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DEATH PARADE  作者: 電源優寿
第三章 楽園〜A paradise〜

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第十一話 夢に描いた場所~A place like a dream~

第三章始まります。

日々生き抜く為に放浪していた4人が、ある男に誘われついて行った場所は、今まででは考えられない場所だった。

第三章は今までのような展開ではなく、ゆっくり時が流れるような、そんな感じになっていきます。

それでは第十一話スタートです。

第十一話の主な登場人物


生田勇樹(いくたゆうき):主人公『死神』

生田ウェン(フィリピン人):妻『聖鬼母(ホーリーデビルマザー)』

生田星来(いくたせいら):息子『ヒーロー』

ジーン(フィリピン人):家族的存在『アイドル』

田中晴喜(たなかはるき):ヤクザ

清原平八(きよはらへいはち):ヤクザ(親分)

グウェン(ベトナム人):グウェンズ


第十一話 夢に描いた場所~A place like a dream~


「お前ら人間か?ゾンビか?」

黒いセダンタイプの車で窓を開けて、こちらに銃口を向けている。

すぐさま私とウェンは刀を握り構える。

そして、星来とジーンは銃を取出しその男に構えた。

暫くお互いが見合ったまま、牽制が続いた。

「わっはっはっは!負けだ!お前たちが死神一行だろ?」

セダンタイプが 2 台とワンボックスカー1 台が私たちの横に並んで止まっていた。

「もし、行くとこないなら乗ってくれよ。」

私は、この男に興味が湧いている。

かつて自分でも同じ質問をしたことがある。つまり、同じように死地を乗り越えてきた、同類のような匂いがしたからだ。

前の車に私とジーンが乗り、後ろの車には、ウェンと星来が乗った。

荷物はワンボックスカーに積ませてもらった。


四月三日午前十一時半―勇樹、ジーンサイド―


車は行先を告げずに走り続けている。

車には運転手と先程の男だけが乗っていた。

見た目は、どうみてもヤクザだが、生活感が溢れていた。

整えられた髪型、髭も剃られていて清潔感もあり、黒いスーツに白い Y シャツ。

こうなる前の世界となんら変わりが無いように見える。

私たちの様に、返り血や数日間体を洗っていないとかではない。

この人たちは今もなお、あの時のままだ。

先程の銃口を向けてきた男が口を開いた。

「試す真似してすいません。俺は田中晴喜といいます。 」

見た目は私と同じ歳か少し上ぐらいの雰囲気だ。

私たちは、警戒心を解いていないので、マスクは付けたままだった。

「死神一行の噂は聞いてます。たくさんの人を助けてるとか?いつか会えたら、俺たちの所に来てもらいたいと思ってたんですよ。」

話し方はとても優しく、その言葉に嘘は感じられない。

私とジーンはマスクを取り自己紹介をした。

「私は生田勇樹です。こちらは、ジーン。そして後ろの車に乗ったのが、妻のウェンと息子の星来です。」

田中は後ろを振り向き、私たちに興味深々な目で見てきた。

「家族ですか!?スゲー!え!?外人さん?英語話せる?」

ジーンが得意気な顔で答えた。

「Yes!アタリマエダロ!」

田中と運転手は笑い、話を続けた。

「実はね、うちでベトナム人たちを助けたんですよ!あいつら日本語話せなくて、意思疎通が出来なくてね。でも、しっかり働いてくれて助かってるんですけどね。是非!通訳をして欲しいんです!」

