ルナ・ノワール①
レティさんの店で買い物をして、フラウと一緒にアリオートの町を見て回り、食料品を買い込んでから私達は迷いの森の家へと帰った。
相変わらず迷いの森は私達…………いや、推測だけど私には優しいようで、その名の凶悪さをいまだに発揮していない。
私が瑠那としてコントローラーを握っていた時とは打って変わってすんなりとたどり着いた私の――――クラリスの家は森の中にポツンと建っていて、彼女はどうしてこんな所に住んでいたのかと考えてしまう。
家に戻って何だかどっと疲れてしまった。
ゲーム好きという点を除けば至って普通の女子高生だった私が、こうしてゲームの世界のキャラとして生まれ変わっている。
いわゆる転生というものを体験してしまった訳だが、その転生初日で色々なことがあった。
「フラウ、その髪飾り似合ってるね」
「ありがとう! おねーさんとお揃い!」
フラウとの出会い、そして精霊契約。
彼女はレティさんのお店で買った髪飾りをつけてご満悦のようだ。
手を繋いで一緒に歩いたのは、姉妹になったようで私もとても楽しかった。
そんな彼女の力は便利で、非常に汎用性も高い。
風を使った攻撃や防御はげーむでもコマンドとして存在したが、風を利用した空間把握ができるのは本当に知らなかったため、やはり事前に培った知識が当てにならない部分も多くある。
そんな彼女と偶然にも出会いを果たし、仲間に迎え入れることができたのは幸運だった。
そして、食料調達で訪れた最寄りの町アリオート。
アリオートにはレティさんの魔道具店や食品店と知っているお店もあったがそれ以上に知らない建物の方が目立った。
それと同様に知らない人もたくさんいた。
当然のことだけど、ゲームで出てくるキャラを意識しているとなんだか不思議な気持ちになる。
結論、ここはゲームの世界ではなくゲームに似た世界というのが正しいだろう。
そう考えたときふと私の頭をよぎったことはどうやら口にでていた。
「これからどうしようか?」
「おねーさん? 何考えてるの?」
「これからのことよ。フラウはどうしたい?」
「んー、私はおねーさんと一緒なら何をしてもいいよ」
フラウにも聞かれてしまったから彼女に意見を求めてみたけど、聞くまでもなかった。
フラウは姉の後をいつまでも付いてくる妹、間違いなくそんなタイプだ。
私はどうしたいんだろう。
この世界はゲームじゃない。
ゲームだったらプレイヤーだった私が勇者を操作して、モンスターを倒してレベルをあげて、仲間を集めて育成して……そして魔王を倒せばゲームクリアだった。
でも、ここでの私は勇者じゃないし、魔王を倒してもそれがクリアの条件ではない。
レベルやステータスなどの数値の概念もない。
ゲームのやりこみ要素もない。
そんな世界で私は――――何をする。
そんなのは、とっくに決まっている。
「私はこの世界を楽しみ尽くす! まだまだ知らないことがいっぱいある。分からないことだらけだけど楽しまないと損だもんね」
ここは知り尽くしたゲームと違ってまだまだ未知なことがいっぱいある。
まだ見ぬ原作キャラとの出会い、見知らぬ人との出会い。
これから紡がれる知らないストーリー。マップ知識のない知らない場所に知らない展開。
何もかもが楽しみだ。
だが、それを楽しむには力が必要だ。
ここは剣も魔法も何でもありのファンタジー世界。
私は戦闘狂じゃないから積極的に戦おうとは思わないけど、ある程度戦えないと楽しめるものも楽しめなくなってしまう。
しかし、今の私にはうってつけの力がある。
クラリスが裏ボスとして君臨した万能模倣能力。
まだ十全には使いこなせていないが、これがあれば他人の姿も力も私のモノだ。
となると、まずは情報収取の続きをしながら、たくさんの人と出会って模倣元を手に入れるのが先か。
「フラウ。明日も町にでていろんなところを回ろうね。しばらくはここを拠点に生活するけど、私が納得する基準を満たしたらもっと遠くの方にも行くから、もうちょっと待っててね」
「うん! 私もルナおねーさんともっといろんなところに行ってみたい」
この世界で好きなように生きていくと私は決めた。
この世界はゲームと違ってセーブもロードもない。
選択肢を間違えたからといってやり直せない。
だから……もう少し強くならないとね。
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