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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
山脈越え
40/100

トンネル市

 トンネル市がだいぶ近づいてきたところで、マザーから通信が入った。

『アイリスの髪留めの解析結果が出たよ?問題なしだ』

「そりゃよかった」

 アイリスがタシューナンで知り合ったメイドさんからもらったそうだけど、魔法らしきものが付与されていたんだ。それの解析を頼んでいた。

「結構時間かかった?」

『おかげさまでデータが色々ととれたからね。次からは早いよ?』

「なるほど」

 学習しながら解析していたってわけか。

「ちなみに、かかっていた魔法は何だったの?」

『疲労回復だね。

 どうやらメイドたちがよく使う髪留めで、友達同士でも贈りあったりするそうだよ』

「へえ……」

 ならば、本当に善意のプレゼントだったわけか。

 それは本当によかった。

 アイリス、本当に嬉しそうだったからな……。

 その笑顔が裏切られずにすんで、本当によかったよ。

 

「ところでマザー」

『なんだい?』

「いや、もうすぐトンネル市なんだけど……なんか山なんだけどさ。

 地図で見たところ、間違いはないみたいなんだけど……トンネル市って海でなく山に面してるの?」

 目の前に広がっているのは、なぜか山。

 地図を見ても、その向こうは海のようだけど、けど俺たちの車からは山しか見えない。

『ああ、クリューゲル道とやらの入り口は、山腹に開口する形になっているからネ』

「ほう……じゃあ、もしかしてトンネル市って」

『いかにも、なにもないところにトンネル景気でできた町さね。

 今はトンネルが閉鎖中で閑古鳥が鳴いているが、昔はにぎやかだったようだよ?』

 ほうほう。

「閉鎖になった理由はわかってるの?」

『50年ほど前、タシューナンを侵略した人間族国家が、トンネルを使ってエマーンにも攻め込もうとしたらしいね。

 この時、皆を逃して「しんがり」を務めた日本人の男が、日本語の難解なキーワードを使ってトンネルの出入り口を封印したようだね』

 ほう。

「ちなみに、そいつはどうなったの?」

『死んだようだね』

「……どういう経緯で死んだのか、聞いていいか?」

『ああ、いいさ……別に悲惨な最後ともいえないものだからね』

「?」

 悲惨な最後とはいえない?

『その話の前に、ひとつ伝達事項があるよ。

 ハチ、「魔力」の件だけどね、何とか利用できる目処が立った。

 実は、既にデータ更新で、あんたも使えるようになってるよ』

「え、ほんとに?」

 もしかして、俺も『魔法』ってやつが使えるってこと?

 あー……でも正直、アニメの魔法少女みたいなのは勘弁なんだけどな。

「マザー、それで利用方法とかはどうなってるんだ?

 まさかと思うけど、アニメの魔法少女みたいな事させるわけじゃないんだろ?」

『やりたいなら、そうするけど?』

「勘弁してください」

『だろうねえ』

 けらけらとマザーは笑った。

『現時点で使えるのは原始的なものだね』

「原始的なもの?」

『自分の内側に働きかけるものサ』

 自分の中に働きかける?

『ふむ、わかりにくいかい?

 だけど考えてごらんよ。

 問題のエネルギーは生命体に干渉し、自然界での生き残り率を高めるんだ。

 そして、その宿主の生命体ごと増殖したり、その意思によって賦活化する事で広がっていく。

 だったらその力の発露も、扱いやすく強力なものであるのが道理だろ?』

「……自然界での生き残り……!?」

 思わず、あっと声が出た。

『うん、察しが良いねハチ、そういうことさ』

「なるほどそうか、そういうことか!」

 

 自然界で、生き物が有利に生き残るためには何が必要だ?

 そう、道はふたつ。

 いち生物として強力になるか、逆にどんどん繁殖するかの二択だ。

 野生動物たちがそうであるように。

 

 なるほど……なるほど!

 すがすがしいほどにわかりやすい!

 

「なるほど、つまり自己強化が基本ってわけか」

『いかにも、そのとおりさ。

 それで、さっきの日本人の話に戻るんだがね。

 彼はその自己強化の最たるもので、途方も無い事ができたらしいよ』

「ほほう、というと?」

『なんでも自分を超戦士に変えて、タシューナンを侵略していた万単位の人間族の軍を滅ぼしたそうだよ。たったひとりでね』

「いぃ!?」

『彼は殿軍どころか、それをはるかに上回る働きをしたわけだ。

 まぁ当人も最後には、疲れ果てていたところを暗殺者に殺されたようだけどね』

「マジか……」

 そんなことまでできるもんなのか?

 なんてこった。

『彼の用いた技法は研究されて、後に英雄化と名付けられたそうだよ。

 だけど、強大な魔力と溢れる想像力がないと……つまり日本人でないとうまく発動しないそうだよ』

「英雄化、ねえ」

 細かいことはよくわからないけど、理屈はわかる。

 自分が超サイ○人になれたら、そりゃ誰にも負けないだろうさ。

 誰にでもできるとは思わない。

 だけど、本当にできるなら、そりゃ英雄にだってなれるって事か。

 

 

 トンネル市が近づいてきて、道の分岐が見えてきた。

 うん、選択肢だな。

 俺はマザーへの質問を中断して、アイリスに問いかけた。

「アイリス、トンネル市で立ち寄りたいところはあるか?」

「わたしはないよ?」

「了解、じゃあここは通過するか」

「パパ、あのトンネルは見ないの?」

 だいぶ町に近づいたおかげで、封印された開口部がここからでも見えていた。

「うん、それはたしかに魅力的だけど、やめておくよ」

「どうして?」

「今は走りたい、そして国境を越えたいからさ」

 背後の情勢は、まだ安定してないはずだ。

 歓迎してくれたふたりのタシューナン王族も、タシューナン国内では買い物くらいしか勧めなかった。

 早めに渡り、エマーン側にも話をつけとけって言ってたもんな。

「トンネル自体はエマーン側からも見られるんだろ?あっちで見学するさ」

「ん、わかった」

 それで会話は終了した。

 

「よし、じゃあトンネル市は回避するぞ」

「はーい」

 俺はハンドルを国境にむけ、車を走らせた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 英雄化! 前は鼻の無い最強の地球人に変身してましたね。 今回は出番あるかな?
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