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陰to陽  作者: 黒川一
ー黄昏編ー
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第34夜 再会







2人がフェンスを越えると、そこには貯水槽があった。


あの時の記憶が蘇る…


「ここから出たんだ…」

明里が呟いた。


「なるほどね〜。水鏡だな。」

漆原が貯水槽を調べる。


「反界に入る手段は大きく分けて2つある。

1つは白石さん達のように招かれる事。

そしてもう1つは鏡を見つける事。」

漆原が貯水槽の蓋を開けた。


「反界は正界の裏側の世界…ビンゴ!」

貯水槽には濁った水が溜まっており、悪臭が漂っている。

しかしよく見ると、そこには団地の風景が見えている。


「うっ…」

明里が思わず鼻を塞ぐ。


「白石さん、我慢して。

飛び込むよ。」



ザブンッ!!



漆原が貯水槽に飛び込み、明里も続く。


次の瞬間、2人は団地の中庭に立っていた。



ズンッ!



強い重力のようなものが漆原の上にのしかかる。


「やべぇ…こりゃ想像以上だ…」


いつもは余裕の表情を浮かべる漆原の顔が引きつっている。


「漆原くん、怖いよ…。」

明里が漆原の手を取る。


「大丈夫だ。

結界ジュースを飲んでいるから俺達の姿は繭子には感じられないし、見る事もできない。

まあこちらから、何もしなければ(・・・・・・・)だが。

それにしても凄まじい陰力だな…が、とりあえず侵入成功。」


2人はエントランスへと歩みを進める。


夏だというのにやけに肌寒い。



「彩香!笑実!」


エントランスを抜けると、団地とは反対方向の正門へ歩いていく幼馴染み達の姿があった。


明里は急いで駆け寄り、2人を抱きしめた。


「良かった…本当に良かった…」


天体観測の夜に感じた2人の温もり…


明里は大粒の涙を流している。


「明里!お前急に居なくなるから心配したぞ!

ん?何で制服に着替えてんだ?」


「そうだよ明里、こんな異世界で1人で行動したら危ないよ〜。」


久しぶりに聞く2人の声。


明里は溢れる涙を堪えきれず、右腕で涙を拭いながら左手で謝罪のジェスチャーをした。


「白石さん、事が起こる前に来れたね。

運が良かった。」

漆原がエントランスから正門までのクネクネした道路の脇に座り込み地面に何かを書いている。


「あっ、お前漆原!何でお前がここに!?」

彩香が驚きの表情を見せる。


「漆原も天体観測してたの〜?」

笑実はニヤつきながら聞く。


「うん、そうそう。

白石さんこの後、大男が来るね?」


明里が涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を縦に振る。


「じゃあ早いとこ出よう。

これ以上居ると、この2人は間違い無く取り込まれる。」

漆原が明里を急かす。


「何の話してんー」

明里が彩香の口と手を引っ張り、木陰に隠れる。

漆原も笑実を引き、同じく隠れる。



……………



エントランスに大男が立っている。



公園の方に行き、猫を殺して頭部を食べる。



そしてエントランスに戻り、各部屋のポストを覗いている…否、猫の五臓六腑をねじ込んでいる。



笑実は涙を流し、彩香は飛び出そうとする。



護芒結界(ごぼうけっかい)



彩香の足下に五芒星が出現し、瞬く間に彩香を包み込んだ。


「白石さん、この人うるさいね。

いつもこんな感じ?」


明里が笑実の肩を抱きながら頷く。



「おい、じゃじゃ馬。

静かにする気になったか?」

漆原は印を結んだ指先を彩香に向けている。


彩香は先程まで結界の中で暴れていたが、結界内の無音状態に諦めたのか、力無く小刻みに頷いている。


その様子を見た漆原が結界を解き、真剣な表情で話し始めた。



「2人とも、よく聞いてくれ。

俺と白石さんが何故一緒に現れたのかは後で説明する。

しかしこれだけはわかってほしい。

白石さんはあんたらを救う為に長い間独りで闘ってきた。

お祖父さんを亡くし、心に病を抱え、それでも諦めずに何とか2人を救おうとここまで来た。

だから今は黙って俺達に従ってほしい。」


2人には漆原が何の話をしているのかはわからない…が、その言葉には真に迫るものがあった。


「お祖父さんが亡くなったって…?」

彩香が呆然としながら質問する。


「話は後だ。とにかく今は中庭へ急ぐぞ。」

漆原が目配せをすると、明里が2人の手を引き歩き出した。


「彩香、笑実。真っ直ぐ前だけを見続けて!」


明里がおそらく存在するエントランスの惨状を見せまいと、2人の目線を固定しながら誘導していく。


漆原は殿(しんがり)を務める。


エントランスを通り過ぎようとした時、明里は案の定ポストに飛び散る血と女の子の死体を発見した。


青森で夢に見た女の子…


あの時は気付かなかった…


でも今はわかる。


首と胴体が離れてはいるが、やはり蓼原繭子の遺体のようだ。


「っ…。」


明里は2度目の惨状を横目に足早にエントランスを走り抜けようとする。


その時!


三輪車のかごの上にある繭子の頭部が目を見開いた。


明里と目が合う。


明里は全身の筋肉が硬直し、蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなくなる。


急に立ち止まった明里に対し、慣性の法則が働いたようにガクンッと2歩、先に居る彩香と笑実が振り返ろうとした時


「走って!!!!!」


明里が力を振り絞り、やっとの思いで叫んだ。


後方の漆原が異変に気付き、エントランスへと駆け寄りながら叫ぶ。


「貯水槽へ行け!!!!!」


彩香と笑実は取り憑かれたように走り出す。


後ろで何が起きている?


明里を助けないと?


貯水槽?


錯綜する考え達より先に、2人の身体を支配したのは"1秒でも早く貯水槽に辿り着かなければならない"という事。


直感的にそう感じた2人の足は自然と貯水槽へと走りだしていた。


エントランスでは再び身動きが取れなくなった明里。


繭子の切断された身体が、動き出す。


「ちくしょう!!何で白石さんに気付いた!?」


漆原がエントランスに着く直前、自分の頭部を抱えた繭子が明里の手を掴み、団地建物の方へと引き連れて行った。


「白石さー」


団地からは瞬く間に火の手が上がり、漆原の行く手を阻む。


中庭の方では衝撃音と共に彩香と笑実の方へと中庭を駆ける大男。



「グケケケケケケケケケケケケケケケケケッ」



漆原はすぐさまエントランスを抜け、中庭を駆ける。


走りながら宙に五芒星を描き出す漆原。


「ちくしょうっ!間に合わねえ!!」



大男が彩香と笑実を捕まえる寸前



「バンッバンッ!バンッバンッ!」


中庭に銃声が響き渡り、大男の動きが止まった。



銃声の発生元、貯水槽の前では銃を構えた反町と逆井が立っていた。

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