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陰to陽  作者: 黒川一
ー黄昏編ー
27/82

第22夜 蛙






「おはよう漆原くん!」

教室に入ってきた漆原に明里が挨拶をした。


「あっ、うぃす白石さん!

受験以来だよー学校来るの。

相変わらず学校ってのはつまんなそうな場所だね、はははっ!」


「ちょっと漆原くん、皆びっくりしてるから"いつも通り"にしてて!」

明里が小声で耳打ちする。


「ああ、ごめんごめん。

皆アホ面してるけど意思を持ってちゃんと生きてるんだもんねっ!気を付けるよ。」


明里は絶句するが、漆原は気付いていない様子で席に着く。


「おい、陰キャ!てめえ何で俺の席座ってんだよ!」

教室の後ろの方で仲間達とだべっていた少年が漆原へ迫る。


「ごめん、佐野くん!漆原くん悪気はっ」

明里が止めに入るが、その言葉は遮られた。


「何だ白石!こいつを庇ってんのか?」

佐野は明里に怒声を浴びせる。


しかし漆原は何事も無いかのように前を見ている。


「おい!聞いてんのか!?」


ガッ!


佐野が漆原の肩を掴んだ瞬間


「ギャアアアッ!」


佐野は右手を抱えて尻もちを突いた。


「何々、俺に言ってたのー?

全く…無有は普段どんな接し方してんだよ。

こんな虫ケラに偉そうな口利かれちゃって…ククク


おいお前、どうしたんだその右手?

折れてんじゃないのか?!

誰か!彼を保健室に連れてってくれー!」

わざとらしく付き添いを促す漆原の口元は笑いが堪え切れないかのように緩んでいた。


「漆原くん、どいて!!」

明里が急いで佐野に駆け寄る。


佐野の右手の甲からは骨が突き出し、指は潰れ、鬼まんじゅうのような形になっていた。


「白石さんそんなの他の奴に任せておけばいいから席に着きなよー。

先生来ちゃうよん。」


明里が漆原を睨みつける。


事態を把握したクラスメイト達も佐野に駆け寄ってきた。



ガラガラッ



「皆おはよー…ってどうした?」

角刈りとスポーツ刈りの間を取ったような髪型の担任が教室に入ってきた。

いつもとは違う教室の雰囲気に事態を飲み込めず、キョトンとしている。


「おおおう!?

佐野、お前その手どうしたんだ!?」


「佐野くんが漆原くんに掴みかかったらこうなったんです。」


学級委員が説明している隙に漆原がうずくまる佐野に耳打ちした。


「お前誰だか知らないけど、どうすればいいかわかるよな?

そしてここは今から俺の席だ。

左手もまんじゅうにされたくなければ従え。」


うずくまる佐野は大量の冷や汗をかきながら頷いた。


「ううぅぅぅ…先生、転んで…ぶつけた…。

病院へ連れてってくれ…」


「転んだぁ?全く…

世話が焼けるなお前は!


よっこらせっと!


先生はこれから佐野(さの)を病院へ連れて行く。

1限目は教頭先生にお願いするから皆席に着いてるように!」


佐野を担いだ担任は舞台役者のような声量で生徒達に言い放ち、教室を後にした。


漆原は何事も無かったかのように佐野の席に座っている。



こんな人に助けてもらおうとしてたなんて…



明里の胸中では荒ぶる波が激しく打ち付けていた。






放課後






「いやー、あの右手鬼まんじゅうくん面白かったねー!

学校も捨てたもんじゃないなー!はっはっはっ!」

図書館への道中、漆原が今朝の出来事を思い返して笑っている。


「…。」


明里は考え事をしながら無言で歩く。


「あれ、白石(しらいし)さん?

どしちゃった?

女の子の日かな?」

ゲスな質問がとどめを刺した。


「漆原くん!

あなたには人として大切なものが欠けてる!

もうあんな真似はよして!」


「はあ………

つってもあっちが突っかかってきたしなぁ…

自業自得じゃないかな?」

漆原の表情からは恐ろしいぐらい何の感情も感じられない。


「やり過ぎよ…。」

明里は複雑な表情をしている。


「そうかな?

あんなの仮に死んだとしても別にどうでもいいと思うけど。

どいつもこいつも何も考えないで生きてる茹で蛙だし。」


「その中に私の親友の彩香と笑実も居るのよ。

佐野くんだって少し横暴なところがあるかもしれないけれど、友達思いの良いところだってある。

漆原くんは今日初めてクラスの皆と接したからわからないかもしれないけれど、皆それぞれ良い所があるわ。

だからそうやって皆の命を軽く見るのはやめて。」

涙を浮かべるその瞳は真っ直ぐ漆原の瞳を捉えていた。


「うっ…わかったよ。

わかったから泣かないでくれ。

もうあんな真似はよすよ。」


女性経験値0の漆原が謝罪をしていると、図書館に到着した。


「おっ、着いたね!

まあダメ元だ。とりあえず手分けして調べるか!」



気まずくなった漆原は話を逸らすように明里を誘導し、2人は図書館の中へと入っていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 漆原君のキャラクターが単なる陰キャラじゃなく 強者としての風格があるところが良いですね。。 [一言] 明里さんは優しいし一般的な感性の持ち主ですね。 だからこそ…
2020/02/21 07:31 退会済み
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