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『バグったうさぎを修正できません』 ――ブラック企業の天使がヤケクソで転生させた結果――  作者: 島ながぁ
序章うさぎになった男

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第7話うさぎは料理をする

 車を諦めた。


 正確には。


 足が届かなかった。



「……足届かないの忘れてた」


 うさぎ――佐伯優兎さえきゆうとは荷車を押しながら呟いた。


 夕暮れ。


 赤い光が街を染めている。


 石造りの建物。


 アスファルト。


 信号機。


 ファンタジーと現代日本が雑に混ざった世界。


 何度見ても頭がおかしい。


「えーと……ここからだと」


 優兎は案内看板を見る。


 地図は日本のショッピングモールみたいだった。


 だが周囲は廃墟。


「やっぱ欲張りすぎたなぁ……」


 荷車には。


 米。


 野菜。


 干し肉。


 その他諸々。


 パンパンだった。


「まだ来たことないエリアだな」


 案内図を追う。


「お、コンビニある」


 うさぎは方向転換した。


「……あっちか」


 ギシギシ。


 荷車を押しながら進む。


 静かだった。


 風の音だけ。


 誰もいない。


 なのに。


 電気だけは生きている。



 数分後。


「おぉ……」


 コンビニに到着した。


 ガラス扉。


 自動ドアは死んでいた。


 優兎は手で押して入る。


「あるかな〜」


 てくてく歩く。


「ないかな〜」


 変なリズムで歌っていた。


 棚を見る。


「……お?」


 数秒後。


「あるやん」


 カレールー発見。


「勝ったな」


 棚には。


 シチュー。


 ハヤシライス。


 カレー。


 日本のスーパーみたいだった。


「これは棚ぼたってやつだな」


 根こそぎ回収する。


 さらに。


 缶詰。


 冷凍食品。


 茶葉。


 最後に。


 タバコのカートン。


 完全に略奪だった。


「これでしばらく出歩かなくて済みそうだな」


 荷車へ積み込む。


 その時。


「あ、そうだ」


 優兎は店へ戻った。


 レジへ飛び乗る。


「先立つものは必要だよな」


 そして。


「ふん!」


 バキャッ!!


 レジが吹き飛んだ。


 うさぎ強盗である。


「おぉ……」


 硬貨が散らばる。


 優兎は集め始めた。


「ん?」


 一枚拾う。


 見慣れない硬貨だった。


「……どれがどんな価値なんだ?」


 数字も読めない。


 文字化けしている。


「後で調べるか」


 リュックのポケットへ突っ込む。


 そして荷車へ戻った。


「……」


 押す。


「……重」


 さっきより重かった。


 当然だった。


「やっぱ欲張りすぎたな……」


 ズルズル進む。


「俺こんな筋力無かったよな……?」


 荷車を引きながら考える。


「いや待て」


「筋力はあるんだよな」


 大木爆散させてるし。


「……体が軽すぎるのか?」


 うさぎサイズだからだった。



 その頃には。


 日はほとんど落ちていた。


 街灯がぽつぽつ光っている。


 人のいない夜の街。


 不気味だった。


「はぁ〜……疲れた」


 学園へ戻った頃には優兎はヘトヘトだった。


 食材を調理場へ運ぶ。


 冷蔵庫へ詰め込む。


 往復。


 往復。


 そして。


「終わったぁ……」


 ぐったり。


 テーブルへ腰掛ける。


 茶葉を適当に使って淹れた紅茶を飲む。


 ずずず。


「んー?」


 一口。


「……なんか花っぽい風味だな」


 もう一口。


「……味薄いな」


 さらに。


「蜂蜜みたいな匂いする」


 最後に。


「……後味甘ったる」


 妙な紅茶だった。


「……異世界だなぁ」


 今さらだった。


 少し休憩。


 そして。


「さて……作るか!」


 うさぎが立ち上がる。



 米を取り出す。


 軽量カップ。


 金属ボウル。


「おぉ、普通に日本の米っぽいな」


 水を入れる。


 シャカシャカ。


「ん?」


 優兎は止まる。


米のパッケージを見る。


「……これ無洗米か」


 便利だった。


 炊飯器らしき物へ米を入れる。


 中を見る。


「目盛りあるじゃん」


 完全に炊飯器だった。


 水を追加。


 蓋を閉じる。


「スイッチオン!」


 ぽち。


「……」


 無音。


「ん?」


「動いてるかこれ?」


 その瞬間だった。


 ダラララララララララ!!


「は?」


 突然ドラムロールが鳴り響く。


 炊飯器の蓋が勢いよく開いた。


 パァァァン!!


 ファンファーレ。


 紙吹雪。


「え!?!?」


 どこから!?


 さらに。


 ゴォォォォォ!!


 異常な量の湯気。


 真っ白。


「な、何これ!?」


 視界ゼロ。


「わけわかんねぇ!!」


 数秒後。


 湯気が晴れる。


 そこにあったのは。


 光り輝く白米だった。


「……」


 真顔。


「……光る食べ物初めて見た」


 優兎はスプーンで少し取る。


 恐る恐る口へ運ぶ。


「……」


 もぐ。


 数秒。


「……うまぁ」


 目を見開く。


 噛む度。


 プチプチ弾ける。


 麦みたいな香り。


 少し甘い。


「……米っていうかパンだこれ」


 でも美味い。


「これカレー合いそうだな」


 うさぎは満足げに頷いた。



 じゃがいもとにんじんを切る。


 玉ねぎを炒める。


 干し肉をちぎって鍋へ。


 じゅう、と音が鳴る。


 香りが広がる。


「……腹減った」


 水を加える。


 煮込む。


 そして最後に。


 カレールー投入。


 ゆっくり溶けていく。


 茶色い香り。


 完全に日本のカレーだった。


「出来た」


 皿へ盛る。


 白く輝く米。


 その上にカレー。


「異世界カレーだな」


 どう見ても日本のカレーだった。


 優兎は席へ座る。


 スプーンを持つ。


「いただきまーす」


 一口。


 もぐもぐ。


「……」


「……あ、ちゃんとカレーだ」


 安心した。


 だが。


 米の風味だけ妙にパン。


「……カレーパンじゃん」


―――続く

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