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はい、チーズ

ミントの父という男は僕達の方へゆっくりと歩き、僕の前で足を止めた。


「離れろという言葉が聞こえなかったのか」


僕がミントとの間に入ってるのが気にくわないようだ。


ミントは小刻みに震えながら僕の服の袖を掴んでいた。やはり、怯えているのだろう。


「殺されたいのか?」


急に男は殺意が籠った目で僕の事を見下した。一瞬の体の硬直と共に、昔の思い出が頭のなかで蘇る。


僕は頭を振り、目の前にいる男に集中をした。


「し、死にたくないです」


僕は歯切れが悪く言った。


「それなら、早く退くんだ」

「それも…嫌です」


男は一つ溜め息をした後「悪く思うな」と言って、僕の左の横腹に向けて蹴りを放ってきた。


男の蹴りは僕の後ろにいるミントすらをまきこんでしまう蹴りだった。


「武器【蒼の短剣】」



奏太

【残容量:10000MB】-【蒼の短剣:800MB】=【残容量:9200MB】



鉄の短剣の刀身が蒼くなり、柄の部分が赤色の短剣である【蒼の短剣】は言うならばスピード重視の短剣であり、特有のスキルは一発逆転する威力は無いが、安全に少しずつ減らせるスキルが多い。


僕は右手にある刀身を横にして左肘を刀身にあて、蹴りをおさえる。


「やはり普通の肉体で倒すのは無理か」


男はすぐに僕と七メートルほど距離をとり、なにかを考えるように手を顎にあてた。


「ミントまで蹴ろうとしてただろ」

「それで?」


冷たく男は言い、その言葉で僕の後ろにいるミントの袖を掴む力が強くなる。


「最低だな」

「わたしの娘なのだ。あの方の好きにしてもいいだろう」

「あの方…?」


男は口元を手で軽く隠す。


「口が滑ってしまったな。…まぁよい、お前はここで死ぬのだからな」


男は一息つく。


「スキル【鋼の肉体】」



【残容量:10000MB】-【鋼の肉体:1000MB】=【残容量:9200MB】



【鋼の肉体】と言ったが男の様子はどこも変わっていなかった。


しかし、一応スキルを使ったので戦わなければいけなさそうだ。すると、ミントのことを遠くに移動しないといけないな。


とかを考えてるうちに男はこっちに向かって走りだした。


「一旦逃げよう!パッシブ【ランナウェイ】」



奏太

【残容量:9200MB】-【ランナウェイ:100MB】=【残容量:9100MB】



僕はミントを抱えて走りだした。


ミントは僕の腕のなかで小さくなっていた。


僕は追ってくる男に向かって【蒼の短剣】を振り向きざまに投げる。男はなんなくはたき落としてしまう。


僕は地面を蹴り、走った。


「お父さんと仲悪いの?」


僕は走りながらミントに質問をすると、ミントは小さく頷いた。


後ろを振り向くと、男は見えなくなっていた。撒けたのか、それとも隠れているのか分からないので、下手に動くよりは止まっていた方がいいと考えたので建物の中に入ることにした。普通の一軒家より広めの家で、ガーデニングに力をいれているようなところの庭から窓を割って、入った。


「ご主人、絵面があってないような気がします。いつもはどこにでもいるヒキニート、だがゲームになると窓ガラスを割り、幼女を誘拐する極悪非道のヒキニート、その名も奏太様!」

「うるせぇ!」


しかし、そのときミントが少しだけ笑った。僕はそれを見ると怒りという感情がどこかにいってしまい、微笑んでしまう。


「キモいです、ご主人」


僕は無視をしながらこの家の二階にのぼり、一つの部屋に入った。


たぶんここの部屋は女子が使っているようで、主にピンクの色の家具などがそろっていた。


僕はベッドにミントを座らせて、反対側の床に座る。


「お父さんの話を聞かせてくれるかな?」


ミントは少し戸惑いながらも「いいよ」と言った。


「昔はね、おとうさんはとっても優しかったの。でもね、モビルなんとかをダウンロードしたときから急に怖くなったの。そして、昨日おとうさんがわたしを殴り始めて、でも痛みがなくて、おとうさんが怖く笑ってたの」


つまりミントのお父さんは、ストレス発散のためとか、そんなことでミントに暴力をふるい、ミントを怖がらせたのか。


「ミントちゃん、ここでおとなしく待ってられるかな?」

「う、うん。大丈夫」


僕は立ち上がり、ドアに向かって歩きだす。


「カンナ」

「分かってます」

「あの野郎を倒す」


と言いながら歩いていると、足にアルバムのようなものが開かれながら落ちていた。


僕と同じ中学のようだ。いや、そんなことを考えてる時ではない、アルバムを手に取り隣にあるピンク色のカラーボックスの上に置こうとしたとき、アルバムから一枚の写真が落ちた。女子三人が肩を互いに組ながら笑ってピースをとってる写真だ。


「カ…ン……ナ…?」


中央にいる女子の髪の色は黒だが、顔の輪郭や笑ってるときの表情、体型がまったく同じなのだ。


「どうかしましたか?ご主人」


僕はなにも話さず、黙ってポッケにいれてる携帯を取り出して、アルバムをカンナに見せた。


「………」

「どうかしたか」


画面を覗いてみるがカンナはまるでフリーズしたかのように固まっていた。すぐに異変が起きた。携帯の画面が急にモビフォンの初期画面に変わる。そして、残容量が一気に下がっていってるのだ。


「お、おい!なんだこれ、早く止まれ!」


画面を何度もタッチしてみてもどんどん下がっているだけだ。



奏太

【残容量:7653MB】



奏太

【残容量:6432MB】



奏太

【残容量:4876MB】



奏太

【残容量:2533MB】



ガチッ


変な音がしたと思ったら、下がるのが終わっていた。



奏太

【残容量:2100MB】



「どうなってんだ」


僕はそう呟きながらカンナのことを見る。



∇▲∇▲∇○●○●○



「おーい、○○ちゃんも一緒に写真撮ろうよ~」


まだ少し寒気が残りながらも、春の花たちは準備を始めているこの日。私ははれて中学校を卒業しました!


「いいよ!」


私は少し走りぎみに呼ばれた所へ向かう。


「おっ待たせ~」


私は笑いながら友達に抱きつく。友達も笑いながら抱きついて、背中をポンポンと叩いてくれる。


「写真撮るぞー」


友達のお父さんが、プロが使ってそうなカメラを構えて、レンズをこちらに向けている。私は抱きついた友達と、隣にいた友達と肩を組む。


「はい、チーズ」


お決まりのフレーズと共に、カメラのシャッター音がなった。

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