其の六
ー地獄 獄炎層ー
妲己が岩を蹴り砕きながら怒りの声を上げている。
「全く!夜鬼と夕鬼の奴ら許せないわ!!
自分達が無能なのを無有様に当たり散らしやがって!」
刃鬼が同意するように頷く。
「そうだな。あの2人は長く生きているだけあって力はあるが、利己的で王の器ではない。
無有様が即位されたらまずはあの2人を処刑しましょう。」
「これこれ、2人ともそう言うな。
余も先程は仲間の事を悪く言われカッとなってしまったが、あやつらの言う事にも一理ある。
いずれにせよ、閻王のご判断に委ねようではないか。」
無有が新たに、入荷した生きた罪人達の山の上に腰掛けながら2体をなだめる。
「僕は無有様が一番強いと思うよ!」
楽鬼が罪人の頭をその身体から蹴り離しながら笑っている。
「ふっ…。」
楽しそうに笑う楽鬼につられ、無有も笑う。
「楽鬼お前はいつでも楽しそうだな。
余も見習うとするか。」
微笑を浮かべる無有。
「何を申されますか無有様!
楽鬼を見習う事など何もありませぬ!」
刃鬼が文字通り鬼の形相で無有に迫る。
「そうよ〜!無有様は既に完璧。
そして底無しに無敵。」
妲鬼が恍惚の表情を浮かべる。
「ククククク…
お前達が側近で良かった。」
無有の表情はおよそ鬼とは思えないほど柔らかく、温かい。
「なっ…、もったいなきお言葉!
我らはあなた様に仕える事が至高の幸せにございます。」
刃鬼が勝手に跪く。
「はあ〜無有様のそのお言葉は人間の魂100体分の食後に匹敵するわ〜。ジュル…」
相変わらず恍惚の表情を浮かべながらよだれを垂らす妲己。
「僕も無有様が主で、良かったよ!
寛威や李武に仕えてたら楽しくなさそうだもん!」
楽鬼は最後の一体の首を蹴り離し終わる。
「…。
この先にどんな未来が待っていようとも余に付いて参れ。
余も又、貴様らの忠義に必ず応えようぞ。」
掌を下に向け、首の無い人間の胴体達に強い重力をかけながら下降していく無有。
やがて胴体達は無有のプレスにより、原型が無くなっていった。




