表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
根暗な少年の怠惰な青春黙示録
105/302

能ある鷹は爪を隠すというが、本当に能力のある者は、自分が鷹であるという事実すら隠す。

今回で4章ラストです!

「・・・・なんの事だかさっぱりだな」


「とぼけないで。今回の事件の首謀者、貴方でしょう?」


 ・・・勘違いもいい所だな。


「証拠はあるのか?」


「状況証拠なら、いくらでもあるわ」


 そうか。


「じゃあ、俺がどんな手口で何をしたのか、説明してもらおうか」


 俺はあえて挑発するように言った。これでイーデアリスがミスをすれば、御の字だ。


「いいわよ。まあ多少憶測が入っているかもしれないけど、そこは目を瞑って頂戴」


 イーデアリスはそう前置きすると、話始める。


「まず貴方は、私との会話の中で修学旅行費の保管方法について聞き出した。そして修学旅行費を出し忘れたフリをして職員室に忍び込み、修学旅行費を盗みだした。職員室は当時無人だったらしいし、もし仮に居たとしても貴方の能力を持ってすれば、潜入なんて簡単ですものね」


《空間断裂》の事を言っているのか。


「そしてまんまと修学旅行費を盗み出した貴方は、なに食わぬ顔で家に帰り、次の日を待った。違う?」


「想像力が豊かなんだな」


 イーデアリスの推理に、俺は皮肉で感想を入れる。イーデアリスは肩をすくめる。


「嵯峨村くん程ではないわ。で、続けてもいいかしら」


 俺は頷く。クールな奴が格好つけてミスするのは、なかなか面白い。


「貴方が修学旅行費を盗んだ結果、私は笹原さん達のグループからいじめを受けた。ーーーこれについては、後で話し合いね。

 まあ、今はいいわ。そして数日経った後、貴方は自分の隣の小渕くんのロッカーの中に封筒を入れ、松林刑事を騙して呼び出した。まあ恐らく、『修学旅行費を盗んだ奴がヘルズだ』とでも言ったのでしょうね。そして結果小渕くんは誤認逮捕され、真犯人は明かされないまま、事件は幕を閉じた」


「・・・・・・・」


「警察を呼んだのは、恐らく事件を大事にするためね。学校側が先に犯人を見つけ出せば、秘密裏に解決しようとする可能性が高い。でも、熱血馬鹿でかつ警察の松林刑事が調査すれば、その場で犯人が露見する可能性は大。だから警察を呼んだんでしょ?」


 そこまで言うと、イーデアリスは俺の眼を見た。


「貴方にいくつか、聞きたい事があるわ。どうして警察を使ってまで、犯人を公にする必要があったの? そしてもう1つ。

ーーーどうして、こんな事件を起こしたの?」


 イーデアリスの言っている事は妄想だ、根拠がない。ここで俺がしらを切れば、彼女も諦めるだろう。


 だが、ここで言わなければ多分、イーデアリスは気付かない。

 だから仕方ない、彼女の質問に答えよう。


「・・・・まず質問1の答え。犯人を公にしたのは、修学旅行費を盗んだ犯人がお前じゃないと、笹原良子たちの取り巻きに教えてやるためだ」


 イーデアリスの眉が、ピクリと動く。


「それは、自白と取っても構わないのかしら」


 俺は頷く。もういい、この際だからはっきりと言おう。


 この一連の事件の犯人は、俺だ。


「もう1つの質問の答え、聞いてもいいかしら?」


 俺はまた頷く。


「先に言っておくと、お前の言った妄想は全て正解だ。さすが天才だな」


「御託はいいから、さっさと答えを言いなさい」


 イーデアリスが急かしてくる。やれやれ、面倒なことだ。


「今日、あそこまで仲が良かったんだ。明日はきっと、言ってくれるだろ」


「何を?」


「Happy birthday.イーデアリス」


 俺はいつも通りの平淡な口調で言う。


 そう、明日はイーデアリスの誕生日だ。


「1日早いがおめでとう、イーデアリス。俺からの誕生日プレゼントだ」


 俺からイーデアリスにあげる、誕生日プレゼント。

『世界』を歪める能力を持った彼女が能力で手に入れる事が出来ない、プレゼント。それはーーー






『友達』





 イーデアリスの眼が、大きく見開かれる。


「まさか貴方、そのためにーーー」


 そうだ。そのためだ。


 修学旅行費を盗み、警察を呼び、小渕に罪をなすりつけたのは。  





 全て、このための布石だった。




「いくらお前が俺達を『劣等種』だと思っていても、ここから友情関係を壊す事はしないだろう。せめて今年くらいは、大勢の人に誕生日を祝ってもらったらどうだ? 案外、いい物かもしれないぞ」

 

 これが、俺からの誕生日プレゼント。


 自称『最強』のイーデアリスが、手に入れる事が出来なかったもの。


 笹原良子を、小渕を、松林警部を。


 たくさんの人を犠牲にした上で成り立った、誕生日プレゼントだ。


 まあそれは関係ない。少なくとも、俺達には。


「ーーーありがとう」


 イーデアリスが、とても小さな声で俺にお礼を言う。・・・改造された鼓膜じゃなければ、聞き取れなかったな今のは。


「プレゼント、喜んでもらえたようで良かったよ」


 そう言って俺は歩き出す。すると、後ろから「待ちなさい」という声が掛かる。俺は振り返った。


「まだ何か?」


 俺が聞くと、イーデアリスはいつもの冷酷な眼で、俺を見た。


「貴方が私のために、一芝居打ってくれたことは分かったわ。感謝もしている。友達なんて要らないと思っていたけれど、実際、居るのと居ないのでは大きな違いね。胸のつっかえが1つ、解けた気分だわ。でもね、もう1つ、貴方に聞かなければならない事があったの」


