落着 ‐カイケツ‐ 弐
「お母さんも気が付いたんだねっ!」
父親のお腹に埋めていた顔を向けて、友恵は目を覚ました母親に笑顔を向ける。
父親も母親も児亡き爺と真っ暗返しに取り憑かれていた後遺症らしきものは見当たらず、無事なようだ。
「友恵、私は一体どうして外に……」
「それに、この人達は誰なんだ?」
妖怪に取り憑かれていた時の記憶は無く、目が覚めたら見知らぬ人の背中に背負われていた。
そうなった経緯も理由も知らず解らず、友恵の両親は混乱している。本人達にとっては初対面である供助と猫又に向けられるは、怪訝な目。
「もしかして、僕達を眠らせて拐おうと……」
「えっ……誘拐犯っ!?」
勝手に話が進んでると言うか、変な方向に行ってしまっていると言うか。
供助と猫又は誘拐犯ではないかと疑われ始めた。
「違うよっ! 供助お兄ちゃんも猫又お姉ちゃんも悪い人じゃないよっ!」
「友恵、あなた知ってるの? 説明しなさいっ!」
「一体この人達は誰なんだ!?」
友恵へと迫るように質問する父親と母親。
自分達の現状況が解らない事への不安もあるのだろう。
「えっとね、んと、えと……」
「うーむ、どう説明したものかのぅ」
言葉に詰まる友恵と猫又。
そりゃそうだろう。正直に妖怪に取り憑かれていました、なんて言っても信じてもらえる筈が無い。
どのように説明すべきかと、猫又は頭を抱えている――――と。
「妖怪に取り憑かれていたんすよ」
「き、供助っ!?」
その悩んでいた理由を、供助がすらっとぶち撒けた。
思わず、素っ頓狂な声を出してしまう猫又。
「妖怪って……」
「何をふざけた事言ってるんだ、君はっ!」
「ま、そうなるわな」
予想通りの反応と返答。
供助は小さく鼻息を漏らす。
「とりあえず話だけでも聞いてもらえないすかねぇ」
「馬鹿馬鹿しい!」
「そうよ、妖怪だなんてっ!」
これも予想通りだと、供助は面倒臭そうに肩を竦ませた。予想通りと言うよりも、当然の反応と言った方がいいか。
父親に至っては友恵を抱き寄せ、供助達から守るように遠ざける。
「ここ最近、嫌な夢を見て不安になったり、理由も無くいつも何かに腹を立てていましたよね?」
「えっ!?」
「なんでそれを……?」
「友恵から聞きまして」
自分達を悩ませていた不安定な感情や、毎晩見ていた悪夢の事。
それらを知っているのに一瞬だけ驚愕の色を見せたが、供助の返答ですぐに消えた。
「ただ……今までのような異常な苛立ちや、周りに対する不信感みてぇなのは無くなってると思うんですけどね」
「言われてみれば……」
「確かに、なんか気分がスッキリしてる気がするわ」
しかし、供助に言われてみると。
清々しい気分と軽くなった気持ち。心にあった閊えが取れているのに気付く。




