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さぁ、行くか

そこには花梨がいなかった。


あるのはただ虚しく吹いてる風だけだった。


視界が歪み、気持ち悪くなり、瞼を閉じる。


気づいたら前まで歩いていた道で立っていた。


「ちくしょう…」


僕は崩れるように地面に膝をつき、力を溜め込んで拳にした両手を地面に叩きつけた。その拳の上に僕の涙が落ちていく。


「カンナ…」


携帯はポッケに入っており、片耳にイヤホンがある。


「…なんでしょうか」


花梨を殺してしまったのが自分のせいではないかと思っているようで、元気がない。


「別にお前のせいじゃない、僕が悪いんだ。目の前で見て実感した、ついさっきまでもしかしたら、と思っていた。本当に理解した。このモビルフォンウォーズは最悪で最低のゲームだってことを、そして僕が絶対に終わらせる。皆を生き返らせる」

「…頑張りましょう」


僕は小さく「うん」と言って立ち上がり、空を見上げて涙を渇かす。



残り人数

【7686/10000】



∇▲∇▲∇



父は僕を捕まえた


牢屋に入れられて泣いた


虚しく泣き声は響くだけ


母はいない


死んだ、殺された


父は僕にプラグを差し込んだ


父が笑っている


画面の奥で


父が近づいてくる


「削除」


父が言った


ここでボクの意識が途切れた



∇▲∇▲∇○●○●○



「なぜ逃がした」


冷たい表情でボクの主は言った。


「すみません」


いままで過ごしてきて主には逆らってはいけないと感じた。言い訳をしたら殴られる。


「良くなってきていたのに」


主が溜め息をつきながらいつも使っているパソコンを操作し始めた。昔からの癖だ。目の前にある対象に興味が無くなるとこの行動をする。


嫌われたくない。


いつも殴り、道具のようにボクを扱ってきた主なのだが、主がいなくなればボクの存在意義が無くなる。


「次は必ず殺します」


一瞬だが主はキーボードを叩いてる指を止めた。今までボクは主の話を聞いてるだけで、ボクから話すのはほとんど無かったからだと思う。


口角を上げて、主は不気味に笑った。



○●○●○



「奏太様、これからどうするんですか」

「このゲームを終わらせる」


そのためにも一旦家に帰り、この丸腰状態では遠くに行けないし、腹が減る。



∇▲∇▲∇



家につくと、両親はすでに働きに行っているようだ。僕の家族は誰が一番早く帰ってこれるか分からないので家のある場所に鍵を隠しているのだ。まぁ、僕はずっと部屋のなかにいるからいてもいなくても、家が危ないのでこうなっている。


庭に行き、向日葵が咲いている花壇の少し盛り上がっているところを掘り返す。見事に鍵は埋まっており、取り出す。手についた土をほろってから家に入る。


自分の部屋に行き、自分の全財産とある程度の着替えと必要と思う物をを持って部屋を出る。


そのまま家を出て、鍵を閉めていつものところに隠す。


「奏太様、準備万端ですね」

「さぁ、行くか」


僕はゆっくりと家から歩きはじめる。


「奏太様」

「どうした?」

「近くにモビフォンを持った、プレイヤーがいます」


つまり、エリア指定をするかどうかってことか。


「エリア指定をしてくれ」

「わかりました」


すると周りの雰囲気が変わり、エリア指定がされたのが分かる。


「すぐ倒すぞ」

「奏太様、なんか笑えますよ。前までへたれでコミュ障だった人がそんなこと言ってるんですよ。自分でも変だとは思いませんか」


なんかものすごく冷静にいわれると、ものすごく恥ずかしくなってくる。


「う、うるひゃい」

「か、噛んでますよ」


声だけしか聞こえてないが、笑いを堪えてるのがすぐに分かった。


「さ、さっさと倒しに行くぞ」

「はいはい、分かってますよ」


僕は注意深く周りを観察しながら、相手を探す。


「あの!」


急に後ろから声をかけられた。驚いてしまうがすぐに後ろを振り返り、確認する。しかし、そこには誰一人いなかった。


「あれ?」


僕がそう言うと、下から僕の着ているワイシャツを引っ張られた。


「あ、あのー、こ、これってなんですか」


僕は視線を下にして確認すると、小学生二年生ぐらいの女の子がいた。金髪のロングである。


「まさか…お前か?」

「な、なにがです?」


んーつまり、この女の子はモビフォンについて全く知らないということか。


僕はしゃがんで女の子と同じ目線にする。


「携帯でモビルフォンウォーズっていうアプリをダウンロードしなかった?」


女の子は急に恥ずかしそうに下を向いた。


「はい、しました」


なるほど、この女の子もコミュ障か。


「奏太様、なに親近感沸いてるんですか?小学生相手に仲良くなれそうだとか思ってるんですか?シスコン以外にもロリコンだったとは…がっかりです」

「違うわ!」

「ひっ」


急に僕が大きな声を出してしまったので、女の子が肩を震わせて驚いた。


「違う、これは…」


僕はポッケから携帯を取りだし、イヤホンを携帯から取り外し女の子の前に持っていく。


数秒カンナと女の子は睨み合った後、カンナが一気に目を輝かせた。


「うっひゃあ!かわいい女の子ですね!なんて名前なんですか!?」

「え?えっ…えっと…」


僕は携帯の画面を女の子から遠ざけて、僕の前に持ってくる。


「少し落ち着け」

「え~、かわいいじゃないですか。あの蒼い瞳はなんとも言えませんな」

「口調がおじさんっぽくなってきてるぞ」


と、言ったのだがカンナは気にしてないようだった。


しかし、いきなり女の子と戦うのは無理だ。花梨のこともあるし。


ここは一旦エリア指定を解くか。


僕は携帯で友達登録を選択する。女の子はシルク・ミントという名前だった。やはり外国人だったか。ミントに「友達登録を承認して」と言って小さくミントは頷いた。


承認に成功しましたと画面に出てくるが、エリア指定が解かれない。つまり


「まだいるのか」


僕は周りを見渡すと、一人の男が立っていた。身長は百九十近くあり、黒髪でスーツを着ている。


「そこの君、シルクから離れろ」

「お、お父様…」


ミントの声がとても震えていた。ミントは怯えていた。

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