 ・・・何だろう。嫌な予感がする。


「リットンに頼んで、貴方の経歴を調べてもらったわ。貴方が2度私に見せた『アレ』について、何か情報を得られると思ったの。そうしたら、もっと驚くような物が見つかったわ」


 イーデアリスがパチン、と指を鳴らす。すると、頭上から書類が降ってきた。それは紛れもない、俺が『名も無き調査団』に入るときに、提出した経歴書だ。  


 ほとんどの項目が、白紙の経歴書だ。


「貴方の経歴だけ、リットンがいくら探しても出てこなかったわ。どんなに調べても、貴方の情報は1つも無かった。そう、1つも」


 それがどうした、とは言えないよな。


 仮にも俺達は『最強の犯罪者』の懐刀の組織だ。そんな組織に、信頼の置けない奴を置くわけにはいかない。白紙の経歴書を提出して組織に入れるなど、あっていいはずがない。


「貴方がやったであろう『アレ』といい、今回の手際といい、この経歴書もそう。私は貴方に対しての認識を変えなければならなかったわ」


 そうだろうな。


 俺が『名も無き調査団』に入ってからずっと、イーデアリスは俺を『人畜無害な根暗』と認識していたはずだ。だが、今回の件でその認識は、180度変わることになった。


「貴方、いったい何者なの?」


 チートキャラに聞くセリフ1位出ましたー。

 だが対して嬉しくない。何故なら俺は、彼女が思っているほど、チートキャラではないのだから。


「・・・・ただの凡人ですが」


「見え透いた嘘はやめなさい。正直に答えて」


「お前に言う義務はない、と言ったら?」


「誕生日プレゼントの上乗せよ」


 ・・・・まだ要求するのかよ。


 結構、いやかなりがめついな、こいつ。


 しかし、来るとは分かっていても動揺はするな。


 何者、か。 


「・・・・・」


 俺の頭を、今までの記憶が走馬灯のように浮かんでいく。その中で最もよく覚えているのはーーー2つ。


 



ーーキモいんだよ、陰キャラが!


ーー死ねよ! お前どうせ存在感ねえんだから!


ーーとっとと消えろ! ぼっちが! 


 そう言って、笑顔で俺をいじめていた女子達がーーー




ーー痛い、痛いよお・・・


ーー許して、許してください・・・


ーー何これ、い、痛い・・・


 数秒後、血塗れで床に倒れていた。

 





 これが1つめ。そしてーーー













《計測不能》





 2つ目が、これだ。




「・・・お前に、極秘情報を教えてやる。『最強の犯罪者』についてだ。これは本当に極秘情報だから、嵯峨村や向井原にも言うなよ」


「⁉ ちょっと待って、私は貴方の事を聞きたいーーー」


 イーデアリスの言葉を、俺は遮って話す。


「『最強の犯罪者』は基本、親から子へと受け継がれていく。産まれた子供は1歳の頃から『最強の犯罪者』になるための教育を受け、育っていく。そして跡取り同士の揉め事を避けるためにも、『最強の犯罪者』は子供を1人しか作らない」


 女は裏社会で買った女で、子供を産んだ後すぐに殺されるため、子供は母親の顔を見ることがない、という情報は、この場においては不要だろう。


「だが万が一、1回の性行為で2人の子・・・・一卵双生児、つまり双子が産まれてきた場合、どうするか」


 俺はイーデアリスに問い掛ける。イーデアリスは話を聞くので精一杯のようなので、話を続ける。


「その場合、片方の子が『最強の犯罪者』の跡取りとなり、もう片方の子は捨てられる。整形手術と改造人間の手術を施され、裏社会に捨てられる。

 そこからは本人次第だ。裏で育つもよし、表でのうのうと生きるもよし。今もどこかで、根暗でぼっちなどうしようもない生活を送ってるんじゃないか?」


 「貴方、どうしてそれをーーーいえ、というよりそれってーーー」


「極秘情報はもう話した。俺はもう帰るぞ」


 そう言って、俺は歩き出す。だが、その前に石の壁が出現し、俺の行く手を阻む。


 イーデアリスの能力だ。


「待ちなさい。今の話、本当なの?」


 イーデアリスが、真剣な声で俺に聞いてくる。


「だとしたら、『アレ』はいったいーーー」


「それ以上の深入りはするな」


 自然と、声が大きくなってしまった。


 直後、目の前の石壁が砕ける。学校の壁や床にも亀裂が走り、ミシミシと嫌な音を立てて揺れる。


「・・・・分かったか」


 そう言った俺の声は、自分でも驚くほど冷たかった。


「俺の気まぐれに立ち向かえるほど、お前は強くない」


 最後に俺はそう言うと、早足で廊下を歩いた。まあイーデアリスは今の攻撃に驚いて追ってこないだろうが、念には念を入れて、だ。


「しかし、少し喋りすぎたな」


 というか、『一見根暗に見えるけど、実はチートキャラ』みたいな展開をやりたくはなかった。一般人である俺には、荷が重過ぎる。


「そういえば、あいつでも気付かない事があったんだな」


 それは、理由。


 俺が今まで隠していた掌握力を活用してまでイーデアリスに友達を作ってあげた、理由。


「もうすぐ、状況が急速に動く。その時に利用できる仲間は、1人でも多い方がいい」


 そのために、わざわざ俺が動いてまで、イーデアリスを助けたのだ。彼女には、しっかり動いてもらわなければ困る。


「俺の目的を、達成させるために」


 俺自身のために、俺は目的を達成させる。






 仮に仲間こまを全て使ってでも、俺は自分の目的を果たす。









次回は10月21日更新予定です。

そして次回から5章、再び主役はヘルズです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