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      落着 ‐カイケツ‐ 参

「両親が毎日喧嘩して、まるで人が変わったようだってよ。友恵に助けて欲しいって頼まれたんすよ」

「え……?」

「友恵に?」


 両親がほぼ同時に、供助から友恵へと視線を移す。


「泣いてましたよ。大好きな両親が喧嘩してるのを止めさせたいって。仲直りさせたいってよ」

「……そうだったのか」

「友恵……」


 児亡き爺や真っ暗返しに操られていた間の事は覚えていない。だが、取り憑かれても本人達の意思が保もたれていた時の記憶は残っている。

 つまり、妖怪の影響で苛立ち喧嘩していた事や互いへ吐いた暴言は覚えているのだ。

 妖怪が原因だったとは言え、作られた溝は自分達で埋め直さなければならない。


「まぁ、俺の話を信じるか信じないかは任せますよ。そんな重要じゃねぇんで」


 かったるそうに、供助は話す。

 しかし、態度とは正反対の真面目な目。真剣な――――眼差し。


「けど、友恵の事は信じてやって下さい。必死に、大好きな両親を守ろうとしたんすから」


 本当に供助なのか。普段からは考えられない言動に、猫又は疑ってしまう。

 他人に興味が薄く、面倒臭がりで、義理や人情なんて言葉を知らなそうな供助が……こんな事を言うなんて。


「とりあえず、あなた達を苦しめていた妖怪は俺達が祓った。理不尽な喧嘩は無くなると思います」

「うむ。(にわ)かには信じられんと思うが、妖怪の脅威は去った。明日からは平穏無事な日々が戻ってくる筈だの」


 供助の言葉を後押しするように、猫又も続けて話す。

 自分が妖怪とバレないよう、猫耳と尻尾は友恵の父親が目を覚ました時点で咄嗟に隠した。今は耳も尻尾も隠し消され、見た目は普通の人間と変わりない。


「妖怪なんて、そんな事が本当に……」

「友恵……本当なの?」

「うん、本当だよ? お父さんとお母さんは妖怪に取り憑かれていたんだよ?」


 友恵は答えて、両親に小さく頷いて見せる。


「もう、喧嘩しないよね……? 前みたいに優しいお父さんとお母さんに戻ったよね?」

「そうね……もう喧嘩なんてしないわ。悪い妖怪は居なくなったんだから」

「あぁ、大丈夫だ。もう大丈夫だよ」


 父親はもう一度友恵を抱きしめ、母親は頭を撫でる。

 妖怪に取り憑かれていた時のような狂気や危険さは微塵も無い。あるのは優しさと温かさ。家族愛を形にしたモノが、そこにあった。


「ま、詳しい事は友恵から聞いてください。俺等は頼まれて手助けしただけすから」

「その、なんと言うか……ありがとうがざいました」

「別に礼なんていいっすよ。とりあえずこっちの連絡先は友恵が知ってるんで、何か聞きたい事や問題があったら遠慮無くどーぞ」


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