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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
峠(2)
74/100

……なんで?

 本気で寒いとこだと爆風さえも冷たいんですな。

 そんな事知りたくなかったけどさ。

 

「ケホケホ……えーと無事かぁ?」

「パパあそこ」

「お、おう……なんか倒れてるな」

 小柄な影があった。

「よくわからないけど、とりあえず敵対ではないんだよな?」

「たぶん」

「わかった」

 俺は近寄ってみた。

 近くに寄るとわかったが、その誰かの落ちている周囲の地面がおかしかった。まるで大きなエネルギーをぶつけられた後みたいに陥没してる。

 生きてるのかこれ?

 実は即死してんじゃねえか?

「──ちょっとまて、凍ってるぞこいつ」

「え!?」

「非常事態だ、森林公園に収容する」

「え、でも」

 アイリスが俺をみて、そして倒れている者をみた。

 あ、そうか。

 何者かわからないのに森林公園に入れるわけにはいかないか。

 でもこのままはまずいぞ。

「ムギ、車のエアコンの操作わかるか?」

「わかる」

「すぐ温風全開にしてくれ!

 アイリス、今すぐ解析できるありったけのコレの情報つけてマザーに確認!

 マザーの許可が出たら森林公園に──」

「待ってパパ、あわてなくていいよ」

「いやまずいだろ、処置遅れたら死ぬぞこいつ!」

「パパ、ドロイドだから!」

「だからまずいだろ……って、ドロイド?」

「うん」

 アイリスに言われて納得した。

「あー……そ、そうだったな。

 まぁたしかに死なないか、これくらいじゃ」

「うん」

 マイナス200度まで耐えるんだよな?

 でもちょっと待てよ?

 ここは宇宙文明でもなんでもないのに、どうしてこんな頻繁に人造人間(ドロイド)がいるんだ?

「お館様が作ったんだと思う」

「マザーが?そうなのか?」

 なんでわかるんだ?

 その俺の疑問にアイリスは簡潔に答えてくれた。

「同型機っぽい」

「そういうこと?」

「うん」

 なるほど。

 

 

「ああすまない……いやー死ぬかと思ったよ、ありがとう」

「お茶、熱いから気をつけて」

「いやぁすまない……あぁ染み渡るねえ、フフフ」

 さすが人造人間。

 ちょっと温めてやると普通に動き出した。

 アイリスの見立てによると凍傷などもないらしい。

 半分凍ってたってのに……頑丈だなぁ。

 さて。

 毛布にくるまってケラケラ笑う、その頑丈なドロイドさん。

 中身は黒髪黒目の結構な美人さんで、しかも職業は自称魔法使いだった。

 ……なんだかなぁ。

「さて、遅れてすまないが自己紹介をしよう。

 わたしの名はリン。リン・フェイ・マフワンという。

 オルガ・マシャナリ・マフワンをオリジナルとする妖精(フェイ)の一体だ。

 どうかよろしく頼む」

「リンか、いい名前だな」

 あのオルガ博士が元なのか。

 けど、元の妖艶な美女とずいぶん違わないか?

 さすがに成人女性だろうけど、美少女といっても通じそうな見た目。

 まぁ個人的にはこっちが好みではあるけどな。

 オルガ博士はさすがにアダルトな美女すぎて、そういう意味の食指までは動かない。

 なんか一方的に翻弄されそうだし。

 それに比べると、普通に可愛いと思える。

「俺はハチだよろしく……ところで妖精(フェイ)って?」

 どういう意味だろう?

「魔族の習慣なんだが、成人の男女でないものを妖精(フェイ)と呼ぶんだよ」

「成人男女でない者?」

「あー、そのあたりの説明をしていると話がややこしくなるな。

 とりあえず、人造人間(ドロイド)には妖精(フェイ)名をつけるとおぼえといてくれ」

「──よくわからんけど了解」

 よく考えてみたら、宇宙人製アンドロイドなのに名前がついてるって奇妙じゃね?

