第42夜 警察
病室には彩香と笑実を除いた、"あの日"天海団地に居たメンバーが揃っている。
「しかし漆原くんひでぇな。
"誰だ!?"じゃないだろ。
一昨日からずっと一緒の病室じゃねぇか!」
反町が文句を言う。
「すみません。
むさ苦しいおじさんと一緒だったので、白石さんが来てくれてテンション上がっちゃって…」
「むさ苦しいおじさんって…
少年、口の利き方には気を付けないとダメだぞ!」
逆井が諭すように注意し、その隣では三者がりんごの皮を剥いている。
明里は病室にむさ苦しさを感じつつ、反町に質問した。
「あの、彩香と笑実の行方不明の件はどうなったんですか?」
「ああ、産業道路の周辺で誘拐犯から逃げた2人を偶然保護した事にした。
誘拐に関してはこの件について捜査が継続できるようにでっち上げただけだがな。」
反町はりんごを食べながら続ける。
「さすがに我々も"あれ"を経験した後で失踪事件としては片付けられんからな。
まさか本当に幽霊や異世界なんてのがあるとはな。
しかし"失踪していた少女達は異世界に居ました"なんて報告できるはずもない。」
反町は2個目のりんごを頬張る。
「そうゆう事だ白石さん。
このおじさん達には一応一通り説明しといた。
理解できているのかはわからないけど…
まあこの人達はこの人達で月美学会の捜査をしたいみたいだから何か覚えてる事とかあったら教えてやって。」
三者が漆原にも爪楊枝を刺したりんごを渡し、それを頬張る。
「あ、あの…前は嘘を吐いてごめんなさい。」
明里が反町と逆井に頭を下げる。
反町がりんごを食べる手を止めた。
「ああ、大丈夫だよ。
あの時に正直に説明されても君への疑いが深まってしまうだけだったし。
でも今は何を聞いてもすんなり受け入れられるよ。」
「そうだよ、明里ちゃん。
気にしないで!」
逆井がフォローする。
「ありがとうございます…。」
「あ、それと白石さんの事を運んだのはこのおじさんだから。
あの時、この人が居なかったら全滅してたかもね。ははっ」
何が面白いのか、突然笑いが込み上げる漆原。
「あ、ありがとうございます。
じゃあその時に怪我を…?
あの日からひと月経過してるって事は全治1ヶ月以上…
本当にごめんなさい!」
明里が再び頭を深く下げる。
「いや、いいんだ。
人を助けるのも仕事みたいなもんだし。
それに若い頃ヤクザの抗争に巻き込まれた時の方が大怪我だったからこんなのへっちゃらさ。
それより君の方は大丈夫かい?」
「はい、おかげさまで私は軽い火傷と打撲で済みました。
本当にありがとうございます…っ。」
明里が何度も頭を下げていると、三者がタイミングを図っていたかのように爪楊枝を刺したりんごを差し出した。
明里がお礼を言いながらりんごを受け取る。
「明里ちゃん…
今回は守れなかったけど、今度からは俺が守ってあげるから安心してね!
てか一生守ってあげる。」
最後に小声でボソッと何かを言った逆井がガッツポーズをしながら明里を見る。
『ロリコン野郎』
反町と漆原の声が揃うと、病室は似つかわしくない笑いに包まれた。




