装備はどうする?
軽く支度をして家を出る。
一応変身無しフラウの力で道を確認しながら進むが今日も相変わらず迷いの森はその名前を持て余している。
まずは武器屋の看板娘さんに会いに行こう。
フラウとレティさんの時はついうっかり名前を呼んでしまったけど、この世界での私はまだ彼女と出会っていない。
余計なことを口走らないように気を付けないといけない。
なんてことを考えながら、木々の間を吹き抜ける涼し気な風を感じて私は歩く。
迷いの森は一度入ったら抜け出すのに苦労すると謳われるトラップステージ……というのが私の認識だったけど、やっぱりそんなことないのかもしれない。
「フラウはここで道に迷ったって言ってたけど、本当に分からなかったの?」
「うん。風を使って帰り道を探そうとしても不規則な風に邪魔されて上手くできなかったの……」
「そうだよね……」
「でもおねーさんと一緒の時は変な風もないし、迷わないよ!」
ならいいけど。
迷って当たりの道を引けるまでずっと迷うのも可哀想だしね。
しかし、ゲームでの迷いの森はモンスターとのエンカウント率も中々高かったはずだけど、そこのところはどうなんだろう。
この森をうろつくのも昨日アリオートへの行きとその帰り、そして今の三回。
いつ戦闘になってもいいように警戒はしているけど、もしかして要らぬ心配だったりするのかな。
そうだったらやっぱりありがたい。
私自身こんな力を持っていてもちゃんと戦えるかどうか自信が無い。
裏ボスの姿をしていても日本生まれ日本育ち、生まれてこの方剣を握ったことも無ければ、魔法を使ったことも無い。
フラウの力は魔法に似てるけど一応分類上は精霊術だし、まだ戦いに使用したこともないから単純な戦闘には不安が残る。
「フラウはさ、モンスターと戦ったことってある?」
「うん、あるよー」
「フラウは平気? フラウの攻撃の主体は風だからちょっとグロい感じになったりするのかな?」
「まー、否定はできないかな。でもそんな好き好んで戦うわけじゃないし、今は契約者のルナおねーさんの言うことならちゃんと聞くよ?」
私の言うことを聞く。
つまり私が戦って欲しくないといえばフラウは素直に言うことを聞いて戦うことをしなくなる。
でもそうじゃない。
私が望んでいるのはそうじゃないの。
こればっかりは私の問題。
手や足が出るような喧嘩もした事のない私だけど、この世界で生きていくためには戦いはきっと避けられない。
「ううん、大丈夫だよ。私はちょっと…………ほんのちょっと戦いが苦手だけど、必要な事だから割り切るよ」
HPという体力の値が存在しない世界で人と戦うのはまだ怖いけど、モンスターくらいは相手できるようにならなくちゃ。
そんな決意をしているうちにどうやらアリオートに到着しそうだった。
◆
「今日は武器を買いに行くんでしょ? おねーさんは何を買うの?」
フラウの言葉でふと考える。
そっか、私は武器屋に行くんだ。
武器屋の看板娘さんに会うことしか考えてなくて、何を買うかなど特に考えてもいなかった。
でも、確かに何か買った方がいいのかな。
コンビニとかでトイレを借りる時も、そのまま出るのが気まずくて何か買うタイプだったし、お店に入って商品を見るならまだしも、人を視てそのまま出るなんてできないよね。
「武器かー。まだ考え中かな」
ゲームと違って攻撃力の数値とかもないし、何を選べばいいか分からないというのが本音だ。
ゲームで仲間になったキャラにはステータスやスキルの補正、能力の上昇率なんかも考えていい武器を持たせるようにしていたけど、私が持つなら何なんだろう。
戦闘スタイルが確立してない今考えても無駄……とは言わないけど、やっぱりもっとちゃんと考えて決めたい。
「あっ、あのお店がそう?」
「そうだよ。看板が特徴的でよく目立つね」
看板には盾のマークの上に二本の剣が交差している絵が描かれている。
一目で何のお店か分かるようによく工夫されている。
「何だか緊張するな」
「お店に入るだけなのに緊張なんて変なおねーさん。私は早く入りたいな」
日本にこういった雰囲気のお店は中々ない。
台所用品売り場で扱っている包丁とは訳が違うから、少しばかり心が落ち着かない。
相変わらずフラウは好奇心旺盛でワクワクして楽しんでいるようだけど、緊張と無縁そうな性格をしているのはちょっと羨ましい。
あと、私のお目当ての看板娘さん、ちゃんといるといいけど……。
せっかく来たのに模倣したい相手がいないなんて骨折り損のくたびれもうけだもんね。
なんてことを考えていると、フラウがお店のドアを開けて入っていったので、私も後に続いてアリオートの武器屋――――武具店ハルバードへ足を踏み入れた。




