで全部違うぞ』


 なんで彼女と愛人が同一人物なんだよ。


『学校がおかしいの。悪いんだけれど、5分以内に来てもらえないかしら』


「嫌だ。俺は今敵対組織「そろそろ・遊ぶ・おじさん達」略してSAOを潰した時に手に入れたゲーム【ネバー・ファンタスティック・ストーリー】をやってるんだ。という訳で無理だ」


『・・・そんな三丁目の八百屋のおじさんがラスボスなゲームなんてやめて、早く来てよ』


「ゲッ、マジか⁉ 何で知ってるんだよ⁉」


 三丁目の八百屋のおじさんと言えば、オープニングが始まってすぐにスライムにいじめられていた主人公を助けてくれた人だ。ただ、途中から急に弱体化して一緒にスライムにやられていた人でもある。


『そのゲームを作ったのが私だからよ』


「開発者お前か!」


 こんなクソゲーを作った奴が、知り合いに居たとは。


『いいから早く来なさいよ。どうせまだオープニングの所でしょう?』


「ああ、そうだが・・・なんで分かったんだ?」


『そのゲームのオープニングが24時間掛かるからよ』


「丸一日もこのクソつまらねえオープニング見せられるのかよ⁉」


 ちなみに調べた所、スキップ機能はない。代わりに、『リセット』、『リセット(人生ごと)』というボタンが、画面の左端にあった。


『ああ、あとチュートリアルはその2倍よ。しかも途中で死んだら最初から』


「何なんだよこのガチのクソゲー⁉」


『さあ、そんなクソゲーやってないで早く来なさい。『御意』はどうしたの?』


 電話越しでニノ宮が、得意気に聞いてくる。何がそんなに得意気なのかは分からないが、とりあえず癪にさわる。


「致しません」


 ヘルズはきっぱりと言うと、電話を切った。そして、面倒くさそうに服を着替え始める。


「まさか、三丁目の八百屋のおじさんがラスボスだったとはな・・・驚きだ」


 スライムに負けるような奴がラスボスとか色々終わってるとは思うが。


「まあ、それもゲームの味の1つなんだろうな」


 世の中には、カジキマグロを口にくわえて登校する女の子を落とす恋愛シミュレーションゲームもあるくらいだ。こういうゲームがあっても不思議ではない。


「さて、と。それじゃあ行くか」


 盗みに入る時の正装に着替え、ヘルズは言う。行き先は学校なので本来は制服なのだが、もしニノ宮の言っていた通りだったとすると、何らかの敵との戦闘になる可能性が高い。だが一介の学生が敵を倒しまくっていたら、流石に怪しまれ、注目される。その点、ヘルズの格好で行けば「たまたま通りかかったら、ヤバそうだったので殲滅した」という言い訳が通じる。


「あとは・・・」


 携帯ゲーム機、愛用の銃二丁を持って学校に向かう。本気で走れば5分もかからない。あっという間に学校に着いた。


 校門に着いたヘルズを見て、ニノ宮が声を掛ける。


「早かったわね、ヘルズ」


「非常時なんだろ。最速で来たさ」


 風圧で乱れた髪を直し、ヘルズは校舎を見る。すると、確かにニノ宮の言う通り、文化祭にしては異様なオーラが漂っていた。


「確かに、嫌な空気だな。こんな感覚は俺でも数回しか経験した事がない」


「そう。それは危険ね」 


 ニノ宮が学生鞄の中から白いボールを出し、ヘルズに渡す。久し振りの登場となる、巨体な蜘蛛の巣を作り出せるボールだ。


「もし文化祭が面白くなかった時に文化祭をぶっ潰すために、今あるおもちゃを全部持ってきたわ。他にも欲しいのがあったら言って」


 ニノ宮の言葉に、ヘルズは首を振る。


「いや、俺はいい。俺には回復能力があるからある程度安心だが、お前は違う。自分の身を優先しろ、お前が死んだら俺が困る」


「ヘルズ・・・・」


 その時、校内から銃撃音が響き渡った。それと同時に、「キャアアアアア!」という生徒の悲鳴も。もう迷っていられない。ヘルズは眼帯を外した。人外の眼が、校内の様子を鮮明に捉える。


「俺が見る限り、廊下に生徒が出ている様子は見られない。という事は敵は各教室を見張っている、すなわち大人数だと考えられる。ここは分散して行った方がいいだろうな」


「その情報は確かかしら?」


「俺の視力は両目2.0。邪眼は4.0だ。俺を信じろ」


 眼帯で邪眼を覆いながら、ヘルズは言い聞かせるように言う。


「校内には降谷、綾峰、チャルカがいるが、3人がどこまで戦力になっているかは正直分からねえ。もしかすると、生徒を人質に取られて抵抗できない状態かもしれない。だから出会っても期待はするな。自分の力を信じろ」


 恐らく、校内にいるのはテロリストだろう。厨二病の勘が語っている。


 だとすれば、奴らは生徒を人質にするくらいはしているはず。すると、他人の気遣いをしないチャルカはともかく、綾峰と降谷は動けないのではないだろうか。


「生徒って言う鎖か。面白いじゃねえか」


 もし、生徒が1人も居ない状態でヘルズがテロリストと戦えば、圧勝だろう。おそらく15分もあれば充分だ。だが、関係ない一般人を巻き込んでいる以上、その難易度はグンと上がる。


「ま、たまには縛りプレイも悪くないか」


 ヘルズはそう言うと、地面を強く蹴った。音に近い速度で窓に突っ込み、破砕音と共に校舎に飛び込む。


「何者だ!」


 おそらく見張りであろう、雑魚そうな男がヘルズに銃を向けてくる。その顎を蹴り飛ばして、ヘルズは言う。


「ヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニング参上。さあ、戦いと行こうぜ!」


 

 



 

次回は11月15日更新予定です。

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