ジーンが困った顔で言った。

「ウーン。ワタシモニホンゴムズカシ!アテデイイ!」

私が、妻の方がまだ理解できている事を伝えて、通訳としてはジーンが向いてない事を言った。

車内で聞いた内容は、まるで私たちとやっている事が変わらなかった。


同時刻―星来、ウェンサイド―


見た目が怖い人達だけど、ゾンビを相手にしてきた僕たちには何も感じなかった。

話しをしていても、優しくて人間味を感じた。

同乗していた男性が言った。

「色々な人を助けたんですよ!でも不思議なのが、ゾンビ共は車にぶつかったり、中の俺たちに気づいてないというか。」

僕はビックリして、聞いた。

「え!?知っててこの車が真っ黒なんじゃないんですか?」

ヤクザの人達は何のことか分からず質問をしてきた。

「ゾンビは、黒色を認識できないんですよ。だから、黒だけだとぶつかったりして、そこに障害物がある事が分からない。夜もゾンビの活動が鈍いのはそこです。」

運転手と同乗者は顔を合わせ、驚きながら大きな「えぇぇぇぇ~!!!」が出た。

マスクとの関係性は、僕は言わなかった。

思い当たる節が多々あるようで、納得をしていた。


午前十二時半―勇樹、ジーンサイド―


田中が私に問いかけてきた。

「ゾンビは何体ぐらい倒してきたんですか?」

私は考えながら答えた。

「数えた事はないです。4 人で何百か何千か。」

田中は驚きを隠せなかった。

「な!?・・・何百!?何千!?マジっすか!?ヤベー!!」

逐一数えてはいなが、解放したモールや町にいたゾンビ達だとそれぐらいにはなっているだろう。

「抵抗とか、後悔はないですか?」

私は即答した。

「ない。少しでも迷えば次は自分達だ。家族がいなくなることの方が後悔をする。」

田中は私の回答に満足したような笑みを浮かべた。

「かっけーっす!」

ジーンが口を挟んだ。

「アタリマエダロ!ワタシタチノリーダー。イッパイイッパイタスケタ!クヤニナニカアッタラ、ホーリーデビルコワイヨ~。ワタシモコワイヨ~。」

車内は笑いで包まれた。

「もっとお聞きしてもいいですか?」

私はなるべく答えられる範囲で、これまでの事を答えていった。

逆に聞き返したが、着いてから話すとういう回答だけだった。


午後二時二分


「着きました!」

周りは山に囲まれていて、長閑な田園風景が広がっていた。

ゾンビもちらほらと見えるが、正面に大きな門が見えた。

門から伸びる壁は、山の外周を囲んでいるかのように、何処までも伸びていた。

門番が上から監視をしていて、合図と共に門が開き、3 台の車が入る。

入ってすぐの手前には車が数台泊めていて、駐車場のようになっていた。

私たちは、車を降りてその光景に目を疑った。

奥には山が広がり、キャンプ場のように開けた土地には、家が 3 軒建っている。

田中がまずは親分に会って欲しいと言い案内された。

中での争いは許されず、武器の携帯が出来ない事を言われ、一時預かりとなった。

気になる部分は多々あるが、ひとまず真ん中の家に入り、靴を脱いだ。

この当たり前の事が久しぶりに味わって感慨深かった。

2 階に上がり、一番奥の部屋に案内された。

田中がノックをして、ドア越しに声を掛ける。

「オヤジ!客人を連れて来た、入るぜ。」

ドアを開け、中は広い部屋でゆったりとした空間が広がっていた。

窓際の奥のベッドで、外の方をずっと見て横になっている老人がいた。

その老人を守るように、恰幅のいい男 2 人が立っていた。

田中が老人の前に片膝をつけて、私たちに紹介した。

「こちら、死神御一行。前に話した事のある、外で凄いことをしている人達。右から生田勇樹さん、奥さんのウェンさん。息子さんの星来君。そして、ジーンさん。」

田中の紹介に合わせ私たちは頭を下げた。

老人が体を起こし挨拶をした。

「みなさん、こんにちは、わたしは清原平八です。」

そう言い終えると、また窓の方を見てしまった。

「すみません。オヤジは認知症でして。」

