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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
峠
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野営地にて

 なんだかんだで走り続けていると、風景はいよいよ荒涼を通り越してきた。

「あっちの雪渓、もしかして万年雪かな?」

「まんねんゆき?」

「一年中とけないってことさ」

「そんなのあるんだ」

「あるよ」

「おー」

 いやムギ、おまえはアイリスと違って何年もこっちにいるんだろ?

 なんで一緒になって喜んでる?

 ……いや、いたからって旅してたとは限らないか。

 商人たちが確保した時は奴隷にされてたっぽいしな。

 のんびり風景を見るヒマなんて、そもそなかったのかもしれない。

 

 最初は本当に野良猫そのものだったのが、変化している。

 もしかしたら素人演奏家をしたのも、そうした変化に貢献しているのかも。

 もしそうなら、俺の元に来て少しは心に余裕ができたのかな?

 うん。

 だったらいいな。

 

 ちなみに演奏は今はお休み中だ。

 アイリスがお菓子とお茶を出した事で休憩となった。

 え、ギター?

 もちろんケースに片付けさせてるよ、あぶないからね。

 

 俺はスマホをアイリスに借りると、マザーに要望を流した。

『森林公園と管理棟に、ギタースタンドを用意できないか?

 できれば壁掛けシて、気軽に弾ける感じにできると嬉しい』

 これでよし。

 近代のように機械による音楽が満ち溢れるより前、喫茶店や酒場にはよくギターが置かれていた。

 ムギが望めば、いつでも弾けるように。

 俺にできるのは、せいぜいそれくらいだ。

 

 さて、おいらはドライブを続けますか……って、お?

「こんなとこに動物?」

「え?」

「!」

 こりゃあ、たまげた。

 なんか日本ではあまり見覚えのない──だけどネット写真では見覚えのある動物がいる。

「ありゃあグアナコかな?こっちでなんて言うのかは知らないけど」

 かんたんに説明すると、南米の方にいる動物で、たしかリャマやアルパカに近いやつだ。

 2021年現在の分類的にいえばウシ目ラクダ科ってところかな?

「おー」

「パパ、近寄ってみる?」

「やめとけ野生だぞ」

 野生動物にうっかり手を出して、結果として不幸な事件が起きたらどうする?

 俺たち外来者は、傍観者に徹するのが一番なんだよ。

 

 自然を大切になんてお題目を言いたいわけではないよ?

 むしろ獣害要注意って話。

 

 知識のある方ならご存知だと思うけど、野生動物の爪で引っかかれたり切り裂かれると、感染症になる事がある。それに寄生虫がたくさんいるのも珍しくない。

 そりゃあ野生動物は手洗いしないもんな。

 寄生虫対策だってそうだ。

 野生のシカが虫だらけなのは有名だけど、それが本来の野生なんだろう。

 

 ゲームやファンタジー小説には、なんでも治す水薬(ポーション)や魔法があるのだろう。

 だけどここは現実だ。

 俺たちは全員宇宙人製アンドロイドの体なわけだけど、だからって油断はできない。

 

 繰り返すけど野生動物はペットじゃないし、ここも動物園じゃない。

 みんなも野生動物には気安く近寄るなよ?

 お兄さんとの約束だ。

 

 

 夕刻近くまで、そんな感じで走り続けて……そして野営地に到着した。

「おつかれー」

「こりゃあ、なかなか独特な野営地だな」

 森林公園のはるか上。

 正確な標高をはかる道具を持ってないけど、もう5000mを越えてるだろう。

 俺たちの体は高山病にならないみたいだけど、普通なら何日もかけて少しずつ上がってくるところだ……実際、ここに来るだいぶ前にいくつものキャラバンを追い抜いてきた。

 そんな場所にある野営地なだけあって、まるで山小屋前のテント場だ。

 野営可能ではあるけど、それ以上のものは何もない。

 まぁ俺たちは森林公園あるから問題ないけど……って、なんだ?

「どうした?」

「パパ、ここでキャンプしたいって」

 なんだって?

「森林公園でなくここで?」

「景色がきれいだから」

 言われて改めて周囲を見た。

 緑のない世界。

 あちこちに万年雪が張り付いている。

「たしかに絶景だけど……たぶんこれ、夜は凄まじく冷え込むぞ?」

「わかってる」

「いっしょに寝る」

 ふむ。

 最悪の場合でも車に逃げ込めばいいか?

「アイリス」

「ん?」

「管理棟に、車ごと包める大型タープがある。もってきてくれ」

「どうするの?」

「ちょっと裏技だ」

 俺はニヤリと笑った。


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