第41夜 それぞれの生還
「くんくんくんくんっ!
看護婦さんの柔らかい香り…
堪らんっ…」
彩香と笑美が帰った後、明里は自分の病室を抜け出した。
そして目的の病室の前に立つと、中から聞き覚えのあるいかがわしい声が聞こえてくる。
ガラッ
「夜勤明けの看護婦さん…実に芳しい…
スー、ハー、スー、ハー」
「漆原くん!」
「しししししししし白石さん!?
い、今ね、深呼吸してたんだ!
スー、ハー、スー、ハーッ
医者にもよく深呼吸しろって言われてるしね?」
明里はいつも通り挙動不審の漆原を見てホッと胸を撫で下ろす。
「良かった…。
漆原くん…私達、勝ったんだね。」
漆原は咳払いをした後、真剣な表情になる。
「ま、まあ2人を救ったという意味ではね。
でも…俺達が天海団地の反界に入っている間、正界ではひと月も経っていたのには驚いた。」
漆原は壁にかかったカレンダーを見ている。
「そうだね。彩香と笑美、それに警察の人達が出た日から1ヶ月後に私達が出た事になるもんね。
私にとっては同じ日の感覚なのに。」
「ふむふむ。
しかし君達が無事で良かったよ。」
漆原の向かいに仕切られているカーテンの先から声が聞こえる。
「誰だ!?」
すかさず漆原が声をかける。
「白石さん、そのカーテンを開けてくれ。」
漆原は何かを感じ取っているのか、恐ろしい剣幕だ。
「えっ…でも…」
躊躇う明里。
「いいから開けるんだ!!」
漆原の顔は怒りに満ちている。
これはただ事ではなさそうだ。
「わ、わかった!」
明里は勢いよくカーテンを開けた。
シャッ
「ご機嫌ようお嬢さん。
具合はいかがかな?」
カーテンを開けた先のベッドの上には、入院着の反町が座っていた。