認知症の療養中にパンデミックが起こり、ここにいた全員が無事だったようだ。


―原平会(げんぺいかい)―

都心を中心に活動をしてきたが、徐々に構成員は減少していき、過去の勢いはなくなっていた。更に会長でもある清原は、認知症となり療養を余儀なくされる。

対立している組織には知られる訳にはいかず、この山奥でひっそりと暮らしていたが、パンデミックが発生。田中は本部にいた構成員を引き連れて、すぐにこの地へやってきた。

パンデミック後は、人員確保の為に人命救助を積極的に行い、この地に住まわせて壁を作り上げたのだった。


「じゃあ、そろそろ中を案内しますよ。」

田中が先頭に歩き、私たちは親分に頭を下げて部屋から出て行った。

家からは左回りに案内をされる。

左側には平屋のような場所があり、そこからは煙が出ていた。

「ここは、風呂場です!ちゃんと男女分かれてますから、安心して下さい!」

薪で火を起こし、温度調節も出来ているのだろう、作業をしている人達もそこにはいた。

ここに住んでいる人達は、皆が何かしらの作業をしている。

常に動き回っているように見えるが、その顔はいきいきとしていた。

その隣にはかまどと炊事場があった。女性たちが、野菜を切ったりかまどでは何かをやいているのか、煙が出ていた。いずれも薪で火を起こし、食事も問題なく摂られている。

「ミテ!rice アル!」

ジーンが今にもよだれが垂れそうな顔をして、欲しそうな顔で、炊事係の人の顔をじっと見ていた。

私たちは驚き、お米を炊いている鍋の前で立ち止まった。

「わはは!米ですか!?」

田中が鍋の蓋を開けた。

ふんわりと香るお米の炊けているいい匂い。

米は久しく食べていなかった。

都心では、お米はネズミに食べられていて確保する事が難しかったからだ。

「皆さんの食事も用意してありますので、後で皆で食べましょう!」

再び案内が再開された。

壁沿いにはいくつものテントが張られていた。

「ここは、家に入りきらない人達用のテントです。家は建てていってるんですが、ご覧の様にまだ 3 棟しか建てていないんです。」

私が田中に質問をした。

「ここには、何名が生活をしているんですか?」

田中は即答で答えた。

「174 名がここで生活をしています。」

私は驚き、自分たちの銭湯コミュニティを例に挙げた。

「私たちがいたコミュニティの 3 倍近くの人達です。凄い!」

紹介をして見て回ったが、確かに全てが手作りだった、風呂もかまども調理場も。

パンデミック以降は大変だったそうだが、完成していくうちに、人間の生活らしさを取り戻していったようだった。

私たちの様に、その日暮らしではなかった。

更に門と駐車場の奥に周る。

そこにも平屋が建てられていた。

田中が星来を見て言った。

「ここは、学校だよ。先生もいる。星来君と同じ歳の子もいるよ。」

星来は間面の笑みで喜んだ。

その奥には倉庫が建てられていた。

「ここは食料を確保するところです。外に行っては、米俵や野菜の苗なんか見つけてきたりしてますよ。」

そう、ここには畑があった。沢山の野菜が育てられている。

更に、門の前には田園が広がっていたが、現状はそこまで壁が出来ておらず、ゾンビもちらほらと現れるそうだ。

山に行けば、山菜が採れるそうだ。鹿や猪も多数生息しているらしく、狩りにいく事もある。

生活の源とともなる水は、山に川が流れているらしく、そこから汲んでこの場所に運んでいる。

「素晴らしい!」

私たち 4 人は感動した。

田中が両手を広げて言った。

「ここを楽園と呼んでいます!」


午後五時


私たち 4 人はテントで生活をする事にした。

お風呂が沸いたそうなので、皆で入りに行くことにした。

「久しぶりの風呂だ!星来!よく洗えよ!」

大浴場となっており、洗う用のお湯は別にある。自分達で汲んでくる仕組みだ。

私は伸びた髭を剃っていく。

星来が何度も頭を洗い、

「はぁ。気持ちいい。何回でも洗える!ななも一緒だったらなぁ。」

「ななって誰ですか?」

煙で見えていなかったが、隣には田中がいて少し驚いた。

