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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
峠
72/100

SF仕込みのオートキャンプ

 最初に言っておくけど、車のエンジンかけっぱなしで車中泊は絶対にNGだ。

 特に日本ではね。

 これはマナーの問題もあるけど、純粋に危険でもある。

 

 だって、エンジンをかけて寝るのってエアコンをつけるためだろ?

 だけど車のそういう装備は、あくまで運転中に使う前提になってる。

 つまりエンジンを長時間空転させた場合、何が起きるかわからないわけだ。

 

 もし就寝中に何かが起きて、エンジンに異常が発生したら?

 だけどそんな時、即対処すべき貴方は寝ていて目覚めない。

 何か深刻な異常が起きても全く気づけず……。

 そう。

 最悪、そのまま永遠に気づかずこの世とお別れになる事もありうるわけだ。

 だから俺は繰り返す。

 エンジンかけっぱなしで車中泊はやめとけってね。

 

 ただし、未来についてはわからない。

 俺が言ってるのはあくまでガソリン車主流時代の常識。

 日本は災害の国だろ?

 防災対策や今後の脱ガソリンの流れの中、バッテリーが進化したら?

 そう、おそらく状況が変わる。

 今でさえハイブリッド車などを防災に組み込む話が出ているくらいだ。

 もしかしたら未来には「災害が起きたらまず車の電源を使おう」って事になるかもしれない。

 

 

「あったかいねえ」

「だいぶ寒くなってきたもんな……おいムギ」

「ぶるるるっ!」

 外を見て回っていたムギが、震えながら戻ってきた。

「いわんこっちゃねえ、寒さがまとわりついてんじゃねーか」

「めっちゃ寒い!」

「ははは、だろうな!」

 なんで大喜びで駆け回ってんだよ。犬かおまえは。

 ぷるるっと震えるムギだが、別につらそうにはしていない。

 むしろ楽しそうだった。

「まったく、昼夜の気温差ってすごいもんだ」

 たしかにこのあたりは、富士山よりはるかに高い。

 俺たちは生身の人間だったら、寒さと空気の薄さで参っていたろう。

 だけどそれでも、日差しのある間は結構暖かかったんだ。

 それが薄暗くなってきた途端に冷蔵庫以下だよ。

「あ、これマイナス二桁」

「まじか」

「まじだよ」

「まだ日没したばっかだぜ?」

 こりゃあ、深夜から早朝にはマイナス20度以下に行きかねんな。

 

「ま、うちは内部に発電所持ってるようなもんだから電力の心配だけはないが」

「パパしつもーん」

「なんだ?」

「ここまでしたのに、わたしたちが寝るのが小さいテントなのはどうして?」

 ああウン、それはね。

 

 俺たちの状況を改めて説明しよう。

 まず大テント。

 これは昔、俺の使っていた一番大きいテントをマザーが改造したものだ。

 特徴としては、入り口が大きくて床がない事。

 車ごと収容するためにこういう仕組みになってるんだ。

 そして。

 この温暖空間の中に、さらに小さいテントをはってあった。

 底冷えしないようマザーにもらった断熱材の上に板を起き、その上に。

 

「あったかく寝るにはこれが一番いいんだよ」

「そうなの?」

「あー、そうだな。

 車のエアコンは基本、あたりまえだけど車の中用なんだよ。

 こんな広い場所、しかもテントでの利用なんて想定してない。

 つまり現時点でパワー不足なんだよ。

 たぶんだけど朝方は寒いよ。

 だから二重テントにしたのさ」

「二重テント?」

「テントの中にテントをはる事を、そう呼ぶ人がいるのさ。

 雨に弱いけど快適なテントを中にいれたり、寝床と遊び場を別にしたりするのさ」

「……なるほど」

 理解してくれたらしい。

 

 ちょっと解説しよう。

 二重テントなんて知らねーよとおっしゃる方でもタープはご存知だと思う。

 タープは単なる一枚布だが、いろいろな素材のものがあり、前室のないテントの作業場を作ったり、暑い日差しをさえぎったり、さまざまな用途に用いられる。

 長期滞在する人の中には現地の素材と組み合わせ、まるで小屋のようにてしまう人もいるという。

 

 だけどタープを自在に扱うには熟練がいるし、使いにくい状況もある。

 だから大きなテントの中に小さなインナーテントを張り、間の空間を作業場にする発想が生まれた。

 温暖で虫などの心配がないならインナーテントを外し、ベッドを入れて寝泊まりしてもいい。

 

「じゃあパパ、こういうテントって?」

 四角錐や五角錐の、とんがり帽子みたいなテントの絵だった。

「お、ワンポールテントだな。

 使った事あるの?」

「ワンポールテントっていうんだ……。

 たぶんパパの記憶から再現されたやつだけど、使った事あるよ」

 ほほー。

 そういえばアイリスは、俺のとこ来る前からキャンプ経験あったもんな。。

「それどんなやつだった?」

「真ん中に一本、棒状のポールが立って支えてたよ。

 テントとしての張りは、隅っこを固定したり張り綱でひく事で出してた」

「一番基本的なやつだな。布は五角形?」

「四角形だった」

「ひとり用だよな?」

「うん」

 間違いない、一番基本形のテイピー・テントだ。

「このタイプって、インナー?ってやつがないのがあるよね」

「お、くわしいな。

 ワンポール型は元々、外側だけでシェルターのように利用する文化があるんだよ。

 で、虫のいるとこなんかでは中に蚊帳ばりのインナーテントを吊り下げて張ったりね」

「へぇ……」

 ワンポールテントってカッコいいんだよな。

 だけど、虫との距離がダブルウォールのドーム型より近いんだこれが。

 自立式ドームでキャンプをはじめた俺としては、ちょっと不安があるなぁ。

 あ、だけど場合によってワンポールも使ってたよ?

 理由?

 なんかワンポールってさ、秘密基地っぽい感じがするんだよなぁ……いやホント。

「……」

「なにアイリス?」

「パパ、すっごい子供な顔してた」

「気のせいです」

「そう?」

「ああ、気のせいだ」

「……ふうん」

 ナ、なんだよ。

 いいじゃん別に。


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― 新着の感想 ―
[一言] 男はいつまでも心の中に少年がいるのだ!
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