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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
峠
73/100

ごく平凡なキャンプの夜?

「ねえパパ」

「ん?」

「パパは寒いキャンプって好き?」

「好きだぞ」

 俺は断言した。

「虫が出ないし、寝苦しい事もない。汗もかかない。

 けど、氷点下のキャンプはナメてかかると眠れないだけでなく、マジで命が危ないぞ」

「そうなの?」

「日本でマイナス14度くらいまで経験したけど、厳冬期用フル装備だったからなぁ。

 まぁ、今の体で寒さで死ねるかは知らないけど……死ぬのかな?」

「んー、氷点下200度くらいまでなら大丈夫だって」

「……大丈夫って言われても、そもそもそんな寒いとこでキャンプしたくねーよ」

「そうだねえ」

 俺とアイリスは苦笑しあった。

「ん、お肉」

「ああそうだな、悪い」

 ムギに急かされて、俺たちはバーベキューに戻った。

 

 食べやすく切った鹿肉と、管理棟から持ってきた野菜、それと長ネギとニンニク。

 さらに鹿肉を使い、管理棟からもってきた圧力鍋で作った豚汁ならぬ鹿汁っぽいやつ。

 大型テントの窓の外は、気持ち悪いほどキラキラの星空。

 ただでさえ標高が高い上に空気が澄み切ってるんだろうな……。

 おそらく今までの人生でも、見たこともないくらいに凄まじい星空。

 それを見ながらの晩餐。

「それにしても……ムギはなかなかに多才だなぁ」

「んゆ?」

「なんでもねえよ」

 そういって肉をろうとしたらムギにとめられた。

「それ早い、こっち」

「おう」

 まさかバーベキューをムギが仕切るとは想定外だった。

 アイリスの話だと料理はしないそうだけど、屋外で肉を焼く時だけは別らしい。

 肉と野菜を適切なサイズに切って串にさす動作も全く迷いがない。

 これは……相当にバーベキュー慣れしてるな。

 

「ムギ」

「?」

「前のオーナーとバーベキューしてたのか?」

「違う、こっちで覚えた」

「こっちで?」

「こっちで」

 となると……放浪中に出会った人と野営したのか?

 なるほど。

 管理人の爺さんといい野営といい……何もせず過ごしていたってわけじゃないんだな。

 それはよかった。

 ほんとうによかった。

 引き離された主人の元に戻ろうと百年さまよい続けていた、なんて事だったら悲しすぎるもんな。

「その串もイケる」

「おう」

 そう言いつつも新しい串に肉と野菜をプスプスと。

 猫がバーベキューを仕切る……ある意味不思議な光景だよなぁ。

 

 ふと酒が飲みたくなった。

 バーボンのボトルと愛用の『ぐい呑み』を取り出した。

 本来このぐい呑みは洋酒用じゃないけど、ショットで飲むにはちょうどよくて愛用してるんだ。

 そして、バーボンの栓をあけようとした、まさにその瞬間だった。

「パパ、緊急事態」

 え?

 突然のアイリスの豹変に驚いていたら、ムギまで動いた。

「なんかくる、魔力帯びし何か」

「魔力!?」

「クリネル方面から飛翔物体、毎秒100m以上の速度でこちらに向かってる、識別不明」

「毎秒100m!?」

 それ時速300km以上出てるよな、なんだそれ!?

「ムギ、火を落として戦闘準備!

 アイリス、マザーに通報!」

「了解!」

「わかった」

 俺たちはテントの外に出た。

 夜になり、外の寒さはいよいよ強烈なものになっていた。

 俺は高度計を持ってないので推測だけど、少なくとも標高4000、もしかしたら5000mにも達してるかもしれない場所だ。

 俺たちが焼き物はともかく、煮物に圧力鍋を使ったのはそのせいだ。

 こんな高所で煮炊きした事なんてないからね。

 地球の本物の圧力鍋がちゃんと高所で使えるかはわからないけど、このマザー謹製っぽい圧力鍋は、しっかりと仕事をしてくれたようだ。

 って、それはどうでもいいか。

「問題の飛行物体は……アレか!」

 いよいよ俺のセンサーにも感じられた。

 感じられたのだが。

「なぁ、アイリス」

「なにパパ?」

「……飛んでるの、もしかして人間?」

「ううんドロイド」

「なんでわかる?」

「パパ、冷凍庫より寒いところを時速300kmで飛んでるんだよ?」

「あー了解」

 生身の人間なら死にそうだもんな。

「目的地はここかな?」

「パパ」

「ん?」

「こんな非常識な相手が普通のとこにいくかな?」

「その、まるで俺のとこに来るのが類友みたいな言い方はどうかと思うが?」

「……」

「おい、アイリスさぁん?」

「ゆるい放物線を描いて、まっすぐここに向かってるよ?」

 おい無視すんなよ。

 けど。

「時速300kmで放物線で、ここに向かってる?」

「うん」

「あぶなくね?」

 何者かわからんけど、ちょっとやばくね?

「パパ」

「お?」

「ちょっと後ろにさがって」

「お、おう……!?」

 そうして俺が一歩さがった次の瞬間、

 

 ──世界が、いきなり爆発した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 時速三百キロで飛んでくる、って言うか落ちてきた!? マザーのなら連絡あるだろうし、コレは……あの人かな!
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