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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
カジヤン族と
90/100

カジヤン村にて

 報告が終わり、食事をとろうとしたらカジヤンの人たちに呼ばれた。

 宴会するからおいで、と。

「あの、失礼ですけど村にお金ないんでしょ?」

「たしかにうちは貧乏ですが、さすがにちょっと宴席したくらいではなくなりませんよ。

 だいいち、そんな高価なものは出そうにもありませんしね」

「……」

「もしかして、おいやでしたかな?」

「ああいえ、できれば是非」

 問題ないというのなら、せっかくのご招待だ。

 カピバラな獣人さんたちの宴席に呼ばれるなんて、まさに異世界って感じじゃないか。

「お世話になります」

「ふふ、歓迎しますよ」

 

 

 そんなわけで宴会となった。

 といっても確かにお金がないらしく、そのすべては手作りだった。

 何しろ酒までもが自分たちで作ったものだった。

 まぁ俺も、枯れ木も山の賑わいと少しバーボンを寄付したが。

「うまっ!」

 だが他のものはともかく、魚料理のうまさには正直驚いた。

 なんだこれ、すげーうまいぞ。

「近くに川があってね、来客や行事の時だけ漁をするんです。

 気にいってもらえて嬉しいですね」

 おーとれたてなんだ。

 まさか刺し身まであるとは思わなかった。

 魚食日本の人間としては嬉しい事このうえないメニュー。

 思いがけず遭遇した美味しい魚料理に、俺は感激した。

「いやぁ、うまいですね。

 けどこんな美味しいって外来者に教えちゃって大丈夫なんです?」

「ハハハ……実は普通のお客様に振る舞うものではないのですよ」

 え?

 首をかしげていたら、村長さんが俺を笑顔で指し示した。

「俺?」

「もちろんです。

 新しい精霊の友が生まれたお祝いじゃないですか」

 あ。

 じゃあもしかして、この宴席ってそのために?

「……すみません、お気を使わせまして」

「いやいやとんでもない、おめでたい事ですからね。

 新しい友が生まれると宴席をするのがならわしなのです」

 本気でわざわざ俺のために開いてくれたのか。

 全然気づかなかったよ……。

「ありがとうございます!」

 俺は皆さんに頭をさげた。

 

 そんな感じで食べていたら、ふと目線に気づいた。

 そちらに目を向けると、小さな手のひらに乗るくらいの女の子がテーブルにいて、じっと魚料理を見ている。

 俺は皿をひとつもらうと、その子の前に少しとりわけてやった。

「醤油……醤油だよな、これもいるか?」

「……」

 女の子は皿のすみっこに陣取ると、その魚を美味しそうに食べ始めた。

 ははは、小さいのによく食べるもんだ。

「村長すみません、小さい盃あります?」

「む、どうなさるんですかな?」

「お供え物です」

 よくわからんがこの女の子、センサーには何も映ってない。

 ということは、俺の妄想でなければ例の精霊か、それにあたる誰かなんだろうさ。

 俺は盃をもらうと、小分けして持ってきていたスキットルを出し、バーボンを少し盃にいれて女の子の前に置いた。

 女の子はニオイを嗅いで、そしてどうやら気に入ったらしい。

 上機嫌で飲みはじめてしまった。

 うむ、よくわからんがとりあえず問題あるまい。

 よしよしと見ていたら、村長と村の爺様たちが寄ってきた。

「なるほど精霊獣でしたか」

「ほほー、ヒト型とは珍しいですなぁ」

「え?精霊獣?」

 精霊そのものじゃないってこと?

