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『バグったうさぎを修正できません』 ――ブラック企業の天使がヤケクソで転生させた結果――  作者: 島ながぁ
序章うさぎになった男

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第6話うさぎは文明に感動する

数日後。


 うさぎはまだ学園にいた。




 第1王子専用学生寮。


 その最上階。


 無駄に豪華な一室。


「…………」


 白いうさぎ――佐伯優兎はベッドに埋まっていた。


 巨大。


 ふかふか。


 高級感の暴力。


 全身を包み込むような布団。


「何この布団……やばすぎだろぉ……」


 うさぎが溶けていた。


「起きる気力がぁ……」


 もぞもぞ。


 耳だけ動く。


 この数日。


 優兎は学園内を軽く探索した後、この部屋を拠点にしていた。


 理由は単純。


 ベッドが最強だった。


「人類ってこんな快適な寝具作ってたんだな……」


 元人類である。


 だが感動するほど寝心地が良かった。


 窓から日差しが入る。


 静かだった。


 相変わらず誰もいない。


 時計だけが時を刻んでいる。


「……」


 優兎は天井を見る。


「……飽きたな」


 数秒後。


「……行くか」


 ゴロゴロに飽きたらしい。


 うさぎは起き上がった。



 食堂。


 そしてその奥の調理場。


 優兎は冷蔵庫を開けていた。


「うーん……」


 中から取り出したのは。


 街の入口付近の民家から持ってきた野菜と干し肉。


「……あ、これダメだな」


 しなびた野菜を前足で避ける。


 葉物はかなり危険だった。


「元の世界じゃ自炊とかたまにしかしなかったんだよなぁ……」


 干し肉は無事。


 野菜は半壊。


 異世界サバイバルは厳しい。


「自動調理器とかあればなぁ……」


 その時。


「ん?」


 棚の上に何かを見つけた。


 白い丸っこい機械。


「……炊飯器?」


 見覚えしかない。


 だが。


「コンセントもコードも無いな……」


 魔導具なのかもしれない。


 優兎は顎に前足を当てた。


「そういや入口の民家に米あったな……」


 さらに思い出す。


「隣の家にじゃがいもとにんじん」


「倉庫に玉ねぎもあったか」


 カレーが作れそうだった。


「普通のコンビニならルーあるんだろうけど……」


 この世界、何があるか分からない。


「見てくるか!」


 優兎は食材を冷蔵庫へ戻した。


 リュックを背負う。


 そして。


 二足歩行。


「……」


 完全に不審者だった。



 街の入口付近。


「米が重てぇ……」


 うさぎがふらついていた。


 リュックには五キロの白米。


 さらに野菜。


 パンパンだった。


「ファンタジー感ゼロじゃねぇか……」


 異世界なのに買い出し感が酷い。


 しかも。


「欲張りすぎた……」


 重い。


 かなり重い。


 その時だった。


「あ」


 その時、優兎の脳裏に電流が走る。


「あれがあったな……」


 荷物を置く。


 近くの民家の倉庫へ向かう。


 ガサゴソ。


 数分後。


「ふっふっふ……」


 出てきた。


 荷車だった。


「天才的閃きだな!」


 うさぎは得意げだった。


 荷物を乗せる。


 押す。


「……」


「……重」


 かなり重かった。


 だが。


「さっきよりはマシか……」


 ギシギシ音を鳴らしながら進む。



 石畳。


 そして。


 アスファルト。


「何度見ても変な世界だな」


 独り言が多い。


 誰もいないからだ。


 優兎は荷車を押しながら街を進む。


 その時。


 視界の端に建物が映った。


「ん?」


 小さな建物。


 ガラス窓。


 看板。


 そして。


 白黒の車。


 優兎は通り過ぎ――


「……ん?」


 止まった。


 振り返る。


 白黒の車を見る。


「……は?」


 固まる。


「……え?」


 目を擦る。


 もう一度見る。


 白黒の車。


 屋根の赤いランプ。


「…………」


 数秒。


「車ぁ!?」


 叫んだ。


 驚いた勢いで荷車に頭をぶつける。


 ゴッ。


「てぇ!!」


 うずくまる。


 涙目。


 だがもう一度見る。


「車……だと……?」


 存在してはいけない物を見た気分だった。


「女神ってバカなんじゃないか?」


 かなり前からそうである。


 優兎は立ち上がる。


「……仕方ない」


 真顔。


「乗るか!」


 欲望に忠実だった。



 建物へ入る。


 どうやら警備室らしい。


「鍵かかってんな」


 棚を漁る。


「ふん!」


 バキャ。


 扉がひしゃげた。


 完全に強盗だった。


「お」


 棚の奥に何かある。


「……これは」


 黒い金属。


 手に持つサイズ。


「なんか飛ばす道具?」


 優兎はシリンダーを展開する。


「サビは……無いな」


 普通に確認している。


「こっち金庫か?」


 金属製ロッカーを発見。


「ふん!」


 ガァン!!


 扉が吹き飛ぶ。


「おぉ……」


 中には金属の塊。


「これ弾か?」


 たぶん正解だった。


「後で試すか」


 リュックへ入れる。


 危険うさぎだった。


 その時。


「あ」


 机の上に鍵を見つけた。


「鍵こっちかよ……」


 今さらだった。



 外へ出る。


 建物の中は嵐の後みたいになっていた。


 優兎は気にしない。


「車なんて久しぶりだなぁ」


 前足でキーホルダーを回しながら歩く。


「こっちだと無免だけど大丈夫かな」


 異世界なのでセーフ理論。


 車の前へ立つ。


 鍵を差し込む。


 回す。


 ガチャ。


「おぉ」


 開いた。


 ドアを引っ張る。


 乗り込む。


「ほほう」


 中は普通の車ではなかった。


 機材。


 モニター。


 追加スイッチ。


 無線機。


「警備車両ってやつだな」


 ハンドル下へ鍵を差し込む。


 回す。


 ブォン!!


 エンジン始動。


「うおぉ!」


 テンションが上がる。


 どうやらセダン系ベースらしい。


「これか?」


 適当にボタンを押す。


 次の瞬間。


 ウゥゥゥゥゥゥゥ―――!!!


 サイレン。


 赤色灯。


「おぉぉ!!」


 ちょっと感動した。


 さらに操作。


 音が止まる。


「これで探索かなり楽になるな」


 優兎は満足げに頷いた。


 ハンドルを握る。


 ギアをドライブへ。


 そして。


「あ」


 止まる。


「……届かねぇ」


 足が。


 ペダルに。


 届かない。


「もう少し……!」


 必死に足を伸ばす。


 ぷるぷる。


 全然届かない。


「……」


 沈黙。


 エンジン停止。


 優兎は静かに車を降りた。


 ドアを閉める。


 鍵も閉める。


 そして深呼吸。


「……」


「……俺、うさぎだったわ」


その瞳は何かを堪えていた。


―――続く

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