第39夜 生と死
薄暗い大部屋の円卓には十数人が座っている。
しかし前回までとは違い、一席のみ空席だ。
両手を顔の前に組みながら円卓に肘をつく女性。
全員が揃ったのを確認し、話を始めた。
「皆に報告がある。如月が死んだ。」
ザワザワとする室内。
「奴は組織の情報が入ったUSBを奪取すべく、秘密裏に動いていた。
その最中での出来事だ。」
隣の人物が口を開く。
「して…死因は?」
「ああ。それを調査してもらうべく、皆に集まってもらった。
USBの奪取と共に引き受けられる者は居ないか?」
向かい側に座っている男が手を挙げた。
「その件…俺に一任してもらえないっすか?
少し前に陰陽師だかなんだかってガキにやられたってのも興味がありますし…」
「よかろう。
では水無月、この件はお前に一任する。
それと陰陽師の漆原染一だ。
月光開花の如月を退けるほどの力を持っている。
決して舐めてかかるな。」
リーダーらしき女性は厳しい口調で注意を促がす。
「はーい。
如月がいくら弱いとはいえ、一応"月花"のメンバーでしたからね。
奴の二の舞にならないようせいぜい気を付けますよっと。」
軽い口調で笑いながら話す男。
「よろしい。
もうすぐ"血月の儀"が完了する。
それまでは皆、計画に支障が出ないよう十分注意しろ。
では解散だ。」
女性の号令と共に円卓から複数の足音が去っていった。
天海市立病院
「ん…。」
明里が目を覚ますと、そこはもはや見慣れた光景となった病室だった。
「漆原くん…」
私達は彩香と笑実を救い、繭子を結界の中に閉じ込めた。
そう、私達は勝ったんだ…
漆原くんはどこに居る?
原型が無くなっていた手、大量の血を流していた腹部。
彼は無事なのだろうか…?
明里の頭の中で様々な考えが錯綜していると
ガラガラッ
病室のドアが開き、彩香と笑実が入ってきた。
『明里っ』
2人の声が揃う。
「心配したぜこのやろー!」
「無事で良かったよ〜」
2人は目に涙を浮かべながら明里に抱き付く。
「彩香…笑実…」
明里は堪えきれず涙を流す。
「良かった…本当に良かった…」
「明里…ありがとな。
これまでの事全部聞いたよ。」
彩香の目には相変わらず涙が浮かんでいる。
「うちら1ヶ月近くも行方不明になってたんだね。
本当にありがとう明里…。」
笑実の目にも同様に涙が浮かぶ。
「明里に何かあった時は私達が必ず救けるから。」
「お祖父さん亡くなって大変だと思うし、困った事があったら何でも言って〜!」
"友人"という"安心感"。
長らく感じていなかったものだ。
明里は2人の手を握るとしばらくの間、その心地良い温もりを感じ続けていた。




