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陰to陽  作者: 黒川一
ー薄明編ー
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第62夜 洗礼






「ババアとは何事じゃ、このボンキュッボンのナイスバディを見よ!」


漆原がババアと呼んだ女性はどう見ても20ぐらいにしか見えず、確かに抜群のスタイルをしている。

しかし声や雰囲気、口調には経年の重みがあり、これまで幾多の修羅場をくぐり抜けてきた戦士のような貫禄がある。


「若作りしてるだけだろ…


《星陰破》」



漆原が宙に五芒星を描くと、凄まじいスピードで五角錐が伸びていく。



《護光防壁》


女性が両手を組みながら詠唱すると、平べったい太陽を模した物体が現れ、盾のように星陰破を防いだ。



「ちっ…相変わらずやるなババア。」


「お前、以前より陰素が増しているのう…無有の影響か。

して…その方が明里か?」


「は、はい!白石明里と言います。

よろしくお願いします。」


「なるほどなるほど…確かに面影が…。

剛三郎の事は残念じゃったな。

あやつは酒が好きじゃったろう?」


「あっ…はい。

毎晩晩酌していました。」


「ふっ…相変わらずだのう。」

千陽が背後を振り返りながら呟く。

その刹那、千陽の瞳から流れた一筋の涙を明里は見逃さなかった。


「あの…祖父とお知り合いだったんですか?」


「昔のう…恐山の麓で共に修行していた時期があった。

剛三郎に玄海…懐かしいのう。

玄海は不動明王の行、わしと剛三郎は陽神の行に励んでいた。

ただ、若かった分主張が強くてな。

わしだけが途中で抜けてしもうたわい。

剛三郎とはそれっきりじゃ。」

陽神の間の東側、窓の外を見つめる千陽。


目の前に居る女性は一体いくつなのだろうか…

明里が考えていると、漆原が割って入る。


「昔話はその辺にしてそろそろ本題に入ってもいいか?」


「ちっ、相変わらず生意気なガキじゃ。

では、入信の儀を執り行うぞ。

日和(ひより)、始めよ!」


「かしこまりました。千陽様」


千陽が上を向きながら声を張り上げると、日和と呼ばれたAIの機械音声が応答し、天井が開いた。

そこから陽の光が差し込み、陽神の間の中心を照らしながら眩い輝きを放っている。


「明里よ、中心に立て。」


訳もわからず言われるがままの明里が陽神の間の中心に立つと陽の光が明里を照らす。


「汝、太陽の洗礼を受ける者。

陽神の名の下に浄化の光を授け給え。

陽光輪結(ようこうりんけつ)》」


千陽の詠唱が終わると、陽の光が強くなり、明里の身体を包み込んだ。

明里の視界は光に包まれ、心地よい温もりが全身を

駆け巡る。

しばらくするとその光は落ち着きを取り戻し、元の輝きに戻っていった。


漆原はいつの間にか護芒結界を張っている。


「明里よ、今からお前は我ら陽光の輪の仲間だ。

これからは陽素を高める修行の日々が待っている。心して鍛錬に励むが良い。」


「は、はい!よろしくお願いします。」


夏水(なつみ)!明里を連れて行け。」


千陽がいつの間にかエレベーターの前に立っていた女性に指示する。


「はい。

明里ちゃん、こっちよ。荷物も持ってきてね。」

漆原と手を振り合いながら女性に付いていく明里。

案内する女性の顔に見覚えがある…いや、見覚えがあるどころではない。

毎日テレビで見ている顔だ。


「えっ、もしかしてナツミさん!?」

明里の顔が真っ赤に染まる。


「わー!私の事知っててくれてるんだ?」

エレベーターなら乗り込みながら優しい笑顔を向ける夏水。


「知ってるなんて…大ファンです。

ラジオも聞いてます。

陽光の輪の方だったんですね。」


「まさかファンの子だとは…何だか照れ臭いね〜。

そうなの、うちは芸能事務所もやってるからさ。」

1階の大広間を抜け、複数ある廊下の1つを進んでいくと、ホテルの1室のような部屋に着いた。


「ここが明里ちゃんの部屋よ。

好きに使って!

今日はもう疲れているだろうからゆっくり休んで。明日皆に明里ちゃんの事を紹介するね。」

そう言い残すと、夏水は部屋を後にした。


夏水が居なくなった直後、急激に疲れが襲いベッドに倒れ込む明里。


「絶対強くなるんだ…。」



1人呟くその言葉には、身体の疲れとは裏腹に力強い意志が込められていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 若作りババアと漆原君のやり取りが良いですね(笑) 意思が強く血筋も確かな明里さんなら、 すぐに頭角を現わせそうですね。
2020/04/01 07:40 退会済み
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