 俺は元人間だから自称した。

 アイリスとムギは俺が名付けた。

 だったら──。

「なぁリン」

「なんだ?」

「リンにリンの名をつけたのは誰だ?」

「もちろんオリジナルのオルガだ。

 小さい頃、つけたかった妹の名を元にしているときいた」

「妹の名?」

「オーリンと名付けたかったそうだ」

「なるほど……事情はよくわからないが、かなわなかった願いを託したんだな」

「うむ……わたしは拒否しようとしたが、逆に怒られてしまった」

「怒られた?」

「わたしはもちろんその妹ではないし魔族の生まれでもないが、それでも妹には違いないそうだ。

 そして自分の事は姉と呼べと。

 道具に名付けなんてといったら、ココロあるものは人だ馬鹿者とゲンコツ食らわされた」

「……そりゃご愁傷さま」

「うん」

 

 なんだ。

 なかなかいいやつじゃないか、オルガ博士。

 

「それで、どうしてこんな寒いところに飛んできたんだい?」

「君だよ」

「俺?」

「ああ」

 ビシッと指さされた。

「わたしは、ひとりの知的生命の遺伝形質や記憶を元に作られた人造の存在。

 ぶっちゃけると、そちらのアイリス殿と同様の存在だろう?」

「だな」

「だったらわたしの作られた理由もわかるだろう?」

「……まさか俺たちの一員にするために?」

「正解だ」

 ニッとリンは笑った。

 俺やアイリスの本来の立場は、マザーの端末であり戦士だ。

 リンは新しいご同輩ってわけだ。

「リン、君の製造ってオルガ博士ご当人の許可を得てるんだよね?」

「もちろん。

 クリネルで顔合わせもすませたぞ。

 そして、わたしは任務を得てここに来たんだ」

「任務?」

「オリジナル──姉さまの側からすれば、わたしは調査員なのさ。

 主に空間操作の技術や、魔法利用の状態を調べてオリジナルに送るんだよ。

 姉さまは空間魔法の研究をしていて、そのためのデータがほしいんだ」

「なるほど……で、自分自身のデータ提供と引き換えに調査させてくれと?」

「うむ」

 研究のためなら自分自身すら交渉カードにする事を辞さない、か。

 まさに絵に描いたようなマッドな面もあるんだな。

 なるほど、おぼえておこう。

「そういうわけなので、これからよろしく頼む」

「ああよろしく……だけどもうひとつ質問があるぞ」

「む、なにかな?」

 俺は……たぶん自分が苦笑いしてるだろうなと思った。

「リン……おまえさん勝手に出てきただろ?」

「!?」

 ははぁ、やっぱりか。

「どうせクリネルで落ち合う手はずになってたんじゃないか?

 なんでまた、わざわざ前倒しして、こんな寒い空を飛んで来たんだ?」

 そういったら、なぜかリンは赤くなった。

 む、なんだ?

「そりゃあ……旦那様(・・・)に興味があったからだな」

「は?だん……なんだって?」

「なんだって……まさか理解してないのか?」

 今度はリンが首をかしげた。

「現在、マザー殿の持たれている遺伝子プールで、男のデータは君だけだ。

 そして女のデータばかり次々と増やしてるって事は、子作りしろという事なのでは?」

「短絡すぎる!」

 さすがに頭をかいた。

「マザー殿はそうおっしゃってたぞ?」

「言いたい事はわかるが、犬や猫のペアリングじゃねーんだ。

 上が了解したからって、はいそうですかとできるわけないだろ?」

「ふむ、マザー殿は君たちの統括をしているとおっしゃっていたが?」

「現場の事は俺たちに任せる、そうもいってただろ?」

「む、たしかに」

 リンは納得げに大きくうなずいた。

「アイリス嬢すまない。

 わたしの勇み足であったようだ。

 このあたりの調整をお願いしてかまわないか?」

「……わかりました、では、受け入れの方向ですりあわせをいたしましょう」

「よろしく頼む」

「はい」

「え?え?」

 なんか俺の頭上で、なぞの同意がかわされてますが?

 困っていたら、誰かがポンと俺の肩に手を置いた。

 見たらムギが苦笑していた。

 そして。

「男と子供は『おんなども』には勝てない」

「あー……とりあえず任せておけって?」

「うん」

 たしかに。

 ま、アイリスなら悪いようにはしないだろ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ニューヒロイン参戦! 家族が増えるよ!やったねハチ!(縁起でもない)
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