其の五
ー漆原家前ー
母親と進次郎が門の前でバスを待っている。
「ママー、お腹ペコペコ〜。」
進次郎がお腹に手を当てながらぐるぐると腕を回す。
「ふふっ。はいはい、染ちゃんが帰ってきたらおやつにしましょうね〜。」
エンジン音が迫ってくる。
やがて漆原家の前で停車し、バスの中からは担任の先生と染一が降りてきた。
「ただいま〜、ママー!」
染一が母親の手を握る。
「お帰り、染ちゃん!」
「にーにお帰り〜。」
3人は保育士に手を振り、家へと入っていく。
「ワンッワンッ!」
廊下の先からポメラニアンが駆けてきた。
「ただいま、皇太!」
皇太と染一が戯れ合う。
「染ちゃん、ケーキあるから先におてて洗ってうがいしましょうね。」
「ケーキ!?やったー!
おてて洗ってくるー!」
染一は洗面所へと駆けていく。
「はい、じゃあ進ちゃんはお席に着いて、エプロンも着けてっと…」
「ママー!おててとガラガラしてきたー!」
母親がケーキを準備していると染一がリビングに入ってきた。
「はい、じゃあ染ちゃんはお洋服お着替えしてからお席に着いて…。
よし!じゃあ皆一緒におててを合わせて…」
『いただきます!』
2人がケーキを口にする。
「んー!美味しい!」
「おいちぃ!!」
染一と進次郎が舌鼓を打つのを温かい目で見守る母。
「良かった。
少し焦がしちゃったけどね、えへへ。」
「僕ママのケーキ好きー!」
「すきー!」
「ふふふっ、ママは染ちゃんと進ちゃんが大好きよ。」
優しい笑顔を浮かべながら2人の頭を撫でる母親の手はとても暖かく、その掌からは深い愛情までもが伝わっているかのようだった。




