落着 ‐カイケツ‐ 肆
友恵の父親からの礼の言葉。やはり妖気云々の話は信じられないか、半信半疑の礼の言葉。
それに対して供助は、特に気にする素振りも見せず前髪を掻き上げて返した。
「妖怪に憑かれて無意識に体力を消耗している筈なんで、今日は早めに休んでください。友恵も歩き回って疲れてるだろうし」
真っ暗返しと児亡き爺に操られていた時の意識は無くても、体は動いていた。
しかも、本人達の意思など関係無く強制的にだ。無理に動かされていた分、体力の消耗は激しい。
「さっきから体が怠いと思っていたけど……」
「妖怪の影響すね。ただの疲れだから、飯食って寝れば次の日にゃ治ってますんで。安心してください」
母親が米噛み辺りに手を当てて疲労の様子を見せると、友恵は心配した顔を向けた。
さっきまで妖怪に取り憑かれ、その影響と人格の豹変を友恵は知っている。友恵が後遺症があるんじゃないかと不安になるのも無理はない。
しかし、供助は特に問題無いと即答して友恵を安心させる。
「じゃあ、そろそろ家に入ろうか」
「そうね。疲れたしお腹も空いたし……友恵、何か食べたいのある?」
「んーとね、カレー!」
頭を一度下げ、回れ右してマイホームへと向かう両親。友恵は子供らしい答えを言いながら、母親と手を引かれていく。
玄関のドアを開け、家に入る直前。
「供助お兄ちゃん、猫又お姉ちゃん!」
友恵は振り返り、今までで一番良い笑顔をさせて。
「本当にありがとう!」
供助と猫又に、お礼を言った。
本当に、心の底から。純粋に笑って過ごせる日々が少女に戻ってきたのだ。
年相応の天真爛漫な笑顔が。
「……おう」
「うむ。今日は疲れたであろう、ゆっくり休むとよい」
供助は明後日の方向を向いて頭を掻きながらぶっきらぼうに。猫又は腕を組んで笑い返して。
二人はそれぞれの態度と、それぞれの言葉で返事した。
それを見て友恵はもう一度にっこりと笑って、父親と母親が待つ家へと入っていった。
「ったく、ようやく帰れる」
「一件落着、だの」
友恵からの依頼は完全に終了し、背中を丸めて一息つく供助。疲労と空腹。夕方まで寝ていたにも関わらず、欠伸が一つ出てしまう。
確かに供助と猫又によって妖怪は祓われ、その脅威は去った。しかし、友恵と両親は気付いていない。
まだ存在する問題が一つ、解決されていない事に。
友恵の家族が自宅へと帰り、その数秒後――――大声が上がった。
「ちょっと、なんなのこれっ!?」
「家の中がめちゃめちゃじゃないか!」
物と言う物が散らかって汚れた家中の惨状に、友恵の両親は悲鳴とも言える声を響かせた。
まぁ、散らかった家内を片付けるのはかなり大変だとは思うが……今まで仲違いをしていたのと比べれば、遥かに難易度の低い問題である。
三人で片付ければきっと、前みたく綺麗になるだろう。家の中も、家族の仲も。




