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VS.ロザリア⑤ 勝利・仲間

 もっと早く気付かなければいけなかった。

 よくよく考えればごく普通の当たりまえのこと。


 同じことをしても人によって差は生まれる。

 このゲーム風にいうなら同じ武器を違う者に装備させてもステータスの上昇率は違う。

 能力も同じだ。

 使い手がいいほど能力は光る。

 どれだけ優秀な力を兼ね備えていても、全く使いこなせなければ猫に小判、豚に真珠だ。


 ロザリアがぺらぺら喋ってくれたことができることのすべてだと思っていたけど、ロザリアにはできなくて私にできなことがある。

 同一の力故に相手がやっていることしかできないと思い込んでしまっていたけど、どうやらそんなことはないらしい。

 私は私自身(この裏ボス)のスペックを見誤っていた。


「フラウ! 右に動かすよ!」」


 私は()()()()()()()フラウの座標を動かし、変幻自在な攻撃を行う。

 まだ空間支配を模倣していない私は引き寄せられる転移に対して座標をブレさせることで対応した。

 実際その策で私達が動かされることはなくなったし……私は油断してやられちゃったけど。

 だから止まっていない相手を動かすことはできないと思っていた。


「案外やってみるとできるもんだね」


「ちっ、私にはできないのに……!」


 ちょろちょろと位置を変えるフラウ。

 フラウ単体の力は通用しないかもしれないけど、陽動としては十分。

 少しの隙さえ見せてくれれば、私がその隙をつける。


 さっきからロザリアの動きは精彩を欠いていて、攻撃も通りやすくなっている。

 本当はこれを機にモード・吸血鬼(ロザリア)を解除して他の力に切り替えたいけど、身体を戻してしまうと力のスペックも落ちてしまうかもしれないから解けない。

 それでも単純な能力勝負なら私の方に分があるから、このままでも大丈夫。


「やっほー、フラウに手を出すのはやめてくれない?」


 フラウと位置チェンジしてロザリアを蹴りつける。

 能力的にも脅威なのは明らかに私の方だけど、ロザリアはフラウを片付けることに躍起になっている。

 まあ、ボスの横に取り巻きがいたら邪魔だし、先に処理したい気持ちはよーく分かるけど、簡単にはさせないよ。


「くそ、こんなはずじゃなかったのに……!」


「そっちからしてみれば一方的な蹂躙、ただの食事のような感覚だったんだろうけど、まさか追い込まれるなんてね。人間を舐めないでよね」


「……吸血鬼の、私の姿で言うなー!」


「はい、予測確定」


 ロザリアは私の目の前に現れた。

 それを反射速度だけで私も今いる場所の僅か後方に転移。

 空ぶったロザリアの腕を見て宣言した。


「何!? まさか……固定だと……?」


「そ、私の推測だとあなたはできないみたいだけど、私にはできるみたいね」


 私の推測。

 ロザリアは私達がここに来た時に扉を閉めて開かなくした。

 この物を固定する力、人に使えるならとっくに私達に使っているはず。


 視たミライの中にも私達が動けなくなってやられている未来はぱっと見なかったし、ほぼ確定でいいと思う。

 この未来を視ることができていたらもっと早く気付けたかもしれないけど、私の予知は完全ではなく目先の出来事が多く視えてしまうから、見逃したものは仕方ない。


「これでチェックメイトね」


 私を殴りつけようとして失敗したままの姿勢で固まって動けないロザリア。

 私はまたフラウと風のキャッチボールをして力を蓄える。


 そして、アポートで右手にユーリのお店で買ったダガーを引き寄せる。

 狙いは心臓。フルパワーの風に乗せて刺し込む。

 相手は吸血鬼だし、これで倒せるかどうかは分からないけど、少なくないダメージは与えられるはず。


「ま、待って」


「待たない」


 怯えた顔で待ったをかけるロザリアに私はにこりと微笑んだ。

 ボッと吹き荒れた風に風に乗せられたダガーは、身動きの取れないロザリアの胸に吸い込まれるように射出され、固定を打ち破るほどの勢いで突き刺さり、鮮血を舞い上がらせた。


 突き立てられたダガー。

 そこからとめどなく流れる血。

 だけど、まだ生きている。


「すごい生命力……もしかして本当に不死なの?」


「はぁ……さあ、どうか……し……らね?」


 まだ強がれるのには素直に尊敬。

 だけど、傷の塞がりも心なしか遅いような気がするし、やっぱり勝負あったかな。


「はあ、はあ、殺しなさい。このまま朝を迎えて……日光に焼かれて灰になって、惨めに朽ちていくくらいなら、強者のあなたに殺された方がまだマシよ」


 もう固定もしてないから転移で逃げられるはずなんだけど、それもできないくらい弱ってるってことか。

 でも、私に殺しを強要しないでよ。

 ファンタジーな世界に来ちゃった以上こういうこともあるんだろうけど、なるべく命が無くなるところは見たくない。

 ま、血はがっつり流してグロいことになっちゃったし、そういうのも遠慮したいけど、とにかく私は殺しを進んで行うつもりはない。


「おねーさん、どうするの?」


「大丈夫、ロザリアに手は下さない」


 フラウの問いかけに私ははっきりと答えた。

 それに対してロザリアはふざけないでと憤慨しているけれど、敗者に選択肢が与えられないのは世の常。

 私はロザリアを絶対に殺さないし、()()()()()


 私はロザリアの模倣を止めて、予知を行う。

 私が望む未来を探して……あった。


「確定未来でよかった」


 望んだ未来が私の行動次第で確定するものでよかった。

 これで安心してロザリアを救える。


 私は息を荒げているロザリアを抱き起して、痛みに悶えているロザリアの胸からダガーを抜く。

 ビクンと身体を跳ねさせた後、涙目で私を睨んでくるけど、正直言ってかわいいだけだよ。

 そして私は服を少しはだけさせて肩を出し首を差し出した。


「何のつもりよ?」


「私にはあなたが必要。だから仲間になって」


 ロザリアを仲間に引き入れる。

 戦闘中からずっと視たかった未来。


「どう? 悪くない話でしょ? あなたは血を飲めばその状態も脱却できる。それに……私の仲間になれば私の血をいつでも飲めるよ?」


「いいの?」


「仲間になってくれるなら、ね」


 といってもこの駆け引きも私には必要ないものだ。

 未来も確定している。

 自分の生命。吸血鬼の吸血本能。そして私は実感ないけど美味な血。

 こんなおいしい話乗らないわけがない。


「分かった。あなたの仲間になってあげるわ。そのかわり……約束は守りなさいよ。破ったら地の果てまで追って、干からびるまで血を吸いつくしてやるわ」


「ありがとう。これからよろしくね、ロザリア」


 ロザリアは私の首筋にかぷっと歯を立てて、味わうように血を吸っていく。

 なんだかムズムズするような、気持ちいいような変な感覚で思わず声が出そうになったけど、ロザリアの吸血が終わるまで何とか耐えることができた。

 ああ、私……多分顔真っ赤だなぁ。


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