「小さな生き物が精霊を取り込みすぎて、変な方向に進化してしまった存在ですよ。

 しかし、お供え物についてよくご存知で」

「え、いや、なんか食べたそうにしていたから」

「ああ、自然に差し上げたのですか」

「ははは、さすがに『つながる』だけの事はある」

「ですなぁ」

 村長さんたちは、なんか微笑ましげに俺をみていた。

「光栄なことですけど、なんでこんなに好かれたんですかねえ」

「もともと親和性が高いのでしょう」

「親和性?」

「ただ精霊とつながっただけでは精霊獣は懐かぬ。

 なのに懐いたということは、精霊獣に同類と見られているに他ならぬ」

「んだんだ、それだけ精霊と馴染みやすいって事だぁ」

「そうなんですか……けど俺の体って人間じゃないんですけどねえ」

 それどころかマザーに作られた人工物なんですが?

 しかし村長さんたちは違うと言う。

「いやいや、体はあまり関係ねえっぺ」

「うむ。

 精霊との親和性は肉体でなく、魂にあると言うからのう」

「……魂?」

「はい」

 ……魂(タマシイ)ときたか。

 うーむ……。

 科学世界の住人である俺としては『精霊』以上に理解不能の世界なんだが?

 

 いや、でもまてよ?

 

 結局のところ『精霊』だのなんだのって言葉の問題だよな?

 マザーやアイリスにとっては『謎のエネルギー』ではあるものの、これは解析困難というだけの話で、マザーたちもエネルギーの存在そのものは認めている。

 つまり、よくわからないものではあっても、デタラメでも絵空事でもないって事だ。

「ん、おかわりか?」

「!」

 いつのまにか精霊獣が二匹になっていた。

 そのうちの一匹が俺にもたれて眠りはじめた。

 ポケットにハンカチが入っていたので、それをかけてやる。

 

 彼女らはセンサーに映っていないが、たしかに見える、触れる、存在する。

 昼間に突然感じた精霊ってやつの気配も、今やあちこちに感じ取れる。

 どうもこの数時間で、俺の感覚はみるみる研ぎ澄まされてるみたいだ。

 ふと見回せば、村人の中にも精霊獣とおぼしきやつと飲み食いしている人がいる。

 

 結局、見えるもの、感じるものがすべてなのかもしれないな。

 

 ──まてよ?

 見えるもの、感じるものがすべて?

 

 あー……なんか今、頭の中でガチッとつながったぞ。

 

 つまりアレだ。

 マザーが言ってたあのマトリクスがどうのってやつって、要は『魂』の事なんじゃね?

 ふむ……。

 だったら納得いくよな?

 

「村長さん、ひとついいです?」

「ハイ、なんでしょう?」

「俺に精霊との親和性があって、それが俺の『魂』にあるってのはわかりました」

「ええはい、そうですよ」

「ならば俺は。

 精霊と仲良くなれば、俺は魔法を使えますかね?」

「え?魔法?」

「はい」

「いや、それは違いますよ。

 精霊と仲良くなれる事と魔法の才覚は全然別の話ですからね」

「え、そうなの?」

「はい」

 村長さんは微笑んだ。

「なるほど、精霊と仲良くなる事で魔法のような事ができないか、という事ですね?」

「はい」

「ふむ、だったら精霊とよくお話なさることですね」

「精霊と話す?」

「はい。

 精霊と仲良くなると、やがて精霊はあなたに手を貸してくれるようになるのですよ。

 そうして精霊の力を借り、駆使する事を精霊術と。

 そして、精霊術を使う存在を精霊術師というのです」

「精霊術師」

 おー、そんなのもいるんだ。

「魔法と精霊術の違いは、精霊に働きかける事だけ?」

「というより、昔は精霊術しかなかったのです。

 あなたのように精霊と仲良くなった者たちがその力を借りていたのです。

 精霊とつきあいのない人間族は悪魔と契約したなんて言いますけどね」

 ほうほう。

「で、いわゆる魔法は魔物たちが生きるために駆使する力でした。

 それを魔族や魔力の強い人々が研究し、術として体系化したものが魔法や魔術なのです」

「へえ……」

 そういう歴史があるのか。

 はじめて聞いたぞ。

 もしかしてマザーも知らない?


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[一言] 幼いもの、純粋なもの?に懐かれやすいハチ。 旅人+精霊術師へクラスチェンジ?
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