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陰to陽  作者: 黒川一
ー黄昏編ー
11/82

第9夜 夢






ザワザワと声が聞こえる。



(ここは…?


私…貯水槽に落ちて…)


彩香(さやか)笑実(えみ)!」



ドンッ!



「いったぁ!!」


明里(あかり)は勢いよく立ち上がり、天井に頭を打ち付けた。


何度も何度も通った馴染みのある道。


ここは"あの場所"へのトンネルだ。


「早く戻らなきゃ!早く!!」

明里(あかり)は狭いトンネルを下へと駆ける。



ザザーンッ



トンネルを出た先は波が打ち付ける天海ヶ(あまみがおか)の中腹。



「何で?何であの団地に行かないの!?」


トンネルの出入り口を行ったり来たりする。


「行けない…どうして…」


明里(あかり)の目からは枯れかけの涙が流れる。



丘の上からは相変わらず人々の声が聞こえていた。



今は何時なのか…

おもむろにスマホを取りだし、時間を確認する。


画面は22:35を表示している。

「えっ!?」


最後に時間を確認してから10分も経過してないことになる。


あれは夢だったのか?

タチの悪い悪夢で自分が勝手に気を失っていただけ…


「何だ…あれは夢だったのね…」


大男の惨劇、燃え盛る炎の熱、禍々しい黒い少女の姿。


下唇に痛みを感じながら、とんでもない夢を見たと力無く笑う。


彩香(さやか)笑実(えみ)は、きっと丘の上にでもいるのだろう。


自分はドジだから何かあってトンネルで気を失ったのだ。


そう自分に言い聞かせる。


「上に行こう…」


明里(あかり)は疲れ果てた体でトンネルを抜け、道なき道を登っていく。


空には煌めく流星群。


もはや見慣れた光景に心を落ち着かせながら、丘の上に辿り着いた。


人が沢山いる。


彩香(さやか)笑実(えみ)はどこにいるのか…


「キャーッ」

明里(あかり)の正面に居る女性グループの1人が悲鳴をあげた。


明里(あかり)に気付いたグループの仲間達も次々に悲鳴をあげる。


「何…?どうしたの?」

虚ろな目をして明里(あかり)が呟く。


周囲のざわめきが大きくなっていく。



「君!どうしたんだ!?」

サラリーマン風の男が明里(あかり)の元へ駆け寄る。


「え、何が…?」


疲弊した脳は正常な思考が働かない。


「こんなに血だらけになって!

大丈夫か!?

おい、警察を呼んでくれ!」

サラリーマン風の男が妻らしき女性に言う。


(血だらけ…?だってあれは夢…)


明里は自分の体に目を落とす。


まるで赤いドレスを着ているかのようだ。


そして一気に現実が押し寄せた。


「夢じゃなかったんだ。」



力無く呟いた明里(あかり)は、サラリーマン風の男に抱えられながら意識を失った。

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