ガゾの男たちと……
男はバタバタと建物に入っていってしまった。
そして何か声がして。
そんで、なんか上司らしい男を連れて戻ってきた。
「これは申し訳ありません、ハチ様!
とんだ失礼を!」
「いやいいよ。
こっちこそ、クリネルに急ぐあまり事情を知らなくてね、悪かった。
国境のお仕事ご苦労さま、悪いけど手続きしてくれるかい?」
「は、ただいま!」
男たちは動き出した。
「……お」
なんか、動き出してからは早かった。
別の担当が書類を持ってきたかと思うとペタペタやりはじめ、少し質疑。
名前とか来訪理由とか簡単に確認して、それで手続きは終わった。
「エマーンにようこそ、ハチ様。
どうか楽しんでいってください」
「ああ、ありがとう。
そうだ。
アイリス、それひと袋もらうぞ」
「え?あ、うん」
さっき管理人室で回収した、らくがんをひと袋とる。
口をあけ、あえて彼の前でひとつ食べて見せて、そして渡した。
「贈り物がなくて悪かったね。
これは異世界の甘い菓子だ。
このとおり、そのまま食べられる。
よかったら皆で食べてくれ」
彼は、不思議そうな顔をして、そのらくがんをひとつ食べて……。
「!」
そして、ビックリ顔から超笑顔へ。
「こ、これをもらっていいのかい?まさか」
「ああ、その袋の中全部だ。
こんなので悪いが、よかったら皆で分けてくれ」
「おお!ありがとう!」
なぜか男は大喜びすると、他の職員にも食わせて回って。
……そして皆、なんかイイ笑顔になってしまった。
「えっと……なんで?」
「パパ、わかってない」
「え?」
なんか、アイリスが苦笑いしていた。
「このあたりで甘いお菓子って、高いんじゃないかな?」
「あ、そっちか!」
へたな小銭渡すより、立派なワイロになったと?
うわぁ……それは想定してなかった。
焦っていたら、なんかさっきの上司な人が、小さな陶器製の瓶をもってきた。
大きさは、バーボンのボトルを想像してくれ。
だいたいそんなもん。
「ありがとうハチさん、けどちょっともらいすぎだ。
だから、代わりにこれをあげよう。
君は酒を飲むかい?」
「好きです」
「それはよかった。
こんなもので悪いが、もらってくれないだろうか?」
「これは、お酒ですか?」
「中央大陸産で、銘はギルガメッシュ。
かつて異世界人が作ったと言われる酒だよ」
ほほう。
「君は中央大陸というと思うところがあるかもしれないが、酒に罪はない。
それにこの先、エマーン側に行くと中央大陸の酒は入手しづらいんだよ」
「なるほど、いただきます。ありがとうございます!」
「いやいや、こちらこそ。よい旅を」
そんな話をしていると、最初にアレな対応をした職員がやってきた。
「ハチさん、ちょっといいかい?」
「あいよ、なに?」
「さっき入った情報だけど、ここから上りのルートは今夜、霧が出る可能性が高いそうだ。
だから、まだ陽が高いうちに野営場所は決めたほうがいい」
「なるほど、それは耳寄りです」
「さきほどは済まなかった、よい旅を」
「ありがとう!」
俺たちは笑顔で、手をふって別れた。
◆ ◆ ◆ ◆
同じ頃。
コルテア首長室では、アリア・マフラーンが友人と通信していた。
『悪い癖が出たなアリア。まぁいい薬だろう』
「もう、貴女は気楽でいいわねオルガ。
これで、長らくお世話になったこの首長室ともお別れよ」
『それは災難かもしれないが、よかったんじゃないか?』
「よかったですって?」
『カルティナにもいわれたろう?そろそろケラナマーに戻ったらどうかって』
「……」
『あの子なら心配しなくても、村役場の職員として元気にやっていくさ。
あと、アリアの学籍は今もそのままだそうだぞ……まぁさすがに初年生からやり直しだろうが』
「……でも」
『ああ、どうせなら政治経済はおすすめしないよ。
それより生物、それも海洋生物がやりたいといっていたろう?』
「ええ、よくおぼえてるわね。
カルティナのことで興味をもって、知識が欲しかったけど……それがどうかしたの?」
『ミニラ博士をおぼえてるかい?』
「ミニラ博士って……ああ、ドワーフの『小さな教授』ね?」
『そう、そのミニラ博士だ。
彼女の研究室は、カルティナのいる村のすぐそばだぞ』
「本当なの!?」
『本当ほんとう。
おそらくだが、君が訪ねていけば博士は相談に乗ってくださると思うぞ?
復学にしろ、単に何かをするにしてもね。
しかも、とりあえずカルティナの近くにもいられる──どうかな?』
「それは、ちょっと興味深いわね。
先のことはともかく、博士にはお会いしたいわ」
『よしわかった、では訪ねていく方法を教えよう。
それじゃあ──』
アリアは、誰かとの通信を時間いっぱいまで続けていた……。