星来は顔が赤くなり、私と田中は笑った。

田中の背中には入れ墨がびっしりとあった。

「まぁ、もう消えないんで。」

田中はそのまま私と星来の体を見て驚いた。

勇樹の体には、複数の傷痕や痣がある。

DGsとの戦いの傷跡は、痛々しいほど体に刻まれている。

「私たちは生死を彷徨ったので、体中傷だらけで。」

田中は、星来の銃創痕にも目を向けた。

「俺は、自分が恥ずかしいです。こんなのなんの自慢にもならない。死神の体はぼろぼろじゃないですか。」

目が少し涙ぐんでいるのがわかった。

「自慢は、する必要はないです。お互いに守るものがあって守ってきた。それだけじゃないですかね?」

皆で湯船に浸かり空を見上げた。


午後六時


ここの生活は、とても規則正しく行われていた。

時間毎にしっかりと決められた事を全員でやっていた。

私たちも着替え終わり、屋根付きの大テーブルがある所に座った。

親分や護衛、外の監視員以外はこの場所に集まった。

「皆!既に会っている人もいると思うが、死神一行がここ楽園に来てくれた!」

一斉に歓声が上がった。

「グラスを持ってくれ!・・・どうぞ!」

私が挨拶をすることになった。

「田中さんと、今日お会いしまして、ここに連れて来てもらえました。この生活は、はっきり言って、想像しておりませんでした。明日からここの一員として、一緒に参加させてもらいます。それでは、乾杯!」


乾杯!Cheers!


この日は久しぶりにまともな食事にありつけた。

「Yummyyyy!!!」

ジーンは頬張り食べていた。

ウェンも魚と米を手で食べている。

「ヒサシブリダカライイデショ!?」

2人ともフィリピンスタイルで食事をしていた。

星来も負けじと頬張る。

「美味しい!もっとこれ食べていい?」

私たちの食欲に皆引き気味だった。

住民が私たちの所に集まっては、話しかけてきた。

実は助けてもらった事があったとか、解放された箇所に寄った事がある等。

皆が生き抜いてきて、田中に連れてきてもらった人が殆どだった。

田中がベトナム人達を連れてきた。

「ジーンちゃんウェンさん。ここにいる男女 14 人がベトナム人なんだけど、名前にグウェンってつくのが多くて、俺はグウェンズって呼んでるんだけど、何か会話してあげてくれるかな?」

ジーンが口の中をパンパンにしながら手を振って、

「ハ、ロー!」

と言った。その食べ方で日本人じゃない事を悟り、英語で会話が進み、ベトナム人達は歓喜していた。

このベトナム人達は、言葉が分からずにジェスチャーだけで壁の建設を手伝い、狩りや農園も手伝っていたそうだ。

「働き者なんだけど、意思疎通が出来なくて困ってたんだ。ありがとう。」

私も口の中がパンパンになりながら答えた。

「ど、も。」

外には沢山の松明があり、暗くはなかった。

1人1人の表情も見えて、皆楽しそうだ。

CD ラジカセをグウェンズが持ってきて音楽を流し始めた。

こうなると、うちの 2 人は踊り出す。おまけに星来も踊り出した。

日本人の住人達も巻き込み、盛大な宴が始まった。

「パパモ!」

ウェンに腕を引っ張られ、私も拙い踊りを披露した。


「はは!こんな楽しいの初めてだ!」

田中は酒を飲みながら、笑顔で皆を見ていた。

「自分だけ高みの見物ですか?」

私は田中の腕を引っ張り、いつの間にかできている人の輪の中に放り込んだ。

皆の煽りを受け田中も踊った。

この夜は笑い声と笑顔が溢れた日になった。


「A paradise」


第十一話 終わり


ここまで読んで頂きありがとうございました。

ゾンビや人間との戦いから一変した内容になりました。

銭湯コミュニティは、もとからあるものを使っていたのが、楽園は自分達で作り上げた場所になってます。

次回予告

4人に与えられた仕事は、平穏、安息、戦いから少し離れる。

次回第十二話 幸せのかたち

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