↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

番外編…リヒター家の跡継ぎ候補

ヒナミ・リヒター 19歳。

キャロル・リヒター 18歳。

2人の関係性が大きく変わる。


「ヒナミ、キャロル。お前たちのうち、先に男児を授かった夫婦をリヒター家の次期当主にしようと思う」

「……!」

「はい、分かりました」


ちょっと待てちょっと待て。困る。それは非常に困る。


カナンから聞いた話、カナンの父――フェルナー男爵は政略結婚で権力を得てきたらしい。

つまり五女であるカナンの結婚でさえも、メリットが無い相手とは結婚を許さないだろう。

フェルナー男爵にとってのメリットとは何だ?

……男爵家の次期当主内定が最低条件だろう。

でも、お父様が出した条件は?

先に男児を授かった夫婦?

そんな運とタイミングが絡む条件、『絶対当主になるので、カナン様を私にください』なんてフェルナー男爵に言えるわけが無い。


じゃあ、俺に出来ることはなんだ?

いまここで、リヒター家の次期当主を決める条件を変えてもらうことだ!


「お待ちください!」

「何だ、ヒナミ」

「その、……俺には好意を寄せている令嬢がいます!」

「!」

「……それがどうした」


冷ややかな視線だ。

でも、ここで怯む訳にはいけない。


「だから、その……。その令嬢のお父様は、俺が男爵家の次期当主でなければ、おそらく結婚を許してくださらないと思います!だから……!」

「……それが、私に何の関係がある?」

「っ……」

「ヒナミ。人を愛するというのは良いことだ。だが、身分を考えよ。貴族に産まれたからには、家名を長く続くことを誉とせよ。でなければ、滅びるだけだ」

「……」


……どうしよう。正論だからこそ、何も言えない。

『好きだから結婚させてください』で通用するのは平民だけだ。

いっそ平民であれば良かった。

でもそうしたら、相手は男爵家令嬢だ。出会ってすらいない。


「……。お父様、俺、当主候補の座を降ります」

「!」

「何?」


隣りにいるキャロルが宣言する。

こいつは何が言いたいんだ?当主候補の座を降りる?


「俺には愛する女性もいません。大事な場面で、お父様に対して反抗するなど、いままでのヒナミには無かったものです。その気持ち、汲みませんか?俺にはその思いに賭ける価値があると思うのです」

「……しかし」


……お父様が押されている?

考え方を変えようとしている。


「それに、考えてもみてください。俺、勉強さっぱり出来ませんよ?」

「……!!!!」

「俺がリヒター家を継いでしまったら、俺の代で終わりませんか?」


す、捨て身すぎる……!

キャロル、お前、それは捨て身すぎないか!?

お父様も開いた口が塞がってないぞ!?


「……うーむ。……ヒナミ、その令嬢とは誰だ」

「!フェルナー男爵の五女、カナン・フェルナーです」

「フェルナー男爵か……。うーむ……」


悩んでいる……。お父様が、自分の考えを変えようとしている。

ヒナミは頭を下げる。


「お願いします!お父様!俺には……、俺にはカナン様以外、考えられないのです!」

「……」


しばらく沈黙が続く。

――そして。


「必ず、フェルナー男爵を納得させるように」

「……!はい、ありがとうございます!」

「だがしかし、お前が次期当主として見込みが無いと判断した時には……、分かっているな?」

「はい!ありがとうございます!」


*


「だから?それが弟を特別と思う理由?」

「えっ、納得できませんか?」

「だって実際まだ認められてないんでしょ、お父様に!」

「……!」


な、何にも言えない……。

カナン様が正しくて何にも言えない……。


「それに、『カナンのことずっと見てる』って言ったのに」

「見てます、見てますよ。だからこうして……」

「社交界の時ですら優先しないくせに、何が『カナンのことずっと見てる』よ、嘘つき!」

「えっ、そ、それは……、あの、当主としての勉強を、ですね……」

「カナンとの約束を守れず、何が勉強よ!嘘つき!」


カナンは思いっきりヒナミの頬を平手打ちした。

パァンッという乾いた音は、社交場に響き渡った。

状況を見ていた周りの令嬢や子息は、2人を見守り息を飲む。


「ばいばい、ヒナミ。もう今日は話しかけて来ないで」

「えっ、待って、カナン様、待ってください!」


冷たくされても、カナンを一生懸命追いかけるヒナミが、大きな犬に見えた。そう語った令嬢がいたとか。


そして――。


……俺、あんなのの義理の弟になるのか?

あの日、ヒナミを応援したのは間違いだったのか?

キャロルは自分の言葉を後悔し、頭を抱えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。